ごめんねダンボール・夏■アースダンボール通信8月号■2016年8月号
その幼い兄弟が我が家にやってきたのは、
私が小学校2年生の夏休みだった。
三日間だけ、というとても短い間だったけど、
その兄弟と過ごした三日間の最後の日は、
私が初めて何かに、"本気で必死"、になった日だったかもしれません。
その日、
私にはどうしてもダンボール箱が必要でした。
たった一箱だけのダンボール箱が必要でした。
それでは、どうぞ。
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あれは、私が小学校2年生の夏休みだった。
私の家は、両親と6年生の姉、父方の祖父と祖母の6人家族。
両親は二人共、居住していた市の市役所の福祉課の職員だった。
きっと、"福祉課"という職場も、その兄弟が来た理由の一つだろう。
その兄弟は、様々な理由で親と暮らせない子供達の施設で暮らしていた。
その施設では、毎年夏休み中の三日間にホストファミリーを募集して、
施設の子供達のホームステイ的な行事を行っていた。
そしてその年、私の家にその兄弟がやってくることになった。
兄の"たける"が小学校3年生、弟の"ひかる"が1年生、
年齢的には、ちょうど私を挟んだ近い年頃の二人だった。
兄のたけるはとても弟思いで、弟の面倒をいつもよく見ていた。
弟のひかるは甘えん坊で、いつでも兄を頼っていた。
実際、私には兄弟がやってくる理由などはよくわからなかったが、
私達3人はすぐに仲良しになった。
6年生の私の姉は、3人とは一歩距離を置いていた感じだった。
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兄弟が私の家に来た時、弟のひかるは小さなダンボール箱を抱えていた。
かなり古びたダンボール箱で、穴や破れ、補修跡も沢山あったが、
ひかるは、その箱をとても、とても大事そうに抱えていた。
抱えていたというよりは、抱きしめていた、ような感じだった。
ダンボール箱の中身は、これもまた古びたおもちゃが数個。
ひかるは、昼も夜も可能な限りこの箱を自分の近くに置いて過ごし、
それがとても大事な箱だということが誰から見てもわかった。
時々、私の真新しいおもちゃにも興味は示したが、
"シメ"はいつでも、そのダンボール箱と、その中のおもちゃだった。
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ただのお泊り行事とはいえ、小学校低学年の兄弟を招くのは、
私の両親もとても心配だっただろう。
目の離せない年齢の子供が二人増えたのだ。
無事に過ごし、やってきた兄弟に少しでも楽しんで欲しいと、
私の両親は、たけるとひかるにとても気を配っていたようだった。
しかし、そんな周囲の思いを、私は壊した。
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子供同士は、自然にケンカして、自然に仲直りする。
でも、いつもと少し違う要素が加わるだけで、自然でなくなる時もある。
3人が少し言い合うだけで、
理由がどうであれ、私の母親は、私ではなく兄弟の味方をした。
ケンカに発展しそうものなら、全て私がたしなめられた。
もちろん母親に悪気はなかった。そういう流れになってしまうのだろう。
『なんで?、、おかしいよ、、なんか変、、、??』
私は、少しづつ兄弟との時間がつまらくなっていった。
半日経ち、一日経ち、また半日が経ち、
時が経つにつれ、私の中の"変(へん)"は大きくなっていった。
二日目の夜には、夕飯も一緒に食べなかった。
その頃には、私の"変"は、"兄弟への嫌悪感"に変わっていた。
そして三日目。ステイの最終日。
3人はそれまでで一番大きなケンカをした。
といっても、私がそれをふっかけたようなものだった。
弟のひかるがわんわん泣き、それを聞きつけた私の母親が来た。
当然、私が怒られた。
私の母親は、泣いているひかるを抱きしめてあげた。
・・・・・・・・・!!
それを見た私の中の"何か"が、普段は超えない線を、超えてしまった。
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母親を別の誰かに取られる感覚・・・
小学校低学年の男の子にとって、その意味は計り知れない。
線を越えた私の"何か"の矛先は、ひかるのダンボール箱に向けられた。
『ちっきしょおおおう!!』
私はひかるのダンボール箱を復元不能なまでに叩きのめした!
『なにをやってる!!! やめなさいいい!!!』
私の父親も出てきて、私は何度もビンタをくらった。
ひかるは段ボール箱を壊されたショックで、
私は母やらビンタやらのショックで、
二人とも家を飛び出してしまった。
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そんなに遠くへは行かなかった二人は、ほどなく家に連れ戻された。
二人とも少しは落ち着いたが、口も利かず、うつむいたままだった。
楽しい夏の思い出には程遠い雰囲気だった、、、
私はまったく、これぽっちも反省などもできず、納得もできず、
いつしかふて寝してしまった。
少し経ち、うっすら目を覚ますと、隣の部屋から兄弟の話し声が聞こえてきた。
ひかるは、また泣いているようだった。
『うう、うわあん、箱、母ちゃんがくれた箱、壊れた、、、』
『泣くなよ、ひかる。箱なら他にもあるじゃないか』
『、、って、だって、があぢゃんが、ぐれだ、はご・・・』
『母ちゃんが、、、くれた、、箱・・・?』 私の頭が一瞬止まった。
さっきの、ひかるを抱きしめている母の姿を思い出した。
その箱は、ひかると、一緒に暮らせない母親をつないでいた箱だった。
その時、私の中で一旦線を超えた"何か"が、急速反転して舞い戻り、
いや、ぐるぐると回りだし、いや、ジグザグに、いや、クロスしながら・・・
兄弟が家に来た意味や、二人の辛さや、母親へ想いや・・・
私は子供ながらに、理解した。
母親をとられたという経験の直後だったから、理解できたのかもしれない。
例えば心理学の専門家なら、的確にその時の心を説明できるのでしょう。
でも大人になった今も、私はあの時の自分をうまく説明できません。
『ダンボール箱、僕が見つけなきゃ!』 私は決断した。
その箱は、何か青い印刷がしてあったので、
私は青い絵の描いた箱じゃなきゃダメだと思い込んだ。
手始めに自分の家のあらゆる場所を探したが、無い。
隣の家のおばちゃんに聞きに行ったが、やはり無かった。
その隣りも、またそのお隣さんも、青い印刷の箱は無かった。
その後、数件の家を回ったが、どこの家にもそれは無かった。
箱を探す決断直後の緊張、なかなか見つからない焦り、ひかるの泣き顔、、
『グス、、、ヒック、、、うう、、、ううう、、』
いつの間にか、私の目にも涙が溢れてきた・・・
それでも私は、真っ赤な顔で泣きながら、近所を一件一件回り続けた。
『ヒック、、グスッ、、、あの、あのね、
段ボールばご、ないでずが? ごのぐらいで、青い絵があるの・・・ヒック、、、』
行く家行く家で、号泣しながら箱を探す子供に、みんなびっくりしていた。
『ダンボル、バゴ・・ありばぜんが、、? だれんぢにも、無いの、、エグッ、、』
ボロッボロ、、に泣いて、言葉もはっきり出せなかった。
4~50件くらい回ったか、精神力も尽き、その場に座ってただ泣いていた私は、
探しに来た家族に連れ戻された。
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家に戻ると、ひかるが玄関先で待っていた。もう泣いてはいなかった。
ひかるの姿を見た途端、その日最大の涙と声が、体と心から噴火のように出てきた。
『うう、、ヒック、、ひ、ひがるうう~、、ごべんだざい、、ごべん、、、
はご、、あおいえのはご、、ながっだああ、、ごわじで、ごべんん、、』
私は、心の底から、底の底の、ずっと底から、ひかるに謝った。
ひかるにも、私の心は充分に伝わってくれていた。
しばらくすると、ご近所さんが2~3人揃って、私の家にやってきた。
『お宅のぼっちゃん、えらい形相で箱を探してたから。これ、使えるかしら?』
みんな、それぞれの家で青い印刷の箱を探して持ってきてくれたのだ。
ひかるはその中から一つ選んで、それを次の"宝箱"に決めた。
そして夕方、
一連の騒動でお昼ご飯を食べられずに腹ペコだったみんなで、
遅いお昼ご飯を食べた。 みんなに笑顔が戻った。
その夜、新しい箱を持って、たけるとひかるは施設に帰っていった。
たけるとひかるに会うことは、もうありませんでした。
最後に交わした言葉も、よく覚えていません。
でも夏の終わりが近づくたびに、あの兄弟を思い出します。
二人とも、どんな大人になったんだろう? 元気かな。
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
これは、私が小学校2年生の時の体験です。
ええと、、
編集後記、いりますか?
なんか、いらない感じですね。
今、あなたの胸に湧いてきたかもしれない、その思い出を、
どうか大切にして下さいね。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
m(__;)m
8月某日 メルマガ編集長 やまぎし
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