告白タイム■アースダンボール メルマガVOL92■2020年8月号
俺の幼馴染は耳が聞こえない。
家は隣同士、小中、おまけに今年進学した高校も同じ。
その高校の名は、私立百春(ももはる)高校。通称"ももこう"。
あることで全国的な超有名高校だ。
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彼女の名前は凛(りん)。俺の名前は宗十郎(そうじゅうろう)。
俺は凛の耳の事を気にしたことがない。
手話も自然に覚えたし、障害の手助けも普通のことだった。
凛はかなり引っ込み思案でいつも自分の性格を嘆いていたが、
そのくせ女優になりたい野望も持つちょっと不思議ちゃんだ。
俺は心のどこかで"俺が居てやんなきゃ"っていつも思ってた。
高校生活最初の夏休みが明け、秋の文化祭の準備が始まる頃、
凛は"好きな人ができたから告白したい"と打ち明けてくれた。
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凛の口から(メールだけど)恋バナが出るなんて正直驚いた。
でも一番驚いたのはそこじゃない。
凛は、
"告白もしたいけど引っ込み思案の自分も変えたい。
だから私、あれに出る!!" と宣言した!!
『おい、凛、あれってまさか、あれに出るのか!?』( ゜д゜)
『(そう、あれに出る。私決めた。私、殻を破りたいの)』( ̄ー ̄)b
『決めたって、お前、皆がわかるように話せないじゃん!』( ゜д゜)
『(大丈夫、作戦立てたから!!)』( ̄ー ̄)b
『作戦って、ほ、本当に大丈夫なのか?』(*゜Д`;)
『(うん、私頑張るよ!!)』( ̄ー ̄)b
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"あれ"・・・
それは文化祭の後夜祭で行われるメインイベントにして
全校生徒が最大、最強、最高に盛り上がるイベント。
その名も『百春(ももはる)高校告白タイム2020』!!
もう20年もの歴史と伝統がある。
告白したい生徒(挑戦者)がステージに上がり、
まずは告白したい人への想いを全校生徒の前で打ち明ける。
そして最後に『私と付き合って下さい!!○○さん(くん)!!』と叫ぶ。
告白された人はステージに上がり、返事をしなければならない。
その返事の瞬間、全校生徒のテンションは最高潮に達する!!
結果が何であれ大歓声が沸く!!
その盛り上がりは校内に留まらず、近年ではSNSでも拡散され、
#百高告白タイム のハッシュタグがトレンド入りするほどの凄さ。
実質数万人がそれを見届ける全国区イベントなのだ。
それに凛が出るという。俺はもう気が気じゃなかったヽ(´Д`ヽ)
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いよいよ文化祭の日がやってきた。
俺達一年生は初めての文化祭と後夜祭だが、
2年生3年生のテンションは朝から後夜祭に向かっていた。
校庭に設営された本格派のステージ、音響設備、照明装置。
まるでビッグアーティストのライブ会場だ。
しかも今年は学校公式SNSアカウントがライブ配信まで用意した。
俺はその凄さに畏怖さえ覚えたが、同時に凛のことで頭が一杯だった。
凛、本当に大丈夫なのか・・・(・_・;)
そしてその舞台が今年もスタートした。
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『みんなあ~!!!今年も告白が見たいかあ~!!』
゜+。:.゜(ノ*´∀`)ノオオォッ゜.:。+゜
『おまえら~!!!ニューヨークへ行きたいかあ~!!』
ヽ(*`゜∀゜´)ノォォォォォォォォォォ!
『それじゃあ一人目え~。盛大な拍手を~!!!』
オオォォヽ(゜`∀´゜)ノォォォ♪
MCが全校生徒を煽りながら巻き込む。
『○○さん、付き合って下さい!!』〃(≧へ≦)〃
『ごめんなさいっっ!!』(;´д` )
ォォォォオオオオ(′口`*ノ)ノ!!!(o´∀`o)ノォオオオオオオオオオオ*
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『○○くん、付き合って下さい!!』(。≧O≦)ノ
『はい、こちらこそお願いします!!』(///ω///)
☆・:゜*オオオ(′口`*ノ)ノヾ(o´∀`o)ノォオオオオオオオオオオ*゜:・☆
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一人、また一人、成功する者あり、撃沈あり、
そのどれもが神聖で、本気が溢れていて、青春そのものだった。
これが百高(ももこう)名物告白タイム・・・本当に凄い。
『さあ、いよいよ今日最後の挑戦者。高宮凛さんだああ!!!』
いよいよ凛の出番だ!!
俺は全校生徒に混じってかたずをのんで見守った。
さあ凛、どうするんだ。ちゃんと見届けてやるからな。
凛は静かにステージ中央に立った。緊張している・・・。
一呼吸し、凛はゆっくり両手を動かし始めた・・・
『(私には、好きな人が、居ます。でも、私は、引っ込み思案で、
その人に、助けられてばかり。自分を、変えたい・・・)』
これは、、、手話・・・???
全校生徒の雰囲気が一変し、いきなりの静寂に包まれた。
しかし手話がわかる奴なんてほとんどいない。
でも全員が凛を見続けた。静かに、真剣に、でも激しく。
ほとんどの人は凛が何を言っているのかわからないのに、
誰にとってもそれは問題じゃ無かった。
このステージに立つものは誰であれ何であれ、皆で応援するんだと。
それほどこのイベントは皆の心を一つにしていた。
静寂の中、凛の手話は続いた。
いつしか、手話がわかる何人かのすすり泣く声が聞こえた。
そして、、、
『凛、凛ん~!!頑張れ!頑張れええ~!!』(」゜O゜)」
一人が凛への応援を叫んだ!!
その波は会場全体に波及し、皆が凛を応援した。
『凛ちゃん!!凛ちゃん!頑張れ~!!』(」`Д´)」(」`Д´)」
凛にも皆の声が届いているようだった。
凛は告白したい人への想いの手話を終えた。
手話がわかる俺は、凛の切ない想いが痛いほどわかった。
『凛、お前、その人がよっぽど好きなんだな・・・』
俺はふと、胸の奥が強く締め付けられるような感覚を覚えた。
次はいよいよ決めセリフだ。一体どうするんだ、凛。
凛は一度後方へ下がり、畳み一畳分くらいの大きなダンボール板を
地面に伏せたままステージ中央へ引きずりながら運んできた。
そしてそのダンボール板を皆に向けてそっと立てた。
そこには大きな文字が・・・
"私と付き合って下さい"
そ、そうか!!これは巨大ダンボール筆談告白!!(o゜□゜)o
そして凛はルール通り大きな声で叫んだ。
『わあいど、うきあっで、ぐあざい!!』(ノ≧⊿≦)
全員が息を飲む・・・
そして凛はゆっくりとダンボールを裏返した。
そこに書かれていたのは・・・
・・・その瞬間・・・
俺はホワイトアウトしてしまった・・・
30秒か、1分か、立ったまま意識が遠くなったまま、
何故か凛との思い出が走馬灯のように浮かんでいた。
凛、凛、、凛、、お前、行っちゃうのか・・俺は・・
(_д_)。o0○
『・・・い!おい!宗十郎! ほら、呼ばれてるぞ!』(^ω^)
え? よ、呼ばれてる?? 誰に?(*゜‐゜)
友達に肩をたたかれ、ふと我に返ると俺の目の前には、
生徒達が作ったモーゼの十戒のような道がステージへと続いていた。
皆が歓声を上げながら俺を見ている。ふとステージを見ると、
"宗十郎"
と書かれたダンボール板を持つ凛が仁王立ちしていた。
宗十郎、って、俺の名前・・・?(*゜‐゜)
凛はもう一度大きな声で叫んだ。
『おうじゅうろー!!』(ノ≧⊿≦)
それは幼い頃から聞きなれた、凛が俺を声で呼ぶ時の響き。
『ほら、宗十郎、早くステージに行ってやれ!!』(^ω^)
『あ、ああ、うん。わかった。行くよ、今行く』(*゜‐゜)
俺はステージに向かってゆっくりと歩き出した。
オオォォオヾ('д'*三*'∀'*三*'д')ノシオォォオオ!!!!!!
゜+。:.゜(ノ*´∀`)ノオオォッ゜.:。+゜
(゜∇゜ノノ"☆(゜∇゜ノノ"☆(゜∇゜ノノ"☆パチパチパチ!!!
会場の大歓声がなぜか遠くの方で聞こえる・・・
凛、待ってろ、そこで待ってろ。今、行くよ。
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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この話には後日談がある。
今年の告白タイム、特に凛の告白は伝説となった。
#凛ちゃんがんばれ のハッシュタグは十数万リツイートされ、
同時に #ダンボール告白 というハッシュタグも生まれた。
その後 #ダンボール告白 は、
"ダンボール板に書いて告ると成就する"という都合いい解釈に変化し、
全国でダンボール告白が社会現象になるほど流行した。
"告白専用ダンボール"をなるものまで発売され大ヒットし、
今年の流行語大賞のノミネートにもなるほどだった。
そしてもう一つ、
このライブ配信を見ていた芸能事務所から凛にスカウトが来た。
凛は卒業までは学業に専念したいという意思を示し、事務所も快諾。
卒業後に、映画出演の話も進んでいる。
【編集後記・へんしゅうこうき】
お客様に幸せになって欲しいという気持ちを、
どう伝えればいいのだろう? と考えたことはありますか?
私はあります。でも答えなんて未だにわかりません。
そもそも伝える必要だってあるのかないのかも。
ただこのメルマガはそう考え続けている一つの形なんです。
実を言うと、お客様に幸せになって欲しいのと同じくらい、
このメルマガに出てくるキャラ達にも幸せになって欲しい。
そしてそれが、最近見え隠れする一つの答えの影なんです(笑)
今号も最後までお読み頂きありがとうございました。
m(__;)m
8月某日 ライティング 兼 編集長:メリーゴーランド