アイアム・ボックス ~僕は箱~■アースダンボール メルマガVOL91■2020年7月号-2
ボクはダンボール箱。名前は、まあ無い。
ボクは段ボール工場で沢山の兄弟達と一緒に生産(うま)れた。
そんなボク達が独り立ちする時、それは出荷の時。
商品を詰めてもらって、送り状貼ってもらって、
運送会社さんに渡される時だ。
ボクは今、ある衣料品屋さんの資材倉庫でその時を待っている。
どんなところに行くんだろう。
どんな人が開けてくれるんだろう。
みんな笑顔になってくれるといいな。
そしてボクの出発の日が来た。
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『こんにちは~!!お荷物で~す!!』
『はあい、ご苦労様です~』
ボクが届けられたのは高校生の男の子の居る家。
その子がネットっで買った洋服をボクが運んできたって訳だ。
運んだのは運送屋さんだろ、っていう突っ込みは無しにしてくれよな。
じゃあ僕の初仕事の開封をして頂きましょうか!!
どんな顔するかな~ わくわくするな~
いざ、ご対面ん~~!!!
『あ?、なんだよこれ、写真とイメージ全然違うじゃん!!
ったく、買って損した!! どうすっかな、これ・・・』(-"-;)
え!? ええ? どうしたの?
この服ダメだったの? ボクが運んできた服ダメだったの??
ああ~、なんてこった、、、(o´д`o)=3
せっかくここまで大事に運んできたのに。
なんかごめんね。ボクのせい、じゃないんだけど、
運んできた手前、責任感じるよ、、、
きっとボク、このまま捨てられちゃうよね。仕方ないか。
短い人生だったな。いい仕事したかったな・・・
『ちょっとイサム~、どっかにいらないダンボール箱、無い?』
『ああ、母ちゃん。ちょうどあるよ。これ使っていいよ』
『ありがと。私の妹んちに荷物送りたくってさ』('-'*)
『ああ、叔母さんちか。じゃあこれでもいいよね』( ̄_ ̄)
ボクの命、つながったみたい。
今度はいい仕事できるといいな。
そして僕は叔母さんちに送られた。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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叔母さんちには保育園に通う4歳の男の子がいた。
名前はユウちゃん。ニコニコ笑っててとってもかわいいんだ。
お母さん(叔母さん)もとっても笑顔が素敵な美人さん。
ボクは二人をユウちゃん、ママさんと呼ぶことにした。
ボクが運んで来たのはユウちゃんへのお下がりの服。
今回はユウちゃんも喜んでくれていい仕事ができた。
・・・と思ってたのに・・・
次の日の朝、まだ四時くらい、ユウちゃんの泣く声が聞こえた。
『うう~、うああ~、うああああ~ん』(´□`。)°
ママさんも起きてきた。
『も~、ユウ、毎朝毎朝、ねえどうして・・・』( ´Д`)
ママさんがうんざりした表情でユウちゃんに言った。
『ううっ、グス、ふうん、グス、、』(´;ω;`)
『もう!毎朝毎朝!保育園行きたくないって泣いて!!』(`Д´)
そっか、ユウちゃん、保育園行きたくなくて泣いてるのか・・・
『だっで、だっでえ~、うあああ~ん』。゜゜(´□`。)°゜
『もう!!!いい加減にして!!!』ヽ(*`Д´)ノ
その時、"ボンッ!!!"という凄い音が鳴り響いた!
ママさんがボクを叩いた音だった。
ユウちゃんは目を丸くして固まっちゃった。w(゜o゜)w
ママさん、ユウちゃん、ビックリしちゃってるよ。
ボクは箱だから叩かれてもいいけど、今のはちょっと、ダメだよ・・・
それから二人ともまた布団に入って静かになった。
ユウちゃんは泣き疲れて眠っちゃった。ママさんのため息が聞こえる。
そしてその日の保育園に行く時間になった。
ユウちゃんが起きて来て、チラっとボクを見た。
ユウちゃんは泣いてない。泣いてはいないけど・・・
目に一杯涙を溜めて、泣くまいと必死に我慢してる(。;_;。)
ああ、ユウちゃんのそんな顔見たらボクが泣きたくなっちゃう。
こんな時ボクは何もできない。むしろボクは見えない方がいい。
ユウちゃんを保育園に送った後、ママさんが一度家に帰ってきた。
不意に、ママさんがボクに触れた。そして、泣いた。
『ユウちゃん、ごめんね、ごめんね、あんたもごめんね・・・』
あんたってボクの事・・・?
ううん、ボクは大丈夫。だからユウちゃんをお迎えに行ったら、
うんと優しく抱きしめてあげて。ユウちゃんにもきっと伝わるよ。
ユウちゃんは大好きなママと離れたくなくて泣いてるんだよ。
ママさん、今からお仕事行くんでしょ。ママさんも大変なのに偉いよ。
ママさん頑張ってね。
でもボク、やっぱりユウちゃんとママさんの笑顔が見たかったな。。
そして僕は紙ごみ廃棄場に出された。
これでボクの人生も終わりかと思ったその時、
誰かがボクを廃棄場から持ち帰った。
やった、もう一回仕事できるチャンスかな。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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ボクはあるお家に連れてこられた。今度は何を運ぶんだろ。
でもなんかこの人そわそわしてる。少し不安が伝わってくる。
その時、ボクに一匹の子猫が入ってきた。
そか、今回はお前を運ぶんだね。やあ、こんにちは!元気かい?
子猫は黙ったまま静かに座っているだけだった。
その日の夜、"ボクら"は車に乗せられどこかへ向かった。
そしてある公園に着いた。夜だから暗いし誰も居ない。
けどその人は・・・
ボクらを公園の木の下に置いて帰ってしまった。
え!? ちょっと待って! これって、まさか??
おいおい、どうしようか。ボクはどうすればいいのかな?
子猫は何も答えず、朝まで眠ったままだった。
明くる日、公園には人が来たけど誰もボクらに気が付かなかった。
そうこうしているうちに、雨が降ってきてしまった。
僕は水が一番苦手。どうしよう、どうしよう・・・
まずい、このままじゃボクはふやけちゃう!
ああ、結局僕はここでお前と一緒に人生終えるのか。
もっと誰かの笑顔を見たかったな。誰かの役に立ちたかった。
誰かの役にさ・・・誰かの・・・
そ、そっか。誰かの、お前の、今はお前を守らなきゃ!
お前、ボクから出ろ!出るんだ!行け!早く行け!!
やっと異変に気付いた子猫は何とか蓋を押し開けて外に出た。
お前、鳴け!鳴くんだ!早くしないと人がみんな帰っちゃう!
子猫は恐怖で震えながらかも声を振り絞って鳴いた・・・
『にゃああ~、にゃああ~、にゃあああん、』^._.^
そして・・・
鳴き声に気が付いた小さな女の子が近寄って来てくれた。
『ああ、猫ちゃんいる! どうしたの?一人なの?』( ・_・)
お願い、この子を連れて帰って!ボクは祈った。
『濡れちゃってるね。私んちに来る? 私んちの子になる?
ママとパパに頼んでみるね』(・_・ )
女の子は子猫を抱き上げて連れて帰ってくれた。
ああ、よかった・・・よかった・・・
それからボクは、誰も居ない公園で一人で雨に濡れ続けた。
何とか箱ではいられたけど全身ふにゃふにゃ。もう元気出ない。
でもお前が女の子と幸せに暮らしてくれれば、それでいいや。
ボク、もう仕事ができなくなるな・・・
最後の仕事も、イマイチだったな・・・
ああ、誰かの笑顔が見たかったな・・・
夜が来て、ボクはそのまま静かに目を閉じた。
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次の日は天気が良くなってボクの体はなんとか乾いた。
けどさすがにもうボロボロだ。
公園では子供達がワイワイと楽しそうに遊んでる。
ボク、このままここで朽ちていくんだろうな。
まあいいか、楽しそうな子供達の声を聴きながら逝くのも。
今度生まれたら誰かを笑顔にできる仕事、したいな。
なんか眠い。眠いよ。ぼ~っとしてきた・・・
その時だった!
昨日行ったはずの子猫がボクに向かって走ってきた!
女の子もそれを追いかけて走ってきた。
子猫はボクの目の前で立ち止まり、ボクに向かって鳴いた。
『にゃああ!にゃああ!みゃあああ~!!』(=`ω´=)
とても力強く鳴いた。
『はあ、はあ、はあ、ミーちゃん、どうしたの?』( ´△`)・・
そっか、お前、ミーって名前つけてもらったのか。よかったな。
で、なんでここに来たんだ?
『なに?それ、ミーちゃんが入ってた箱?これが欲しいの?』
『にゃあ!にゃあ!』 (=^ω^=)
まるで頷くようにはっきりと答えた。
『もうボロボロの箱だよ。
そっか、ミーちゃんを守ってくれてた箱だもんね。
いいよ、持って帰って綺麗にしてミーのお家にしようね』
お前、その為にここに来てくれたのか・・・
『ミーちゃんのこと守ってくれててありがとうね』(o^∇^o)
そう言って女の子は満面の笑顔でボクを抱き上げてくれてた。
笑顔、ああ、笑顔だ。幸せそうな笑顔。
やっと、やっと見れた。
ボク、生まれてきてよかった。
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
弊社から出荷されていく箱達を見ていると、
ふと思うことがあります。
"弊社の商品でお客様に笑顔になってほしい"
そう思う気持ちと同時に、
"旅立つお前達(商品達)にも沢山の人の笑顔を見せてやりたい" と。
変でしょうかね?
箱達にも幸せになって欲しいと思う時があるんです。
今号も最後までお読み頂きありがとうございました。
m(__;)m
7某日 ライティング 兼 編集長:メリーゴーランド