押入れ奥のダンボール パート5■アースダンボールメルマガVOL140■2022年8月号
人の心の奥底と同じ場所が実は家にもある。
それが押入れの奥。
そこにあるのは夢か希望か。
それともひっそり隠した思い出か?
このメルマガの意外な人気シリーズ
『押入れ奥のダンボール』
5回目の今回は一体どんな・・・!?
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
『お父さん、今度のダンボール回収日いつ?』
12歳の息子が唐突にそう聞いてきた。
『今度の土曜日だよ。なんかあれば出せよ』
僕がそう言うと息子は『うん』と小さく頷いた。
毎月2回、我家のダンボールを僕がまとめて回収所に出す。
そして次の回収日、息子が1箱のダンボール箱を持って来た。
『お父さん、これお願い』
それだけ言って息子はそそくさと部屋へ戻ってしまった。
あれ?この箱は確か・・・あ、思い出した。
去年の学年末の日、息子は熱を出して学校を休んだ。
その時、息子の荷物一式をダンボールに入れて、
クラスの女の子が持って来てくれた事があった。
その子は息子が好きな女の子だったと後で知った。
だから息子はそのダンボール箱を大事に持ってたらしい。
それと今から二週間くらい前だったか、
息子がその女の子に告白してフラれたっていう噂を聞いた。
小学生の告白は中学生や高校生のそれよりも噂の拡散が早い。
だって親の耳にさえ入ってくるんだから。
で、このダンボール箱を捨てるって事は、
息子なりの心のけじめってことか・・・?
そう思った僕はフラフラと自分の部屋へ向かい、
押入の奥から1箱のダンボール箱を引っ張り出し、
その箱と息子の箱を並べて見つめて、
『はあ~、、』と深いため息を吐いた。
なんでこんな事になっちまったんだ・・・
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
親子っていうのは驚くほど似てしまう事がある。
実は僕の箱も、僕が小学校の学期末日に休んでしまった時、
好きだった女の子が僕の荷物を運んでくれた箱だった。
しかも僕もその子に告白して、フラれた・・・
偶然とは思えない程シチュエーションが同じだが、
僕と息子が決定的に違っていたのは箱の扱いだ。
息子は捨てる事を決め、僕は捨てられなかった。
だから僕のこの箱は今も押入の一番奥で佇んでいる。
当時の僕はフラれた後もその子がずっと好きだった。
思い続けたがゆえに箱を捨てる事ができなかった。
少し月日が経ってその子への気持ちが落ち着き始めた頃、
"これもいい思い出か"という感覚で単に捨てずにいた。
思えばこの時の判断が今に繋がってしまった気がする。
更に月日が経ち、その子への気持ちも無くなった頃、
"そろそろ捨てようか" という気持ちも確かにあったが、
いい思い出なんだからと捨てるのが急に惜しくもなった。
そしてこれが完全にダメだった気がする。
いや、捨てようが捨てまいがそれはどっちでもいいのだ。
ただの"押入の肥やし"にするなら捨てた方がマシだし、
捨てずにいたからといって誰にも迷惑はかけない。
"思い出の保存方法" なんて人それぞれなのだから。
ダメなのは・・・
捨てるも捨てないもハッキリとした理由が無いまま、
相反する気持ちを一つの心に同居させてしまった事だ。
それを放置したままそれと向き合うのを先延ばしした事だ。
捨てようか、いや取って置こう、
捨てたい、いや捨てられない、
面倒になって押入の奥の更に奥に押し込めば押し込むほど、
それは心のど真ん中に居座ろうとズカズカ出てくる。
見て見ぬフリをすればするほどリアルだと思い知らされる。
逃げようとすれば追ってくる・・・
こんな気持ちを持ち続けてしまうくらいなら、
いっそあの時捨ててしまえば良かったのか?
いやいや、誰にも言わない思い出があってもいいよね?
いやいややっぱり・・・なんて事を何度も繰り返す事が、
ダメだっちゅうねん!!ヽ(`Д´#)ノ
____________
そんな時に目の当たりにした息子の決断・・・
これはもう逃げらんねえ。
今ここで向き合うしかねえ。
今日こそ決着をつけてやる!!
さあどうする、俺、落ち着いて考えるんだ。
普通に考えたら今までと同じループの繰り返しだ。
他に、何か他に思考のよりどころは・・・?
その時、以前に読んだ、とある企業のメルマガを思い出した。
確かダンボール会社の、なんだか変なメルマガで、
ダンボール視点でダンボールの心を表現したストーリーだった。
"なんじゃこりゃ?"と思いながらもなんだか記憶に残っている。
まさかあのメルマガのモチーフを自分でやってみようとは・・・
ダンボールの心か。
じゃあもしこのダンボールに心があったら。
僕は箱をじっと見つめて箱の声を聴こうとした。
マジで( ー`дー´)キリッ
すると・・・!?
『あ~やっとその気になったんか~。
いつまでただ置いとくだけやねん。
もう何年もいい加減に飽きたわ~。
どうせならきっちり処分されてリサイクルに出されて
新たな人生送りたいわ~。あ、箱生やったな』
そう聞こえた気がした。
なぜ関西弁だったのかは不明だがそう聞こえた気がした。
そっか、そうだよな・・・
そして僕は箱の処分を決めた。
今までの決めきれずに悩んだ自分も、
見て見ぬ振りした自分も、逃げてた自分も、
今ここで全部認めて受け入れて、
そして今、箱を捨てることを決めたんだ。
そして僕はこの箱と息子の箱を一緒に紐でくくり、
ダンボール回収品として回収所に出した。
さようなら、僕の淡い思い出・・・
さようなら、昨日までの悩んでた自分・・・
そして息子よ、ありがとう。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
それから数時間後・・・
息子が息を切らして急にやって来ていきなり叫んだ。
『はあっ、はあっ、はあ、、、
お父さん、あの箱、もう捨てちゃった!?』(;´Д`)
『ああ、回収所に出した。さっき回収車来たぞ』(*´ー`)
『あああ~!!遅かったかあ~!!』lll(-_-;)lll
『一体どうした?』(*´ー`)
『いや、実はあの子がやっぱりOKしてくれてさ。
だから捨てるのやめようかと思って』(*´ェ`*)ポッ
『んな、んなんだとおおお~!!(-"-怒)
(ぐう~、俺の青春を返せ!俺の高尚な決断を返せ~!)
おら!今すぐ回収車追うぞ!ぐずぐずすんな~!』ヾ(*`Д´*)ノ
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
【編集後記】
あなたの思い出の保管方法はどんな感じですか?
思い出の内容によっても違うかもしれませんね。
そして実際にダンボールに保管してあるという方は、
生きていればどこかでそれと向かう時が、
再び来るかもしれませんね。
その時あなたはどうされるのでしょうか?
そして既に向き合ったあなたは、
どうされたのでしょう?
ちょっぴり、知りたいと思いました。
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
8月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド