ここ掘れダンダン、幸せ鑑定犬ボブ■アースダンボールメルマガVOL141■2022年8月号-2
シロは『ここ掘れワンワン』とお爺さんに言いました。
お爺さんが掘ってみるとそこには小判がザクザク・・・
そしてお爺さんは"花咲か爺さん"として・・・
『ねえパパ、どうしてシロは宝の場所がわかるの?』
『さあ、なんでかなあ?』
『シロみたいな犬、本当はいないんでしょ?』
『どうかな?パパはシロみたいな犬、知ってるよ』
『ええ!?どんな犬?教えて!』
『パパが子供の頃から飼ってた犬なんだけどね・・・』
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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僕は4歳になる息子の寝かしつけに絵本を読んでいた。
でもあの犬の、ボブの話をこの子が理解できるかな・・・
我が家には今、犬のボビーが居る。ボブはその前に居た犬だ。
ボブが我が家に来たのは僕が10歳の頃。
知人宅で子犬が生まれ、その中の男の子一匹を迎え入れた。
名前を『ボブ』と名付けた。
コロコロしてて愛嬌があって、賢くて家族にも忠実で、
みんなに愛されてボブはスクスクと育った。
そしてボブが来て3年程経った頃、僕はある事に気付いた。
我が家は通販好きで頻繁に配達のダンボール箱が届いた。
ある日、通販で買った6歳年上の姉の洋服が届いた時だった。
姉は『ほらボブ、見て見て』とまだ開封前の箱をボブに見せた。
ボブは箱の匂いをクンクン嗅ぎ、嬉しそうに尻尾を振って吠えた。
『ワン!ワン!ワン!』U^ェ^U
箱を開けて中身を確認した姉もそれを凄く気に入って喜んだ。
『さっすがボブ~!あなたはできるワンちゃんね!』
それを見たボブは益々嬉しそうだった。
別の日、今度は姉の靴が届き、前と同じようにボブに見せた。
しかしボブは尻尾を下げていぶかしげな表情を見せた。
『あれ、ボブ、どうしたの・・・?』
姉が中身を空けると『あれ、なんかイメージと違う・・・』
姉のテンションが微妙に下がり、ボブは心配そうに姉にすり寄った。
『ボブ、慰めてくれるの・・・ありがとう』
その時、僕の頭に妙な考えがひらめいた。
ボブは箱の開封前に"何か"がわかるのかも?
それを父さんや母さんに話したが鼻で笑われた。
そりゃそうだ、まさか花咲か爺さんじゃあるまいし。
そこで僕は以降に届いた箱をボブに"鑑定"させる事にした。
すると・・・
ある時は尻尾をブンブン振って喜び、
ある時は寂しそうに鳴いて伏せったり、
箱の中身を見た後の家族達のテンションと同じ反応を、
ボブは箱の開封前に示していた。100発100中だった。
これはホントのホントか・・・!?
家族はまだ半信半疑だったがそれを決定づける出来事が起きた。
ある家電が届いた時だった。いつものようにボブに箱を見せると、
突然ボブは怒り出し、ギャンギャン吠えて箱に噛みつこうとした。
『ワン!ワン!ワン!ガルルルル~!!』oU`X´Uノ"
『ボブ、落ち着けって、どうしたの!?』
それは今まで見たこともない程の荒ぶった反応だった。
ボブが落ち着いた頃、父が箱を開封して使用してみた。
しかし全然使用できない。使い方が悪い?不良品?
通販サイト記載のお客様相談に電話してもずっと繋がらない。
よもやと思いSNSで検索すると、なんと同じ声がわんさか出てきた。
更に数日後にはホームページが突然の閉鎖。
この会社の倒産がニュースで流れた。そして・・・
『だからこんなの買うなって言ったのよ!』(。-`ω´-)
『ええ!?母さんも賛成したじゃないか!』(# ゚Д゚)
『やめてよ、父さんも母さんもみっともない!』(-""-;)
『うるさい!お前は黙ってろ!』(# ゚Д゚)
『はあああ~!?』(-""-;)
家族は大喧嘩になった。
それを見ていたボブはケージの隅で丸くなってしまった。
僕は喧嘩する家族をしり目にボブの背中をさすってあげた。
"僕がいけないの?"まるでボブはそう言っているようだった。
『ボブのせいじゃないよ、大丈夫だよ。それどころか、
これで証明されたね、お前の素晴らしい能力がさ』。
僕がそう言うとボブの表情は少し和らいだ。
そして僕はまだ喧嘩を続ける家族に割って入った。
『みんないい加減にしてよ!ボブが落ち込んでるよ!
そんなことよりこれで証明されたよね、ボブの能力!』
僕がそう言い放つとみんな急に黙り込んだ。
『そ、そうだな、すまん、カッとなって。
ボブはこうなることを教えてくれてたんだな・・・』
以来、我が家ではどんな通販で届いた箱もボブの鑑定を仰いだ。
あまりにもボブの反応が悪すぎる時は箱を開封しない時さえあった。
ボブの鑑定が的確だったかどうかは実際はわからないけど、
ボブに鑑定してもらう事自体が我が家の幸せの一つの形になった。
箱の中が幸せかどうかを嗅ぎ取れる犬・・・
それはどんなX線検査でも放射線検査でも検知できない、
とっても不思議でファンタジックで愛おしい特技。
でも僕達家族はこの事を一切口外しなかった。
もしマスコミにでも取り上げられて世間に知れようものなら、
どんな悪い輩に狙われるかわかったもんじゃない!
まさに"花咲か爺さんの悪い爺さん"みたいな奴に。
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それから約10年、ボブは家族に鑑定をし続けてくれた。
ただ年のせいか、段々と鑑定をしなくなった。
勿論そんなことはどうでもよく、ボブが居てくれるだけで良かった。
むしろボブに頼り過ぎてた負い目もあり、少し安心もした。
そして、ボブはあまり活発に動かなくもなっていった。
いつしか鑑定は完全にしなくなり、毎日寝てばかりいた。
それから更に3年ほど経ったある日のことだった・・・
ボブ用に通販で買った高齢犬用の餌が届いた時だった。
ここ3年、全く鑑定せず寝てばかりのボブがムクっと起き、
そのダンボール箱に向かって嬉しそうにワンワン吠えた。
『ボブ、どうしたの!?・・・』
箱を開封するとボブは同封されていたあるものに鼻をあてた。
それは保護犬譲渡会のお知らせチラシ
ボブはチラシに載っていた1匹の犬を示して更に強く吠えた。
『ワン!ワン!ワン!!!』U^ェ^U
『ボブ、このワンちゃんが気になるのか!?』(。・ω・。)?
久しぶりに箱に反応したと思ったらこの押しの強さ。
しかも箱の中身にまでこんなに反応するのは初めてだ。
『ボブ、このワンちゃんに会いたいのか?』(。・ω・。)?
『ワン!ワン!ワワン!!!』U^ェ^U
家族みんなが、ボブがそう言っていると確信した。
そして次の週末、家族みんなでその譲渡会に行った。
ボブが示したそのワンちゃんは僕達にとてもなついてくれ、
その子を我が家へ迎え入れることを全員一致で即断した。
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まだ若くて元気な男の子に、名をボビーと名付けた。
ボブとボビーはすぐに仲良くなった。
ただ活発なボビーは寝てばかりのボブが少し物足りなさそうだった。
でもくつろぐ時や眠る時はいつもボブに寄り添っていた。
そしてボブは時々、ボビーに何かを教えているようにも見えた。
しかしボビーが来てからわずか三か月後、
ボブはいよいよ動かなくなり、ご飯もほとんど食べなくなった。
誰も口にはしなかったけど、もしかして、と誰もが思っていた。
心なしか普段は活発なボビーも少しおとなしくなった。
やがてボブは寝たきりになり何も食べなくなった。
ボビーは食事とトイレ以外は散歩も行かずにずっとボブのそばに居た。
そんな日が3日間ほど続いたある日・・・
"ピンポーン"とドアホンが鳴った。
その音にボブは寝たまま耳を少しだけ"ピクッ"と動かした。
通販で買ったボビー用のおもちゃの配達ドライバーさんだった。
僕はその箱を玄関で受け取り、リビングに持ってきた。
すると・・・
もう動く力のないボブが起きてヨロヨロと歩いてきた。
僕は静かに膝をおろし、その箱をボブに見せた。
『ほらこれ、ボビーの、弟のおもちゃ、どうだ?』
ボブは少しクンクンし、上がらない尻尾をピクッと動かし、
『ワン』
と小さな声で一鳴きしてそしてそのまま床につっぷして、
再び起き上がることは無かった。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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僕が話し終えると、息子は少しショボンとしていた。
『ねえパパ、じゃあボビーはボブが連れてきたの?』(*゚ー゚)
『そうだよ』』(´v`)
『ボビーも箱の中がわかるの?』(´v`)
『それはどうかな?お前はボビーのこと好きか?』(´v`)
『うん、好き。それから・・・ボブも好き』(*゚ー゚)
『そうか、ありがとう。ボブも喜ぶよ』(´v`)
『ねえパパ、今日はボビーと寝てもいい?』(*゚ー゚)
『うん、いいよ』(´v`)
『やった~、ボビーおいで!』(゚∀゚)
息子が呼ぶとボビーは息子の布団の隣にだらんと横になった。
『パパ、お休み』(゚∀゚)
『うん、お休み』(´v`)
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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【編集後記】
ボブはどうしてボビーを連れてきたのでしょうか?
ボブは自分の寿命を知っていたのでしょうか?
答えはわかりません。
ただ、ボブの能力は特別なものではないのかもしれません。
ある意味、人間も毎日似た能力を使っているのかもしれません。
だって私達は誰かの幸せを願って箱を作るのですから。
この箱を使う誰かの幸せが、見えるんですから。
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド