壊せ、愛ゆえに-後編-■アースダンボール メルマガVOL127■2022年1月号-2

ダンボールの声って聞いたことある? あの時、僕には確かに聞こえた気がしたんだ。 壊される役目のダンボールのお城が、 自分を壊す人に向かって『頑張れ、私を壊せ』って、 言った気がしたんだ。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** ~前回までのあらすじ~ 僕は滝田俊(たきたしゅん)。子供イベント会社勤務の24歳。 上司の七海(ななみ)主任は聡明で美人で僕の憧れの女性(ひと)だ。 そして5才の男の子、蒼(あおい)くんの母親でシングルマザー。 毎年うちの社は蒼くんが通う保育園の演劇会プロデュースを請け負う。 蒼くんは今年の演劇会で "ダンボールのお城を壊す怪獣役" をやる。 主任は仕事としてそのお城を作る準備を進めていたが、 気弱で何かを激しく壊すことが苦手な蒼くんは お城を壊す役なんてやりたくないと悩み・・・ しかし二人は自分がすべき事と向き合い、まっとうしようとする。 そして迎えた演劇会当日、なのに主任がまだ会場に来てない!! 主任!せめて蒼くんの出番までには間に合ってくれ~!! (前編の全文はこちらです↓↓) URL (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** そして遂に演劇会の日。 僕は会場の一番後方で全体を見守る配置についた。 主任は急遽別件の対応で遅れ、主任が来ないまま開幕した。 今年も大勢の観客が来場し、出演者もスタッフも気合満々だ。 でもやっぱり、蒼くんや他の数人は緊張している様子だった。 劇は着々と進行した。 皆今年も頑張って稽古したんだな。観客の反応もなかなかいい! でも劇中、僕は何度も時計を見た。 "主任、まだかな・・・もうすぐ蒼くんの出番なのに" 緊張気味の蒼くんが舞台そでにスタンバっているのが見えた。 "大丈夫!!あれだけ稽古頑張ったんだから" 僕はそう念じた。 そして主任が来ないまま蒼くんの出番になった。 "ああ、主任ってば、まだかあ~~!!"(;゜Д゜) 場内には危機迫る雰囲気のBGMが流れ始めた。 そして怪獣着ぐるみを着た蒼くんが舞台そでから現れ、 スポットを浴びながらのっしのっしとお城に歩み寄った。 そして遂にお城の前に立ち、BGMのボリュームが下がった。 いよいよお城に襲い掛かるシーンだ! でもそこから次の一歩が出せなくなってしまった・・・ その時だった。 『はあ、はあっっ、、ごめん!今どこ?どの場面!?』 息を切らした主任が僕の肩を叩いた。 『主任、何やってんですか、ほら!あそこ!今!今です!!』 僕が指差した舞台上で蒼くんの動きが10秒ほど止まっていた。 『あ、蒼!! アオイイイ!!』(;゜Д゜) 主任は声を押し殺し、声にならない声で叫んだ。 主任、主任!・・・ああ、どうすれば、どうすれば!! すると突然・・・僕達のすぐ前の観客が大声叫んだ。 『蒼くん、頑張れ!頑張れ~!!』(*´ノ0`) その声を皮切りに、会場内から次々に声援が上がった! そうだ、これがこの演劇会のいいところでもあるんだ! 身内同士でも盛り上げれる演劇会!最高じゃんか! 『蒼い~!頑張れ~!!』 『やれ~!イケ~!アオイ~!』 『蒼くん~!ファイトおおお~!!』 いつの間にか僕も主任も大声で一緒に叫んだ。 『アオイ~!アオイ~!アオイ~!!!』ヾ(叫゜Д゜)ノ 『蒼くん!蒼くん!蒼くん!』ヾ(;`・Д・)ノ 蒼くんが一歩踏み出すと今度は・・・ 会場内が一気に静まり、全員が蒼くんの演技に集中した。 ボンッ!ボボボンッ!! 蒼くんは全身で力強くお城に体当たりした。 ブチッ!ブチブチッ!! 今度はお城の支柱をもぎ取り、ドサッ!と床に叩きつけ、 『があああおおおおお~!!』と雄叫びをあげた。 最後に両腕で力いっぱいお城の上半分を持ち上げると、 ドサドサドサ~~ッ!! とけたたましい轟音と共にお城は崩れ散った・・・ 時間にして約20秒くらいだろうか。 場内には蒼くんがダンボールと格闘する音だけが響いた。 観客はお城が崩れ散った後もまだ息を呑んでいた。 な、なんだ・・・今、何が起こったんだ? そして今聞えたのは何だ? ダンボールの音? いや違う、ダンボールの、声? 壊されるお城が蒼くんを応援していたような、共鳴したような、 そのな蒼くんとダンボールのお城の "会話" が聞こえた気がした。 『蒼くん、頑張れ、私を壊せ!・・・』 98-2 ___________ 気が付くと僕の頬には涙が伝っていた。 隣を見ると、主任も涙を流し、ただ呆然と舞台を見つめていた。 『主任、蒼くん、やりましたね』 『うん、うん・・・ねえ、滝田君・・・』 『なんですか?』 『ダンボールの音って、なんかいいわね』 『そ、そこですか!? まあ、ええ、すごくいいです』 『もっと子供イベントでダンボール使って行きましょ』 『もう、こんな時にも仕事の話ですか? 今日は蒼くんを沢山抱きしめてあげて下さいね』 『うん、そうする。それからね、滝田君、 今回は全部あなたのおかげ。本当にありがとう』 『え、いや、その、僕はなにも・・・』 (しゃあああッ!!主任のハートゲットに一歩前進~!) ┗(`・∀・´) FIN (´o`)п(´o`)п(´o`)п ****************************     【編集後記】 ダンボールって本当に不思議なもので、 いや弊社がダンボール屋だからそう思うのかもしれませんが、 使う人の気持ちに意志をもって応えてくれてるのかも、 と思わせる事が時々あるんです。 使う人が想いを伝えると、時には想いをぶつけられたとしても、 それを受け止めて、時にはいい感じにはね返してくれる・・・ 多分、皆さんが扱う素材やサービスやシステムでも、 そんな時がきっとあると思うんですが、どうですか? 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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