ラブレターは50年後に渡して -前編-■アースダンボール メルマガVOL138■2022年7月号

誰にも言えない秘密、あなたにはありますか? 誰にも言えない秘密って、 辛く苦しい事の方が多いかもしれない。 私は妻が50年もある秘密を抱えていた事を、 つい最近知った。 妻にとってそれは辛かったろうか?それとも・・? 98-2 (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** 私は安城烈(あんじょうれつ)。還暦を少し過ぎた男。 その秘密の始まりは私が11歳の頃だ。 当時、私にはジョニー(譲二)、タカポン(隆夫)、 という二人の親友が居た。勿論、今でも大親友だ。 あの頃、私達には秘密基地があった。 街はずれの草で覆われた空き地にオンボロ小屋があって、 普段は人も来ないし雨風をしのげたのをいい事に、 私達は勝手に秘密基地として使っていた。 といっても何も大した事をするわけでもなく、 マンガやゲーム、昼寝、クラスの女の子の話とか、 ただ暇に任せてダラダラ過ごすだけの基地だった。 ある日ジョニーが基地に1箱のダンボール箱を持って来た。 『なあ、この箱を保管庫にしようぜ!!』 何て事の無い普通のダンボール箱だったが、 基地内のそこいらに散らばっていた物を箱にしまうと、 意外とスペースがスッキリして少し気分が凛とした。 ただ中身は古いボードゲームや水鉄砲、ゴムボール、 それから三人で秘密裏に集めた写真が一杯の大人の雑誌とか。 パッと見は他人が見たらごみ箱と思う程のものだった。 その後、実際にこの箱はゴミとして扱われるのだが・・・ (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** そんなある日、いつものように私が基地に行くと、 先に来たタカポンが空き地の入り口で立っていた。 『おお、タカポン、こんなとこでどうした?』 『ああ、レツ、あれ、見ろよ・・・』 そう言ってタカポンが指差す方を見ると、 基地へ通じるスペース全体に"立入禁止"のボードと、 えらく頑丈そうなバリケードが築かれていた。 そうこうしているうちにジョニーもやって来た。 すると突然 "ドドドド!!" という爆音と共に重機が動きだし、 基地があっという間に解体されてしまった。 『お、おい・・・なんだよ、これ・・・』 私達はしばらく目の前の現実を受け入れられなかった。 呆然と立ち尽くす私達に一人の作業員が気づいた。 『お前達ここで何してんだ!危ないから離れてろ!』 そう作業員が言うや否や、私は声を発した。 『あの、ダンボール箱、小屋にありませんでしたか!?』 『ダンボール?何も無かったけどなあ』 『あの、このくらいの箱で・・・』 『あったとしても廃棄業者が全部持ってったよ』 『そ、そうですか・・・わ、わかりました』 私達はトボトボと歩き出し、空き地を後にした。 基地が無くなったのもショックだったが、 実はもっとショックな事があった。 あの箱には私達の大事な手書きの"作戦書"がしまってあった。 その"作戦書"をつい昨日、三人で箱の底にしまったのだ。 そして明日、その"作戦書"である作戦を決行する予定だった。 その"作戦書"とは・・・ラブレター・・・ 私達三人にはそれぞれに好きな女の子が居た。 私達は基地で互いの好きな女の子を打ち明けあい、 来る日も来る日も互いの恋心を語り合った。 ならばいっそ三人一緒に告白しようとなり、 それぞれがそれぞれの子への想いを手紙に込め、 いよいよ明日の作戦(手紙を渡す)決行を目前にしながら、 基地もろともラブレターも消失してしまったのだ。 私達はショックのあまり、作戦の再構築はおろか、 しばらく何もする事ができなかった。 その後、空き地ではすぐに建設工事が始まり、 二年後には立派なショッピングモールが開業した。 私達三人はというと・・・ 中学生になっても三人とも同じ子への想いは変わらず、 ジョニーとタカポンは各々で告白、しかし玉砕。 私は高校生になってやっと告白、そして・・・ 私だけが見事にOKを貰い、その子と付き合うことに。 そしてその子と数年付き合い大学卒業後に結婚し、今に至る。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************** あれから約50年・・・ ショッピングモールは今も街のシンボルとして賑わい、 私達三人はモール内の飲み屋でよく酒を交わしている。 そんな中、それはあまりにも突然に起きた・・・!! ショッピングモール開業50周年イベントの一環で、 開発当時から今に至る間の写真パネル展示があった。 私達は三人でこの50年を懐かしみながら展示を見ていた。 すると突然、ジョニーが叫んだ。 『あああ!!おいレツ、見ろよ、これ!!』 『ええ?何?・・って、これ・・・』 『ああ、間違えない、あの箱だ・・』 『うん、箱に三人で書いた落書きもある!』 古いその写真にはここが空き地だった頃の、 まだ壊される直前の基地と、"あの箱"を手に持った、 作業服を着た20歳くらいの男性作業員が写っていた。 『懐かしいな~・・・』 私達三人の心は一瞬であの頃に戻った。 『なあ、この箱、捨てられちまったんだよな』 『うん、そう聞いた、そう聞いたけど』 『けど・・・?』 私はふいに箱がどんな最後だったのかを知りたくなった。 いや、心のどこかで廃棄された事をずっと認めていなかった。 その抑え込んでいた気持ちがここで一気に湧き上がった。 『俺、ちょっと調べてみるよ』 私はモール運営会社に頼み、写真の人物を探してもらった。 そして、その人は70歳で今も北海道でご存命とわかった。 私は意を決して、一人でその人に会いに北海道へ飛んだ。 To Be Continued ~次号へ続く~ ━━━━━━━━━━━━━━━     【編集後記】 なんで書いたラブレターを基地に保管すんねん! と思われる方もいらっしゃることでしょう。 特に女性はそう思われるかもしれませんね。 でもほら、男ってばかみたいなとこあるじゃないですか。 不合理なものに夢中になってしまったり、 男のロマンとかなんとか言いながら・・・ それが誰かと分かち合った秘密だとしたら、 秘密基地だって聖地みたいになってしまうし ダンボール箱だって厳重な保管庫になってしまう。 ほんと、男っていうのは・・・ね。 さて次号は、あの箱とラブレターのその後が明らかに! 最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m 7月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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