最強のキミと最凶のボクが出会ったら -前編-■アースダンボールメルマガVOL166■2023年9月号

『私、男運が無いんですよ~』右隣の女性が言った。 『俺は女運が無いんだよな~』左隣の男性が言った。 『俺は車運。新車買った後に故障したりぶつけられたり散々』 今度は正面の席の男性が言った。 『ねえ、笠原さんは何か運の無い事とかある?』 『僕ですか?一応ありますよ、ダンボール運・・・』 『ダンボール運?なにそれ?』 『実は僕、ダンボール運がめっちゃ悪いんですよ!』 98-2 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 僕の名前は笠原守(かさはらまもる)、24歳、新人社員。 入社早々、僕は人生最大の特異点をカミングアウトさせられた。 その特異点とは、ダンボール運・・・ 誰も聞いた事が無いと思うけどダンボール運は実在する。 例えば男運とか女運とかはよく聞くしわかりやすい。 車運ってのも内容を聞けば頷ける。 もっとわかりやすいのだと、くじ運もよく聞く。 それらと全く同じ。運の対象がダンボールっていうだけ。 それともう一つ、運が"無い"のと"悪い"のも厳密には違う。 で僕は、ダンボール運が悪い。 例えば・・・ 僕がダンボール箱を持つと何故かしょっちゅう底が抜けて中身が落ちる。 大人数でダンボール箱を移動する時などは必ず一番重い箱を選んでしまう。 大事な物を入れたダンボール箱にサッカーボールが飛んできて衝突撃破。 小学校の演劇会で僕が作ったダンボールセットが公演中に突然崩壊。 何故か道端に落ちてた邪魔なダンボール箱を端によけようとしたら、 これまた何故か中から大量の女性下着が出てきてしまい、 偶然通りかかった女性に悲鳴を上げられて通報されて、 誤解を解くのに2時間かかった・・・とか、 挙げればネタが尽きない。そして僕はある時ようやく気付いた。 "俺、ダンボール運が悪すぎんじゃね・・・"と。 もう体質というべきか神のイタズラというべきか。 とにかく僕は早々に人生の一部(ダンボールに関わる全て)を諦めた。 以来、なるべくダンボールと関わらないようにしているが、 現代においてダンボールと完全無関係の生活は難しい。 ちょっとでもダンボールに関われば何かが起きる。 いい加減に慣れっこだけど、やっぱりどこか少し切ない。 でもだからこそ、ほんのちょっとだけ夢もあるんだ。 例えば男運、女運とかなら"この人に出会う為に今まで運がなかった" っていう素敵な出会いがあったりするじゃないですか!! ゆうてもダンボール運じゃどうにもならないよな~ε-(;-ω-`) でも、そんな時だった。僕が彼女に出会ったのは・・・ (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** ある日のこと・・・ 取引先のイベントでの景品が沢山余ったとかで、 "皆で分けて下さい"と沢山のダンボール箱が我社に届いた。 各箱の中身はお楽しみ、一人一箱、早い者勝ち、ご自由にどうぞ、か。 僕には無関係、手ださんとこ・・・ そう思って積まれた箱に背を向けた時だった。 『あれ?あなた貰わないの?』 一人の女性が僕に声をかけてきた。 『確か君は資材部の灘(なだ)さん・・・』 『そう、資材部の灘さつき、よろしく!で、あなたは貰わないの?』 『うん、僕はこういうのは関わらない事にしてるんだ』 『なんで?もったえない。いい物当たるかもよ』 『いや、当たらない、絶対ない。むしろその逆しかない。  不用品が当たって処分にお金かかったとか、絶対そう』 『ふ~ん、なんだか相当な、でもって変な自信ね』 『悪かったね、とにかく僕はいらない』 『じゃあさ、私と一緒に選ばない?』 『は?なんで?』 『私、実はダンボール運がめっちゃ強いのよ』 『へえ~ダンボール運がねえ・・・ってええ!?ダンボール運!?』 『そう、聞いた事無いでしょ、絶対いいもの当たるわよ』 『(な・・・、俺と真逆の存在だと!?)』 僕は彼女の"それ"を確かめたくて一緒に1箱を選んだ。 すると・・・特賞レベルでも不用品レベルでもなかった。 『あれ、意外と普通、てかいつもより全然いい物だ・・・』 『そうなの?私、いつもならもっといい物当たるんだけどな』 僕はいつもより良い物、彼女はいつもより良くない物、 結果、可もなく不可もない物・・・運が、中和された!? まさかそんなことあるわけ・・・ 僕は頭の中が真っ白になった。 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** 僕は自分の人生の特異点 "最凶ダンボール運" を彼女に話した。 彼女は『それおもしろそう!』と言って笑った。そして更に、 『じゃあさ、これからダンボール事は私が助けるよ。  そしたらどうなるか私もすっごい気になる!!』とも言った。 『助けるって、逆に君のダンボール運が下がるって事だぜ』 『う~ん、私、自分のこの特異点、あんまり好きじゃなくてさ』 『どうして?ダンボールだけとはいえ運がいいんだぜ?』 『なんか、いつかこの運におぼれちゃいそうでさ』 『そう、なんだ。運がいいならいいで色々あるんだな』 『まあね、色々あるのよ、本当に、色々ね』 彼女は一瞬、遠い目をした。 でもまさか、僕の運を中和できる人に出会うなんて。 これは奇跡なのか?絶対奇跡だよな!? いやそれとも・・・ 『もしかして、君だったのかな・・・』 『君って、何が?』 『あ、いや、何でもない、ごめん・・・』 "僕の運命の人は君だったのかな" 僕はその言葉を飲み込んだ。 それから彼女は幾度となく僕のダンボール運を中和してくれた。 彼女と出会ってからの僕のダンボール運は本当に変わった。 凄く良い訳じゃないけど時々ちょっといい結果で、 凄く悪い訳じゃないけど時々ちょっと残念な結果で、 "普通"がこんなに心地い物だったなんて思いもしなかった。 その度に笑う僕に、彼女はいつも"良かったね"と笑顔を返してくれた。 そんな彼女を僕は好きになった。ずっと一緒に居たいと思った。 もちろん彼女にダンボール運が無かったとしてもだ。 僕のダンボール運が悪くて本当に良かったと初めて思えた。 僕は彼女にプロポーズし、彼女もそれを受けてくれた。 そして僕達は結婚した。 _________ 結婚生活は幸せだった。 子供にも孫にも恵まれ、楽しい思い出も辛く悲しい思い出もあった。 ダンボール運もそうだった。適度に良くて適度に悪くて。 ただそれゆえに、ずっと聞けなかった事がある。 ありがたくも金婚式の今日、僕はそれを聞いてみようと思う。 "空気読まない人"と言われるのを承知の上で。 『なあ、さつき、僕と結婚して幸せだった?』 そして彼女の口から返って来た言葉で、僕は初めて彼女の想いを知る事になる。 こんなに長く一緒に居たのに、僕は彼女の事を全然わかっていなかったのだ。 To Be Continued ~次号へ続く~ 98-2 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     【編集後記】 あなたは何か特別な事に運がいいですか?悪いですか? 運を受け入れる人、利用する人、諦める人、あらがう人、 いろんなタイプの人が居ますよね。 因みにあなたのダンボール運はどうですか? あ、答えなくてもわかりますよ。 だってこのメルマガを読んで下さってるって事は、 アースダンボールとご縁があったって事ですからね^^ 今号も最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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