最強のキミと最凶のボクが出会ったら -前編-■アースダンボールメルマガVOL166■2023年9月号
『私、男運が無いんですよ~』右隣の女性が言った。
『俺は女運が無いんだよな~』左隣の男性が言った。
『俺は車運。新車買った後に故障したりぶつけられたり散々』
今度は正面の席の男性が言った。
『ねえ、笠原さんは何か運の無い事とかある?』
『僕ですか?一応ありますよ、ダンボール運・・・』
『ダンボール運?なにそれ?』
『実は僕、ダンボール運がめっちゃ悪いんですよ!』
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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僕の名前は笠原守(かさはらまもる)、24歳、新人社員。
入社早々、僕は人生最大の特異点をカミングアウトさせられた。
その特異点とは、ダンボール運・・・
誰も聞いた事が無いと思うけどダンボール運は実在する。
例えば男運とか女運とかはよく聞くしわかりやすい。
車運ってのも内容を聞けば頷ける。
もっとわかりやすいのだと、くじ運もよく聞く。
それらと全く同じ。運の対象がダンボールっていうだけ。
それともう一つ、運が"無い"のと"悪い"のも厳密には違う。
で僕は、ダンボール運が悪い。
例えば・・・
僕がダンボール箱を持つと何故かしょっちゅう底が抜けて中身が落ちる。
大人数でダンボール箱を移動する時などは必ず一番重い箱を選んでしまう。
大事な物を入れたダンボール箱にサッカーボールが飛んできて衝突撃破。
小学校の演劇会で僕が作ったダンボールセットが公演中に突然崩壊。
何故か道端に落ちてた邪魔なダンボール箱を端によけようとしたら、
これまた何故か中から大量の女性下着が出てきてしまい、
偶然通りかかった女性に悲鳴を上げられて通報されて、
誤解を解くのに2時間かかった・・・とか、
挙げればネタが尽きない。そして僕はある時ようやく気付いた。
"俺、ダンボール運が悪すぎんじゃね・・・"と。
もう体質というべきか神のイタズラというべきか。
とにかく僕は早々に人生の一部(ダンボールに関わる全て)を諦めた。
以来、なるべくダンボールと関わらないようにしているが、
現代においてダンボールと完全無関係の生活は難しい。
ちょっとでもダンボールに関われば何かが起きる。
いい加減に慣れっこだけど、やっぱりどこか少し切ない。
でもだからこそ、ほんのちょっとだけ夢もあるんだ。
例えば男運、女運とかなら"この人に出会う為に今まで運がなかった"
っていう素敵な出会いがあったりするじゃないですか!!
ゆうてもダンボール運じゃどうにもならないよな~ε-(;-ω-`)
でも、そんな時だった。僕が彼女に出会ったのは・・・
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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ある日のこと・・・
取引先のイベントでの景品が沢山余ったとかで、
"皆で分けて下さい"と沢山のダンボール箱が我社に届いた。
各箱の中身はお楽しみ、一人一箱、早い者勝ち、ご自由にどうぞ、か。
僕には無関係、手ださんとこ・・・
そう思って積まれた箱に背を向けた時だった。
『あれ?あなた貰わないの?』
一人の女性が僕に声をかけてきた。
『確か君は資材部の灘(なだ)さん・・・』
『そう、資材部の灘さつき、よろしく!で、あなたは貰わないの?』
『うん、僕はこういうのは関わらない事にしてるんだ』
『なんで?もったえない。いい物当たるかもよ』
『いや、当たらない、絶対ない。むしろその逆しかない。
不用品が当たって処分にお金かかったとか、絶対そう』
『ふ~ん、なんだか相当な、でもって変な自信ね』
『悪かったね、とにかく僕はいらない』
『じゃあさ、私と一緒に選ばない?』
『は?なんで?』
『私、実はダンボール運がめっちゃ強いのよ』
『へえ~ダンボール運がねえ・・・ってええ!?ダンボール運!?』
『そう、聞いた事無いでしょ、絶対いいもの当たるわよ』
『(な・・・、俺と真逆の存在だと!?)』
僕は彼女の"それ"を確かめたくて一緒に1箱を選んだ。
すると・・・特賞レベルでも不用品レベルでもなかった。
『あれ、意外と普通、てかいつもより全然いい物だ・・・』
『そうなの?私、いつもならもっといい物当たるんだけどな』
僕はいつもより良い物、彼女はいつもより良くない物、
結果、可もなく不可もない物・・・運が、中和された!?
まさかそんなことあるわけ・・・
僕は頭の中が真っ白になった。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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僕は自分の人生の特異点 "最凶ダンボール運" を彼女に話した。
彼女は『それおもしろそう!』と言って笑った。そして更に、
『じゃあさ、これからダンボール事は私が助けるよ。
そしたらどうなるか私もすっごい気になる!!』とも言った。
『助けるって、逆に君のダンボール運が下がるって事だぜ』
『う~ん、私、自分のこの特異点、あんまり好きじゃなくてさ』
『どうして?ダンボールだけとはいえ運がいいんだぜ?』
『なんか、いつかこの運におぼれちゃいそうでさ』
『そう、なんだ。運がいいならいいで色々あるんだな』
『まあね、色々あるのよ、本当に、色々ね』
彼女は一瞬、遠い目をした。
でもまさか、僕の運を中和できる人に出会うなんて。
これは奇跡なのか?絶対奇跡だよな!? いやそれとも・・・
『もしかして、君だったのかな・・・』
『君って、何が?』
『あ、いや、何でもない、ごめん・・・』
"僕の運命の人は君だったのかな"
僕はその言葉を飲み込んだ。
それから彼女は幾度となく僕のダンボール運を中和してくれた。
彼女と出会ってからの僕のダンボール運は本当に変わった。
凄く良い訳じゃないけど時々ちょっといい結果で、
凄く悪い訳じゃないけど時々ちょっと残念な結果で、
"普通"がこんなに心地い物だったなんて思いもしなかった。
その度に笑う僕に、彼女はいつも"良かったね"と笑顔を返してくれた。
そんな彼女を僕は好きになった。ずっと一緒に居たいと思った。
もちろん彼女にダンボール運が無かったとしてもだ。
僕のダンボール運が悪くて本当に良かったと初めて思えた。
僕は彼女にプロポーズし、彼女もそれを受けてくれた。
そして僕達は結婚した。
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結婚生活は幸せだった。
子供にも孫にも恵まれ、楽しい思い出も辛く悲しい思い出もあった。
ダンボール運もそうだった。適度に良くて適度に悪くて。
ただそれゆえに、ずっと聞けなかった事がある。
ありがたくも金婚式の今日、僕はそれを聞いてみようと思う。
"空気読まない人"と言われるのを承知の上で。
『なあ、さつき、僕と結婚して幸せだった?』
そして彼女の口から返って来た言葉で、僕は初めて彼女の想いを知る事になる。
こんなに長く一緒に居たのに、僕は彼女の事を全然わかっていなかったのだ。
To Be Continued ~次号へ続く~
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【編集後記】
あなたは何か特別な事に運がいいですか?悪いですか?
運を受け入れる人、利用する人、諦める人、あらがう人、
いろんなタイプの人が居ますよね。
因みにあなたのダンボール運はどうですか?
あ、答えなくてもわかりますよ。
だってこのメルマガを読んで下さってるって事は、
アースダンボールとご縁があったって事ですからね^^
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド