その男、ワクワクにつき■アースダンボールメルマガVOL165■2023年8月号-2
『そこにワクワクはあるのか!!(」〃>Д<)」』
突然テレビCMから吐き出されたセリフに僕は、
『ああ!?ならワクワクがなんだか説明してみろい!!』
とムキになって言い返した。CM相手に。
『あと "そこに愛はあるのか" のパクリじゃねえか!』
とも付け足した。
ワクワクってのはな!ワクワクってのはなああ!!
・・・やっぱ俺もわかんねえ・・・
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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僕は和久井将司(まさし)38歳サラリーマン、1児の父親。
ある企業の新商品開発チームに所属している。
そして僕が今取り組んでいる開発テーマが "ワクワク" 。
ワクワクについて毎日考え、ひたすらワクワクを探す日々。
でも世間には "薄っぺらなワクワク" がなんと多い事か!
ワクワクするような○○とか、貴方のワクワクを刺激するとか、
ワクワクというワードだけが強調され、踊り、独り歩きしている、
そんな感じがしてならない。
かくいう自分もまだ納得した答えが得られていない。
そんな "ワクワク" に "悶々(もんもん)" としていたある日の事・・・
10歳の息子、総士(そうし)の行動がいつもと違う事に気づいた。
『総士、毎週ルーティンのアニメ、今日は観なかったのか?』
『うん、ゲームしてたら観るの忘れた』
『忘れたって、楽しみにしてたんじゃないのか?』
『別に忘れてもアマプラでもネトフリでも後で観れるし』
『そりゃそうだけど、それじゃワクワクとかしないじゃん』
『ワクワク?別にいつ見ても面白さは変わんないじゃん』
『そんな事はない!ワクワクしながら観た方が10倍楽しめる』
『・・ううん・・俺は観れればいつでもいいかな』
『(な・・!!Σ(゚Д゚)なんだって!!!)』
僕はその時はっきりわかった。ここにワクワクが無い事を。
そんなんじゃ、いやそんなんじゃないだろう!!
アニメだけじゃない、毎週楽しみな番組ってワクワクするもんだろ!
ワクワクしながら観るから心に刺さる、感動も大きいってもんだろ!
『総士、ちょっとここに座れ』
『んな、なに?面倒な話?』
『お前にワクワクをレクチャーしてやる』
『それ、長くなる話?』
『そうでもない』
僕は総士に自分が子供の頃のワクワク感を語り始めた。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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『アニメのワクワクは、ワクワクの終わりから始まるんだ』
『終わりが始まり?意味わかんない』
『まあ聞け・・・』
大好きなアニメの30分間の本編オンエアが終わり、
キービジュアル映像と共にエンディングテーマが流れ、最後に数秒の次回予告。
そして遂に "この番組は、○○〇 の提供でお送りしました" が流れ、
次の番組枠のCMが流れ始める・・・そう、終わりの瞬間だ。
ああ終わったんだ、燃え尽きた・・何もかも・・真っ白にな・・
いつまでもあの気分に浸っていたい、あの時間が永遠に続けばいいのに、
そんな気持ちを無残に打ち砕く時、それがワクワクの終わりだ。
それでも少年はアニメに貰った夢を胸に全てを振り切って現実に帰る。
来週のオンエアという次の夢に向かって。それがワクワクの始まりだ。
『・・ううん・・よくわかんない』
『まあ続きを聞け』
それでもオンエア終了直後は未練が残る。だからせめて、
布団に入ってからも名場面を思い返し、あの余韻に包まれて眠るんだ。
でも、実はその余韻がもう一度よみがえる時間があるんだ。
それが、翌日の学校で友達とかわす『昨日の観た?』の合言葉だ。
そこで今一度だけあの夢の時間に戻り、友と語り心を共有しあう・・・
こうやって来週のオンエアに向けての心の準備を整えるんだ。
『友達と話すのは楽しい、それはわかる』
『だろ?』
でも小学生は忙しい。
学校の授業、苦手な給食のおかずとの格闘、放課後の遊び、
習い事、家の手伝い、宿題やゲームやエトセトラ・・・
そんな日常に揉まれながら少しづつあの余韻を忘れていくんだ。
でも忘れはすれど、あの余韻の灯(ともしび)は決して消えはしない。
また会えると信じているからね。
『忘れそうならアラート設定すればいんじゃね』
『そんな知恵は当時なかった。まあ聞け』
そんな風に日々を必死に生きていればいつか希望の光が見えてくる。
気が付けば次のオンエアまであと3日。
この頃から心の灯はオンエアに向けて再び強く燃え始めるんだ。
もういくつ寝ると、あと3日寝ると、2日寝ると、1回・・・
それは例えるならプロのスポーツ選手がシーズンインに向けて
自分の心身の状態をピークに持っていく為の調整のそれだ。
つまりワクワクのピークを次のオンエアスタート時点に持っていく事こそ、
リアルタイムオンエアで最大の感動が得られるって事なんだ!
ワクワク人間はその事を脳にも心身にも叩き込んでいるのさ!
『お父さん、俺なんかワクワクしてきたかも』
『だろ、さてこっからがクライマックスだ』
そしてオンエア当日の朝がくる、決戦の朝だ。
ワクワクピークを今夜7時にもっていく為だけに今日という日を過ごす。
実はここで大事なのは平常心。最終調整こそ平常心が必要なんだ。
平常心で登校し、授業を受け、下校する。宿題もさっと片づける。
そしていよいよ誰の邪魔も入らない状態で自分だけの世界に入って仕上げだ。
オンエア1時間前、ソワソワが止まらない・・・だが平常心。
オンエア30分前、緊張感さえ感じてくる・・・だが平常心。
15分前、時計に何度も目を送り始める。
遅い、時間が経つのが遅い!まだ10秒しか経っていない!!
でも最後のこの苦しい時間こそワクワクピークを最大にする為の時間なんだ。
そして遂に・・・
きた・・来た!来たああああ~キタ――(゚∀゚)――!!
ここで今まで貯めたワクワクエネルギーを一気に解放!!
生きてきて良かった!!この為に生きてきた!!
大人子供老若男女関係ない。誰にも恥ずる事なく素直にそう言おう!!
『父さん、よくわかんないけどすごいよ!』
『だろ、さあ、いよいよ終わりの始まりへ向かうぞ』
アニメは通常30分。まずは前半終了で一旦CMだ。
勿論CMなんて頭に入らない。脳内で前半ハイライトを鬼リピだ。
CMうぜえ、早く終われ!!そう願う事数十秒、後半戦がスタート。
時間は刻々と過ぎる。没頭しつつも徐々に終了時間が気になり始める。
大丈夫、まだ10分ある、まだ5分ある、2分ある、だけど・・・
そして遂に本編終了を迎える・・・一瞬訪れる落胆、だがその瞬間!
いやまだだ、またエンディングテーマがある!!
キービジュアル映像と共にエンディングテーマが流れ、最後に数秒の次回予告。
そして遂に "この番組は、○○〇 の提供でお送りしました" が流れ、
次の番組枠のCMが流れ始める・・・そう、本当の終わりの瞬間だ。
ああ終わったんだ、燃え尽きた・・何もかも・・真っ白にな・・
いつまでもあの気分に浸っていたい、あの時間が永遠に続けばいいのに、
そんな気持ちを無残に打ち砕く時、それがワクワクの終わりだ。
それでも少年はアニメに貰った夢を胸に全てを振り切って現実に帰る。
来週のオンエアという次の夢に向かって。それがワクワクの始まりだ。
アニメのワクワクは、ワクワクの終わりから始まるんだ。
これがワクワクってやつさ!
自分ではどうすることもできない、あらゆる物理的そして時間的壁が、
そう、会えない時間こそがワクワクを育て、熟成させていくんだ!!
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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『・・・というのが私の考えるワクワクでありまして!!』
『うん、なるほど、わかった。一つ確認したいんだが、和久井くん』
『はい、何なりと!』
『我社はダンボール製品の最先端企業という事は、わかってるね』
『はい、存分に理解してます!』
『で、ここは新商品の開発会議の席上という事も、わかってるね』
『はい、存分に認識してます!』
『君はその会議でのプレゼン中、という事も、わかってるね』
『はい、存分に実感してます!』
『宜しい。ではそのワクワクを新商品にどう活かすんだね?』
『それは、その、今、念(ねん)を練ってる最中でして・・・』
『わけわからん。正直に考え中と言いなさい』
『か、考え中です・・・』
『ふ~、ε-(;-ω-`) まあわかった。早急にまとめなさい』
『はい、存分に練り上げます!』
『では、今日の会議はこれで終了します。お疲れ様でした』
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『開発部長、ちょっといいかな?』
『はい、社長、なんでしょう?』
『君の部署の和久井くんの事なんだがね・・・』
『あ、私の管理指導不行き届きです、申し訳ありません・・・』
『いや、そうじゃないんだ。』
『と、もうしますと?』
『彼のハチャメチャぶりは今に始まった事じゃないし、
むしろ今までも素晴らしい開発実績が沢山ある。しかしまあ、
彼の上司は少し大変かもしれないがこれからも商品開発部を頼みます』
『わざわざそれを伝えに?ありがとうございます』
『それにね・・・』
『それに・・・?』
『あんなに好きなものを人に熱く語れる彼が、少しうらやましくもあるんだ』
『うらやましい?』
『まあ、そうなんだがそれは別にいいんだ・・・
ただね、好きな物を思いきり好きと言える、ワクワクすると言える、
そんな人や場面が、昨今は少なくなってしまったように思えてね。
だからなのか、素直にワクワクだと言い放つ彼を見ていると、
これからのダンボールがどう進化していくか楽しみになってしまうんだよ。
ダンボールはきっと、もっと人の役に立てて、もっと人を幸せにできる。
そういう気持ちが抑えられなくなってしまうんですよ。
彼のワクワクがいい形で新商品に活かせるようにサポートしてあげて下さい。
ちょっとわけわかんない部分もありますけどね (・´ェ`・;)』
FIN
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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【編集後記】
実は私、ワクワクというものが未だにわかりません。
わからないというのは決してワクワクした経験が無いという事ではなく、
未だにワクワクというものの納得いく言語化ができないという意味です。
そのくせ、世の中のワクワク的なキャッチを見るとその多くに、
"全然ワクワクしねえ・・・" と(心で)悪態をつくひねくれ者です。
なんか、ワクワクという言葉だけが大量安売りされてるような、
誰かの主観の塊のようなワクワクを押し付けられているような。
かくいう私のワクワクだって果たしてどれだけの人に受け入れられるか、
あるいは否定されるか、わかったもんじゃありません。
ただ私はこれでも一応物書きの端くれ・・・
私が知るワクワクを言葉にする事で、あなたが幸せを感じて頂ける姿に、
やっぱりワクワクしてしまうのです。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド