私を屋台に連れてって■アースダンボール メルマガVOL75■2019年11月号-2
OLが一人で夜の屋台の暖簾(のれん)をくぐる時、
大抵はワケありって話、聞いたことある?
私の名前は藤崎尚美(ふじさきなおみ)。
大阪の短大を卒業してそのまま大阪でOLになって5年目。
大阪に来たのも普通のOLになったのも、
特に目的とか、ましてや夢なんてあった訳じゃなくて、
ただ何となく・・・
地元を離れたかったっていうか、家を出たかったっていうか、
本当に、ただそんな感じでした。
でも、駅前のある屋台との出会いがきっかけで、
ちょっぴり素敵なホームシックになっちゃって(笑)
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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私の実家は大阪からは遠く離れた場所で、農家なの。
お野菜を作ってて、規模も結構大きくやってて、
従業員さんも何人かいて、全国にも発送とかしてて。
私も何不自由なく育ててもらったわ。
ちなみに私は一人っ子。
お父さんもお母さんも、口には出さなかったけどきっと、
お婿さんに来てもらって家業を継いで欲しかったと思う。
でも中学高校とちょっとだけイマドキ気取りだった私は、
あんまり農業が好きになれなくって、都会にも憧れてて。
高校を卒業したら大阪の短大に行きたいって言って。
それをお父さんもお母さんも快く賛成してくれた。
でも家業が嫌いって訳じゃなくて、
従業員さん達もみんないい人で、家族みたいに仲良くて。
忙しい時期は私もよく仕事の手伝いをしてたわ。
手伝いって言っても、農業の一番大変な部分じゃなくて、
出荷の箱詰めをしたり、送り状を書いたりとかね。
箱詰めって言えば、沢山の出荷用の段ボール箱があってね、
でもそれがちょっとダっさい段ボール箱で。
何がダッさいかっていうと、印刷のデザイン。
何年か前に全国配送用の段ボール箱を作ることになって、
どうせならオリジナル印刷入りの箱にってことになって、
お父さんとお母さん、なにをどう勘違いしちゃったのか、
私が幼稚園の時に描いた、農園で働くみんなの絵をそのままどか~んて印刷して、
その横に 藤崎農園 ってち~っちゃく入れて( ̄  ̄;)
なんかあの箱で出荷するのがすっごく恥ずかしくって。
っていうか、今でも恥ずかしい。
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大阪のOLっていってもそんな華やかなもんじゃなくてね、
毎日クライアントさんに怒られてばっかりで、
毎日上司にぶつぶつ言われて、
毎日残業ばっかりで、
休日だって疲れちゃって家でぐうたらするだけで・・・
私、なんで大阪でOLやってるんだろうって
私、このままどうなっちゃうんだろうって、
最近、少し思い始めてたの・・・
そんないつものように残業でクタクタなある夜の帰り道、
駅のロータリーにある屋台のおでん屋さんに入ったの。
よく見る屋台で、いつか入ろうと思ってた屋台だった。
『こんばんわ~、いいかしら?』
『いらっしゃい!!どうぞ、かけて下さい。何にします?』
『じゃあね、大根と、卵と、ガンモを下さい』
『へい、大根と卵とガンモね、お待ち!!』
『わあ、おいしそう、頂きま~す』
そして、大根を一口食べた時だった・・・
『え、ええ!? な、なに、!? なにこれ!?
お、、おいしい!!、、、めっちゃ、、、』Σ(゜Д゜≡)
『ありがとうございます。美味しいでしょ?うちの大根。
でも、そんなに美味しそうに食べて頂いて嬉しいですよ。
涙までこぼしてくれて・・・』
『え?? な、涙?? 私が? あ・・・ほんとだ・・・
私、なんでこんなに泣いてるんだろ・・・』
一瞬、自分でも何が起こっているのかわからなかったわ。
ただその大根の味はとっても懐かしい味で・・・
あったかくて、なんでか実家の事を思い出してたの。
『この大根、本当に美味しいでしょ?
うちの一番の人気メニューなんですよ。
ある農家さんの作ってる大根でね。
うちはその農家さんの大根しか使わないんです。
そこの大根じゃないと、この味が出ないんですよ。』
『そうなんですか、うん、本当に美味しいです。
なんていう農家さんの大根なんですか?』
『ええとね、なんてとこだっけな。
あ、そこに丁度大根が送られてきた段ボール箱があるんだけど・・・
ええとね、藤崎、農園、そうそう、藤崎農園さんだ!
この箱もなんかいい感じの箱でね、私は好きなんですよ。
みんなが笑ってる絵が描いてあって。
大根がこの箱で届くのが実はちょっと楽しみでね』。
『ふ、ふじさき・・農園!? 大将、ちょっとその箱見てもいい?』
『ええ、いいですよ・・・、はい、どうぞ』
それはまぎれもない・・・
うちの実家の、私のヘタな絵が印刷されたあのダッサイ箱だった・・・
そっか、そっか、そっか・・・
こんなに、こんなに美味しいんだ。うちの大根。
みんなに愛されてるんだ、うちの大根・・・。
『ねえ、大将、この箱、貰ってもいい?』
『え?箱を?
ええ、いいですよ、どうせ空き箱ですし。お持ちになって下さい。
にしても、そんなに気に入りましたか?大根?』
『うん、とっても。大好きな大根の味、なんです。
大将、段ボール箱ありがとう。また、大根食べに来ますね』。
そう言って私はその箱を抱えて帰った。
いつしか、疲れがどこかにス~っと抜けたような感じでした。
子供の頃は毎日のように食べてた大根なのに、
この時ほどうちの大根が美味しいと思ったことは無かった。
そしてあんなにも恥ずかしいかった箱なのに、
この時ほどあの段ボール箱が愛しく思えたことは無かった。
久しぶりに、実家に帰ろうかな。
お父さん、お母さん、農園のみんなに会いたい。
の前に、明日からまたお仕事がんばろっと♪( ´∀`ノ)ノ
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
今回のお話のポイントは、
大根でしょうか?
段ボール箱でしょうか?
弊社は段ボール箱屋さんなので、
後者だと言い切らなきゃいけないかもしれません。
でも正直、どちらでもいいんです。
大根の味を通して大切な人達を思い出す。
段ボール箱のデザインが偶然にも人と人をつなぐ。
どっちも素敵なことですから。
私達にできるのは、
大切な大根を運ぶ箱を大切に作ること、
大切なデザインを大切に印刷すること、
これができるのはとっても幸せなことだと思います。
だって弊社で作った箱が、
今日もどこかでこんな素敵な物語を演出してるんですから。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
11月某日 メルマガ編集長 やまぎし
追伸
今回の彼女の子供の頃の絵とシンクロするタイミングで、
お客様より頂いた事例を公開する許可をいただきました。
こういうのを奇跡的と言うのかもしれませんが、
私達は奇跡の一本橋を歩いているのかもしれませんね。
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