クリスマスはリアル(現実)を映して■アースダンボール メルマガVOL100■2020年12月号
ああ、雪か・・・ホワイトクリスマスになるな。
僕は雪が降り始めたばかりの夜空を見上げた。
僕の名前は理斗(リト)、18才。
今夜は友人達と6年続いているクリスマスパーティー。
メンバーは男女12人。中学校の剣道部の同期達だ。
僕は会場のレストランに一番に着いた。
少し待つと、メンバーの一人がとぼとぼとやってきた。
僕の一番の親友、蓮(レン)だ。
毎年僕が一番に、すぐ後に蓮が着くのが不動の順番だ。
『よ、蓮、久しぶり!』
僕が声をかけたが、蓮はただ空を見上げてこう言った。
『もう今年で6回目か・・・ふうう・・』
蓮はそのまま会場のドアを開けて入っていった。
あいつ、少し元気ないのかな・・・?
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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会場のレストランは綺麗なクリスマスの飾り付けで、
各席には参加メンバー各自の名前札も添えてある。
僕の席は、、、と。あ、ここだ。
僕は椅子に腰かけ、蓮と二人で他のメンバーを待った。
すると、蓮が静かに話しかけてきた。
『なあ理斗、こうやって二人で待つの、毎年のパターンだよな。
こうやって待ってる間にさ、いろんな話したよな。
お前が"好きな子がいる"って話してくれたのもこの時間だったな』
『そうだな、蓮。もう6年も続いてるんだな、この会。』
蓮はまた黙ったまま静かにスマホを見始めた。
すると他のメンバー達もぼちぼちやって来た。
『よう、蓮、理斗、久しぶりだな!!』
『蓮くん、理斗くん、今日はホワイトクリスマスになったね~』
『蓮、理斗、お待たせ!今年もお前らが一番乗りか~?』
『みんな、待ってたぜ。今年も俺と理斗が一番乗りだ!!
ところで、みんなちゃんと今年も持ってきてるな。
プレゼント交換用ダンボール箱東中(ひがしちゅう)剣道部バージョン!!』
『おお、今年もバッチリ用意したぜ!!』
このダンボール箱は第一回目の時、僕が考案したダンボール箱だ。
クリスマスプレゼント用の箱を全員で統一しよう、そして、
その箱を毎年使いまわそう、できるだけ長くこの会が続くように、
そんな願いを込めて用意した箱だ。
『この箱が部屋にあるとさ、なんか元気貰えるんだよね~』
『そうそう、また一年がんばろ~!みたいなさ』
『これに関しては理斗のナイスアイデアだったよな!』
因みに今年、僕はこの箱の用意ができなかったから、
代わりに妹が用意して持って来てくれる事になっていた。
『お兄ちゃん!持ってきたよ、プレゼント箱。中身もね。
あ、皆さん今晩は。あの、兄の分、持ってきました』
『ああ、理菜(リナ)ちゃん、いらっしゃい』
『蓮さん、皆さん、今晩は。これ・・・』
『ありがとう、寒かったろう。理斗の席はあっちだよ』
理菜は静かに僕の席の前に立ち、その箱をそっと席に置いた。
『はい、これお兄ちゃんの。ここに置くね』
『ありがとう、ごめんな、面倒な事やってもらっちゃって』
『お兄ちゃん、じゃあ私は帰るね。パーティー楽しんでね!』
そう言うと理菜はもう一度メンバーに深々とお辞儀した。
『ではみなさん、兄を宜しくお願い致します』
『ええ!?理菜ちゃんも参加して行けばいいのに~』
『いいえ、そんなことしたら私嬉しすぎて泣いちゃいますから』
ったく、色々と大袈裟だなあ、理菜は・・・(o´д`o)=3
『じゃあな、理菜、気を付けて帰れよ!』
そしてメンバーも全員揃った。
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それから僕たちは、食べて、飲んで、歌って、
おしゃべりして、ゲームして、プレゼント交換して・・・
時が経つのも忘れて、騒いで楽しんだ。
『おい理斗~!楽しんでるか~!』o(〃^▽^〃)o
お酒も飲まないのによくこれだけ盛り上がれるもんだ。
ああ、気の合う仲間同士ってなんでこんなに楽しいんだろう。
お金があるだけじゃダメ、時間があるだけじゃダメ、
やっぱり命があって、大切な人が居てくれて・・・
そんな普通の事がどれだけ幸せな事か、どれだけ奇跡な事か、
はしゃぐみんなを少し遠目に見ながら僕はそんな想いを噛みしめた。
すっかり夜も更けて来て会も少し落ち着きモードになった頃、
蓮が僕の席の前に静かにやって来た。少し神妙な面持ちだった。
すると、何故か他のメンバーの視線も蓮に集まって静かになった。
なに!? なんだ?この雰囲気・・・
蓮が静かに話し始めた。
『なあ理斗、この会、中学一年から始めて6回も続いたじゃん。
これって、このダンボール箱があったおかげだよ。
その、つまり、考案してくれたお前のおかげだよ。
それでな、俺達もうすぐ高校卒業じゃん。そうすっとさ、
大学とか就職とかで県外や遠方に行くやつもいてさ、
なかなか今ほどに決まって全員揃うって難しいじゃん。
で、みんなで話したんだ。この会は今年を最後にしようって。
お前も、その、参加できるか俺達にはわからないしさ。
でもさ、不定期にはなるけど集まるからさ。そん時はお前もさ。
ああ、大丈夫、この箱があれば。この箱はみんなが持ってる。
これがあればこのメンバーの心は、ちゃんと繋がってるからさ。
お前にも、わかって欲しいんだ。理斗』
蓮が話し終えると、何人かがグスっと涙ぐんだ。
みんなの視線が僕の席に注がれた。
まるで、みんなが僕の言葉を待っているかのようだった。
『みんな、ごめん、いや、ありがとう、かな。
俺の事こんなに心配してくれて、気遣ってくれて。
俺、この会が楽しみ過ぎて、そして今も楽しくてさ、
全部、現実を全部忘れてた。俺達高校三年なんだよな。
そんな事さえ忘れてたよ。
でも思い出した。とっても大事な事を、大事な現実を。
俺、もうこの世にいないんだったっけな・・・』
僕の声が聞えたのだろうか?いや聞えるはずがない。
でも遂に一人が声を出して泣き出してしまった。
するとまたたく間に全員涙が溢れ出てしまった。
(ノД`) (ノд-。) (”/△\;) (´A`。)
みんな泣いた。
僕も泣いた。
互いが互いを思いやりながら泣いた。
互いが互いを認め合いながら泣いた。
誰一人我慢せず、めいっぱい泣いた。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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何分経っただろうか。
泣きやんだみんなが笑顔に戻った。とてもいい笑顔に。
きっと、思い切り泣いたからかな。
そして一人、また一人とメンバーが会場を後にした。
最後の一人、扉を開けて出ようとした蓮は不意に立ち止まった。
蓮は振り向き、静かに戻ってきて僕の隣りにそっと腰を掛けた。
そして、何時ものように僕に話しかけてきた。
『こんなに泣いたのいつ以来かな~。いや泣いたわ、本当に。
去年のお前の葬式の時だってこんなに泣かなかったしなあ。
でもみんな、最後はいい顔だったよな。
あれって、みんなで思いっきり泣きあえたからだよな。
なあ理斗、この涙があるから、みんな前に進めるんだよな。
この涙があればきっと大丈夫なんだって、俺は思うんだよ。
俺も、お前もさ。
だから理斗、俺達も前に進もうぜ。
でさ、お前のこの箱、俺が預かっとくけどいいよな。
俺もいつかそっち行く時、この箱持って行くからさ。
またそっちでプレゼント交換、しようぜ。
お前のセンスダッサダサのプレゼント、楽しみにしてるよ。
じゃあな、理斗、俺、そろそろ行くわ』( ̄ー ̄)
『・・・蓮、・・・
ああ、その箱はお前に預けるから。
ゆっくり、こっちにはできるだけゆっくり来いよ。
じゃあな、蓮、俺も、そろそろ逝くわ』( ̄ー ̄)
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
あなたには、
泣きたいのに泣けなかった、
泣いていいのに泣けなかった、
泣くべき時なのに泣けなかった、
そんな経験はありますか?
私にはあります。だからハッキリという事ができます。
ちゃんと泣くっていうことがどれだけ大切な事か。
そうそう、そう言えば、
ダンボールの最大の敵の一つは水。でも一つだけ、
ダンボールが受け止める事ができる水があるの、知ってますか?
それが・・・涙。
だから、ダンボールの前では思いっきり泣いても大丈夫ですよ。
きっと受け止めてくれるはずです。
今号も最後までお読み頂きありがとうございました。
そして皆様のおかげで、
こうして記念すべき100号の配信を無事迎える事ができました。
本当にありがとうございます。改めて感謝申し上げます。
ところで、200号目指した方がいいですか?
m(__;)m
12月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド