美人すぎるダンボール■アースダンボール メルマガVOL98■2020年11月号
僕にはめっちゃ美人の友人が居る。名前は麻衣(まい)。
知り合ったほとんどの男性は彼女を好きになってしまう。
道ですれ違う人の2度見3度見はいつもの風景。
今の大学での学園祭ミスコンではここまで3年連続優勝。
今年のミスコンでも前人未到の4年連続優勝の期待は大。
もしかしたら先祖を辿っていくと美の女神、
ヴィーナスかアフロディーテに辿り着くかもしれない。
麻衣に憧れの視線を送る男性は数多(あまた)居るが、
そんな男性のほとんどは彼女の魅力に臆してしまい、
実際に本気の告白まで踏み込んでくる奴は意外と少ない。
ただ、そのラインの向こう側にいる視線の持ち主達は、
麻衣の本当の魅力を知ることはできないかもしれない。
だからこそ、この話をする前に一言だけ前置きしたい。
彼女は、麻衣はすごくいい奴なんだ。本当に心底そう思う。
友達や知人にも気遣いを忘れない。それでいてフレンドリー。
だから麻衣の友達は皆、麻衣を人として好きになるんだ。
そんな麻衣に、僕は今年のコンテストの事で相談を受けた。
それはあまりにも衝撃的過ぎるものだった・・・
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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ところで、学祭にはミスコンと並ぶ人気コンテストがある。
それが僕の所属するダンボールクラフト同好会主催、
ダンボールロボットコンテスト、通称ロボコンだ。
全身ダンボールロボット着ぐるみで参加するコンテストで、
ロボットの完成度だけでなく、立ち居振る舞いやサービス精神、
いかにご来場のお客様に楽しんで頂けたかを競うコンテスト。
参加は毎年9体まで、ボディに01~09の番号を大きく書く。
学祭開催中は学内外を自由に行動し、ご来場客から得票を集める。
学祭最終日にステージで得票数を発表し、優勝者が決まる。
今年同好会会長になった僕はこのコンテストで大忙しだった。
麻衣からの相談は、そんなロボコン大忙しの中での事だった。
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麻衣はミスコンの準備に一切手を抜かなかった。
衣装、メイク、トーク、パフォーマンス・・・。
ぶっちゃけ、麻衣は登場するだけで辺りをパッと明るい空間に変えてしまう。
けど、麻衣は誰よりもストイックで頑張り屋なんだ。
僕も麻衣に負けてられない。ロボコンの準備を頑張らにゃ。
それに今年のロボコンは何かが起こりそうな気がするんだ。
学祭初日がやってきた。
麻衣が出るミスコンは三日後、最終日の午後のメインステージ。
そしてロボコンは今年も全9体が学祭に放たれた!!
その様はまるでテーマパークの着ぐるみキャラクターだ。
来場客からは
『03(ゼロスリー)ヘンテコ~!』とか
『05(ゼロファイブ)面白い~!』とか、
そんな声援が飛んで盛り上がっていた。
こうしてロボット達は最終日まで自由に行動して得票を集める。
あるロボットはダンスパフォーマンスしたり、
あるロボットは路上ライブのように歌ったり、
それぞれのやり方でお客様をもてなし、楽しませていた。
そんな中、今年は珍しいタイプが居た。01(ゼロワン)だ。
毎年、派手で目を引くパフォーマンスが多いロボコンだが、
01は・・・
お茶目な動きでオーディエンスを笑わせたり、、
来場客の写真撮影のカメラマンを沢山引き受けたり、
会場のゴミを拾ったり、ずれたイスやテーブルを整えたり、
『孫が通う大学を一度見たくて上京した』という老人の手を取り、
会場を丁寧に案内してあげたり、
転んでひざを擦りむいた女の子を医務室まで運んであげたり、
他の催しものを観客の一人として盛り上げたり、
会場全体の人や物に気を配り、催しのスムーズな進行を助け、
お客様の心地よい空間づくりに尽力した。
AIやプログラミングじゃこんな真似は絶対にできない。
01は目立たなくとも学祭の風景に自然に溶け込んだ。
それを最終日までの二日半、ほとんど休むまずぶっ通しで。
単純な言い方だが、01は本当に頑張っていると思った。
それは決して計算じゃない、点数稼ぎでもない、
自然に備わった和の心、おもてなし、ホスピタリティ。
加えて01の強い意思、強い決意、真摯で誠実な心・・・
僕の目にはそんな人間味を投影したムーブメントに見えた。
観客の目にはどんな風に映ってるんだろう?
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いよいよ学祭最終日の午後、
中庭メインステージでは麻衣が出るミスコンが催された。
打倒麻衣に燃える参加者達の存在も大きく後押しして、
史上稀にみる高レベルの争いだった。
でも麻衣の存在感やパフォーマンスは圧倒的だった。
人を引き付ける魅力、醸し出すオーラ、放たれる生命感、
ステージ上の彼女は一瞬たりとも目を離すことを許さない。
観客もおおいに盛り上がり、マスコミや芸能事務所も注目の中、
麻衣は見事に史上初の在学中毎年の4連覇を達成した!!
そこまでは大方の予想通り。だが今年はここからが違っていた。
毎年、ミスコン後はステージ観客の大半が減ってしまうが、
今年は殆んどの客がそのまま残った。いやむしろ増えた・・・?
ミスコンの次の催しは、ロボコンの結果発表と授賞発式だ。
身震いするほど観客は何かへの期待エネルギーに満ちていた。
『さあ、今年のロボット達に登場して頂きましょう!!』
ステージ上に9体のダンボールロボットが勢ぞろいした。
すると何故か観客は静まり返った・・・まるで、
皆が大事なものを何かに賭けたかのような緊張感に包まれた。
『それでは、今年のロボコン優勝者は!!??
過去最高得票を集めたこのロボット・・・』(。-`ω´-)
・・・・・・・・・・・・・
『ナンバー、ゼロ・・・ワンだあああ~~!!!』ヾ(叫゜Д゜)ノ!!!
(≧∇≦*)o"ェィ(≧∇≦*)o"ェィ(≧0≦*)ノ"うおおおおおお!!
観客はこれまで溜めた緊張感を一気に最高潮へと爆発させた!!
その拍手と声援はいつまでも鳴りやまなかった。
観客にこんなに温かく見守られる優勝者は初めてだった。
ミスコンでは絶対に生み出されない一体感に会場は包まれた。
みんな、01の優勝を見に来たんだな。
01は観客の前で表彰状とトロフィーを高々と掲げた。
そして授賞式が終わり01がステージを降りようとした。
次の瞬間!!!!
段差につまづき、01は勢いよく地面に転倒した!!
『きゃああ!!!ちょっと、大丈夫!?』(゜Д゜)
観客から悲鳴が聞こえるほど派手な転倒だった。
『おい、大丈夫か!!』( ̄口 ̄∥)
ステージ袖に居た僕も急いで01の元へ向かった!!
するとそこには・・・
頭の被り物パーツが外れて顔があらわになった01が横たわっていた。
集まってきた観客はみんな静まり返っていた。いや、息を飲んだ。
その顔は紛れもなく・・・
ついさっき、このステージでミスコン4連覇を達成した顔・・・
『ん!! んま!!麻衣!! あんたなの??』Σ(゜口゜;)//
観客の中の友人の一人が麻衣に近寄った。
『へへへ、ばれちゃったか~・・・』 ((^┰^))ゞ
ケガは無いようだが、麻衣はバツの悪そうな表情をしていた。
『よ、良かった。麻衣、ケガはないみたいだな』ε-(´∀`;)
僕も一安心した。
しかし観客の多くはまだ現実が理解できずにいるようだった。
その時、老人と女の子が観客をかき分けて麻衣の元にやってきた。
『やあ、ゼロワンさん、お嬢さん、怪我は無いみたいで良かった。
昨日は学内の案内をありがとう。本当にいい思い出になったよ。
今日はね、ゼロワンさんの優勝を見に来たんだよ。おめでとう』
と老人は笑顔で麻衣に声をかけた。
『ゼロワンさん、昨日は膝擦りむいた時助けてくれてありがとう。
お姉ちゃんは怪我無い?今度は私が医務室連れてってあげるよ。
私もゼロワンさんの優勝を見に来たの。私、ゼロワン好き!』
女の子は麻衣に嬉しそうに話した。
『うん、ありがとう、大丈夫、どこも痛くないよ。』
そう言って麻衣はすっと立ち上がった。すると・・・
『ゼロワン!俺もお前の優勝を見に来たんだよ!』
『ゼロワンかっこよかった!私ゼロワンに投票したよ!』
『ゼロワンが優勝して嬉しい!』
『私も!』『俺も!』『ゼロワン!!ゼロワン!!』
( ̄∇ ̄*)o"エイ( ̄∇ ̄*)o"エイ( ̄0 ̄*)ノ"!!
観客がもう一度ゼロワンに、麻衣に祝福の声援を拍手を送った。
麻衣は恥ずかしそうに、ペコリ、ペコリと何度もお辞儀をした。
体はダンボールロボット、顔は麻衣、小脇に抱えたロボットの頭。
今まで何度も麻衣を綺麗と思ったことあるけど、
そして今はちょっと滑稽なカッコはしてるけど、
今日の麻衣が、今までで一番綺麗に思えた。
『なあ麻衣、
見た目じゃない私がどこまで認められるかチャレンジしたい、
っていう麻衣の想い、想像以上に果たせたと思うぞ、俺は。
麻衣に"ダンボールロボ作りを教えて"って言われた時は驚いたけど、
麻衣なら優勝できると思ってたよ。
それをここに居るみんなが証明してくれたよな』(´∀`)
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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【編集後記・へんしゅうこうき】
何やっても上手くいくのは美人だからでしょ、とか、
評価のされ方が自分の意に反してるとか、
本当に理解して貰いたい部分を理解して貰えないとか。
あなたの周りにもそんな方がいらっしゃいませんか?
私には、美人過ぎ、能力あり過ぎ、等の悩みは体感できませんが、
それを理解したいとは思うんです。
限られた人しか持てない何かを持っている為の悩みや、
そんな人達の頑張りを。
そうそう、ところでダンボールってとてもシンプルなものだから、
扱い方や利用の仕方で人の心や内面を投影しやすいっていう話を、
聞いたことが有ったり無かったり・・・
今号も最後までお読み頂きありがとうございました。
m(__;)m
11月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド
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