子犬のダンボ■アースダンボール メルマガVOL97■2020年10月号-2
その日、私は5才になる娘の由香(ゆか)と一緒に、
近所の川沿いの土手にダンボール箱ソリをしに来ていた。
ひとしきり滑って遊んでそろそろ帰ろうとなった時、
急に由香が口に人差し指を1本立ててこう言った。
『ねえママ、、、なんか、聞こえない・・・?』( ̄b ̄)
『んん?なんかってなあに?由香ちゃん・・・』(´・ω・)
『鳴き声・・いぬ・・?ワンちゃんだ!!』(`ω´)
私もじっと耳を澄ましてみた・・・すると。
少し離れた草むらから子犬がひょこひょこと出てきた。
子犬は青い首輪をつけていたが連絡先は無かった。
とても人懐っこく、私と由香に遠慮なしに甘えてきた。
そして何故か私達のダンボール箱に興味津々のようだった。
『あなたも一緒に滑ってみる??』
由香が子犬と一緒に滑ると、子犬はマンガみたいに喜んだ。
もうこうなると由香の言うことは決まっている。
『ママ、この子、うちの子にしてもいい??』(。´・_・`。)
ほら来た・・・!!
あたりを見回しても、飼い主と思える人もいない。
『じゃあこの子の飼い主さんが見つかるまででいい?』ε-(‐ω‐;)
『うん!やった、やったー! この子うちの子だ~!』ヾ(*´∀`*)ノ
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
**************************************************
首輪には名前らしき文字があるが、擦れていてよく見えない。
『D、なんとか、N、B、なんとか、、、』
ローマ字が5文字。多分、母音であろう二文字が見えない。
『どんべ?? それとも でんぶ?? ううん・・・』(・_・?)
子犬にはダンボールが好き過ぎるというおかしな趣味があった。
世の中にあるダンボールは全て自分のものと思うらしく、
見る箱見る箱、全ての箱に品定めをする。
入ってみたり、ガジガジしたり、スリスリしたり。
そして気に入った箱を捨てようとすると、"ワンワン!!"と怒る!!
既にお気に入りの数箱がありスペースを占めている為、
私は子犬が気が付かないうちに1箱づつゴミの日に出していた。
______________
私は飼い主探しの為に子犬の写真や動画をSNSにも投稿していた。
後で本当の飼い主かどうか確認する為、首輪の文字は伏せていた。
そして一ヶ月が経った頃、飼い主が現れないと踏んだ由香は、
子犬に名前を付けてしまった。
『この子の名前、ダンボール大好きだから"ダンボ"ね!!』(*´∀`*)
ダンボ・・・
そう言えば、D、なんとか、N、B、なんとか、の5文字。
DANBO・・・あてはまるじゃん!!
こうしてダンボは着実に(成行きで)我家の家族になっていった。
由香はすっかりお姉さんになり一生懸命ダンボの世話をした。
ダンボもいつも由香にくっついていた。
私も主人もダンボが来てくれて毎日が楽しくなった。
(ただ、この物語の展開がいつも通りのベタだとすれば、
運命の神様は、やはりそのままにはしておかない・・・)。
_____________
ダンボが我が家に来て二ヶ月ほど経った頃、飼い主が現れた。
いなくなった時の状況や首輪に書かれた文字などから、
本当の飼い主で間違いない。そして二日後に我が家に来る。
由香に、なんて説明しよう・・・
由香が落ち込む姿が想像でき過ぎて私は胸が苦しかった。
でも言うしかない。言うなら早い方がいい。
由香の心の準備の時間だって必要だ・・・
私は意を決して由香に告げた。
由香は・・・言った瞬間から大粒の涙をポロポロこぼして、
うなだれたまま黙りこくってしまった。
それから二日間、由香は片時もダンボから離れずにいた。
別れが近づく悲しみに年齢は関係ない。
由香の小さな胸はどれだけ苦しいか・・・
それを考えると私も苦しくて仕方がなかった。
主人はそんな由香と私に優しく寄り添ってくれていた。
でも、私がしっかりしなきゃ。
そしてその日はやってきた。
来られたのは私達より少し年上くらいのご夫婦だった。
ご夫婦にはなかなかお子さんができなかったが、
犬を飼おうと決め、譲渡会でダンボを譲り受けたとのことだった。
ご夫婦は我が家の玄関先から、開いた玄関に向かって
『ダンボ~!!』と呼んだ。
『そ、そう言えばダンボって名前なんですってね』
『ええ、何故かダンボールが大好きな子でして、それで』
『実はウチでもダンボって呼んでたんですよ・・・』
ダンボはご夫婦を覚えていて、ワンワンと鳴いてご夫婦に駆けてきた。
『ダンボ!! 良かった、本当に心配したんだぞ』(´;ω;`)
ご夫婦に会ったダンボは嬉しそうに尻尾をブンブン振って喜んだ。
そんなご夫婦とダンボを、私と主人はなんとか笑顔を作って見つめた。
由香はダンボのお気に入りダンボールの前に座って出てこなかった。
ご夫婦に挨拶をしに出てくることはおろか、
ダンボにさよならも言えそうにない状態だった。
『本当にありがとうございました。ではこれで・・・』(。-人-。)
旦那さんはダンボを抱いて近所に止めた車へ歩き出した。
その時・・・!!
部屋の奥から由香の絞り出すような叫び声が聞こえた・・・・
『だあ、だああんんぶおお~~!ばい、ばいいい~』。゜゜(ノ´д`ヾ。)゜゜。
それは、声なんて出せないくらい落ち込んでた由香の、
由香なりのダンボへの精一杯の礼儀と感謝だった。
ダンボは"ピク"と耳を動かすとグイグイ暴れて抱っこを振り払い、
地面に着地するとそのまま由香の元へ一目散に駆けて行った!
私も主人もご夫婦も呆然となってしまった・・・
でも少しして旦那さんが奥さんの肩に手を置くと、奥さんは頷いた。
そして『ちょっと失礼致しますね』と旦那さんが玄関に入った。
ダンボはお気に入りのダンボールに入ってお腹を見せ、
由香はその箱ごと抱きしめてヒックヒックと泣いていた。
『うう、ヒッ、ダ、、ンボ、うう、ヒッ、ううう』(ノ´д`ヾ。)
旦那さんは由香の前にそっと座り、こう言った。
『お嬢ちゃん、、、ダンボは、、、
最高のお姉さんと最高のダンボールを見つけたんだね。
ダンボを、お嬢ちゃんにお願いしてもいいかい??』(^ー^)
『いいの?だっておじちゃんのダンボでしょ?』(ノд・。)
『あはは、ダンボはお嬢ちゃんが一番好きみたいだ』(^ー^)
『おじちゃん、わたしダンボをうんと大事にする』(/へ\*)
『うん、宜しく頼みますね。ダンボ、いい子にな』(^ー^)
ご夫婦は私と主人に『ダンボを宜しくお願い致します』m(__)mm(__)m
と深々と頭を下げ、帰っていった。
旦那さんは泣いている奥さんの肩をやさしく抱きしめてあげていた。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
**************************************************
(ね、やっぱり展開がベタだったでしょう? で、もう一押し!!)
_____________
それから2年後・・・
あの時のご夫婦が再び我が家へ来てくれた。
なんと、お二人の赤ちゃんと一緒に。
『お久しぶりです。お元気でしたか。あら、もしかして』(⌒∇⌒)
『ええ、私達も遂に授かったんです』(´∀`)
『わあ!それは本当におめでとうございます!!』(⌒∇⌒)
『ありがとうございます。
実のところ、ダンボとの別れがとても淋しかったんですが、
あの後すぐに妻の妊娠がわかりまして。
ダンボの事もあって神様が授けてくれたのかもしれません。
おかげで淋しいなんて言ってられないくらい忙しい日々で。
この子もハイハイできるまでになりましたので、
改めて皆様にお礼をと思いまして。ダンボにも』(´∀`)
『そうでしたか、さあどうぞ。ダンボも元気にしてますよ』(⌒∇⌒)
『おじちゃん、久しぶり!! ダンボ大人になったんだよ』(o^∇^o)ノ
由香もご夫婦を嬉しそうに出迎えた。
ダンボは元々小型犬だったらしく、少しだけ大きくなった。
やんちゃとダンボール好きはずっと変わらずだった。
『あの、これ、ダンボにあげてもいいですか?』(´∀`)
旦那さんは新しいダンボール箱をダンボへのお土産に持ってきていた。
ダンボは早速そのダンボールの品定めを始めた。
すぐに気に入って、その箱の中でお腹を見せてリラックスした。
すると・・・
それを見ていた赤ちゃんが箱へとハイハイしていき、
ダンボが居る箱の中へ自分もストンと入った。
ダンボは怒る様子もなく、自分が少し端に寄ってあげた。
そう、ダンボは赤ちゃんを歓迎してあげたんです。
『二人で入ってる。かわい~。兄弟みたい~。』(*´∇`*)♪
そう言いながら由香も箱の横に寝そべりました。
そしていつのまにかそのまま・・・
ダンボと赤ちゃん、由香の三人は並んでお昼寝してしまいました。
それはまるで三人兄弟のようでした。
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п
**************************************************
【編集後記・へんしゅうこうき】
このメルマガで読者様的に一つ安心できる点があるとすれば、
絶対にバッドエンドが無い、という点でしょうか。
そして展開もベタです。予想すらつくレベルかもしれません。
それは読者様や弊社従業員は勿論、登場人物や弊社商品に至るまで、
このメルマガに関わる人やモノみんなに幸せになって欲しいから。
ですので、読者の皆様が『このスタイルもうやめれば』
とおっしゃるまで、この感じで続けたいと思っております。
今号も最後までお読み頂きありがとうございました。
m(__;)m
10月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド