~イマジン~ 心に箱一つ■アースダンボール メルマガVOL95■2020年9月号-2

95 私と娘は最初から親子だった訳ではありません。 娘の花楓(かえで)は、私の兄夫婦の子でしたが、 花楓が6才の時に突然の事故で兄夫婦が他界し、 親族の話し合い?によって私が育てることになりました。 でも花楓と本当の親子になれるまで10年かかりました。 そうなれたキッカケは、ダンボール箱のお話しでした。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************** 私は友里(ゆり)と申します。 私は高校卒業後すぐに就職し、自立して生活しておりました。 そして私が22歳の時、突然の兄夫婦の悲報がありました。 葬儀を終えた後、花楓の事を親族で話し合いました。 でも・・・ 式が終わるまでの間、さすがに皆が花楓を気遣いましたが、 誰が引き取るという話になると、雰囲気は一変しました。 仕方がないことだとは思います。 誰だって突然子供が一人増えるのは楽な事じゃない。 でも、皆の態度があまりにも理不尽で・・・ 私は腹が立って『私が育てます!』と言い放ってしまったんです。 誰も反対も何も無し。あっさりしすぎるほど即決しました。 『まったく、うちの親戚ときたら・・・』 私は心の中で一回だけ呟き、気持ちを未来に切り替えました。 こうして、私は花楓の母親代わりになりました。 花楓は叔母の私を『友里ちゃん』と呼んでおりました。 (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п ************************************************** 花楓はとても物静かにおとなしく暮らしていました。 親を亡くしたショックや新しい環境で大変なのかと思っていましたが、 子供特有の抑揚が無いというか、感情が見えないというか。 ほとんど笑わない、泣かない、怒らない・・・ 会話もどこか無機質で事務的、いつでも平然。 でも、有難うもごめんなさいもちゃんと言える。 ただ目はしっかりしていて、強い意志も感じます。 友達も居るし、学校も嫌いじゃない。 あえて無表情を装っているような、そんな気がしていました。 それでも花楓との時間はかけがえのないものでした。 母親でもありながら時には年の離れた妹を見守るように、 私は花楓の成長を楽しみに日々の生活を頑張りました。 花楓も大きな病気やケガもなく、すくすくと成長していきました。 ただ、問題を起こす事もない代わりに反抗期的な予兆も無い。 返ってそれだけが心配でした。 _________ そして10年が経ち、私が32歳、花楓が16歳の年のある日、 私が "箱が破裂しそうな程母の愛が詰まった故郷便キャンペーン" という懸賞で当てた商品が我が家に届きました。 その名の通り、箱いっぱいにどっさり食品が詰まっておりました。 箱を開けて溢れそうな食品の数々を目の当たりにした時、 花楓が少しだけ目を丸く見開き、ボソッとつぶやきました。 『うわ、すご・・・』(*゜∧゜) そう言いながら少しだけ笑顔を見せてくれました。 花楓の笑顔は懸賞当選より何百倍も嬉しいものでした。 その時、私は小さい頃に父から聞いたある箱の話を思い出し、 花楓にその話をしました・・・・・ ~~~(´-`).。oO~~~ 『ねえ、お父さんはどうしていつもニコニコしてるの?  怒っちゃうこととか無いの?』(o゜ー゜o)?? 『んん? 勿論あるよ。お父さん、怒っちゃいたい時はな、  心の中にダンボール箱を用意してな、その中に怒る気持ちを  そっと仕舞うんだ。そしてそっとテープで蓋を閉じるんだ。  そうすると不思議と心が落ち着けたりするんだ。  友里も今度やってごらん』(´-`) 『ふ~ん、そーなんだ~』(・。・) キョトン ~~~(´-`).。oO~~~ 『うふふ、結局私はこの方法の良さを体感できなかったけどね』。 花楓はじっと聞いていました。 しかし突然・・・涙をポロポロとこぼし始めたのです!! 笑顔の次は突然の涙。私はさすがにあわてましたが、 何も言わず花楓をそっと抱きしめました。 そして花楓がようやく少し落ち着き始めた頃、 花楓はシクシクしながらポツリ、ポツリと話し始めました。 『あのね、お父さんが同じ話してた・・・』 『え!? お父さんて、兄さんが・・・?』 『うん、お父さん。死んじゃう少し前に、してた』 『そう、だったの・・・』 心の箱の話は遺言のように花楓の中に残っていたようでした。 『あのね、私、お父さんとお母さんが死んじゃった時、  悲しくて、辛くて、怖くて、親戚の人達にも迷惑がられて、  不安でもうどうしようもなくて。  その時ふと、お父さんの話を思い出して、怒りじゃないけど  悲しさとか寂しさとかを、ダンボール箱に仕舞ってみたの。  そしたら、少しだけ落ち着けた気がしたの』。 まだ小さかった花楓、まだ6歳だった花楓。 それはどれだけ辛かった事だろう。どれだけ苦しかった事だろう。 兄さんの遺した言葉で必死に自分を守ろうとしてたんだ。 『でもそれから私、どんな感情も仕舞っちゃって・・・  嬉しい時も、楽しい時でも、なんでもかんでも』。 その時突然、今までの花楓の姿が走馬灯のように巡りました。 花楓はその時の経験で、怒りだけでなく悲しみや寂しさも、 更には喜びや嬉しささえも箱に仕舞い込んでいたんです。 身を守りたい一心で、無意識にあらゆる感情を。 無表情はそんな花楓の孤独そのものだったのです。 『この箱溢れそうで、なんか私の中の箱みたいで。  最近、なんだか箱にうまく仕舞えなくて。  私、変なの。おかしいの。ダメなの・・・』(;Д;) 小さい頃はそれでも何とかなっていたのだと思います。 でも思春期に溢れ出る若い感情の全てを箱に仕舞える訳がない。 私はそんな破裂しそうな花楓に気づいてあげられませんでした。 母親失格です。産みの親じゃないからかな・・・ いや、そんなことはどうでもいい(ー`дー´) 今、花楓に寄り添ってあげられるのは私しかいないんだ!! 私はこれまでの自分の人生経験の全てと、 花楓へのありったけの想いを込めて花楓に伝えました。 『花楓、大丈夫、大丈夫だよ。  花楓が苦しんでるのに気づいてあげられなくてごめんね。  花楓は全然変じゃないし、おかしくもない。すごく普通よ。  花楓が感じる、溢れそうなどうしようもない感情、  私にも経験がある。皆そう、皆がそうなの。皆同じなの。  私なんか、今でもそんな感じなのよ』。 『ほんと、そうなの? 友里ちゃんもそうなの?』 『うん、そうよ。    そしてね、心の箱は無限じゃない、全部を入れられないの。  時には入れないで解決しなきゃいけないこともあって、  入れない方がいいものも沢山あって、  一度入れたものを出してみてそれと向き合ってみたり、  箱の中を時々軽くしたり、また入れたり・・・  そんな風にして使っていくものだと私は思うわ』。 『そうなの?でもお父さん、そんな話してなかった』 『きっと花楓がまだ小さかったからね。  もし兄さんが生きていたら、今、きっとそんな風に言うと思う』。 『そっか。でもどうすればそうできるの?』 『うん、それはね・・・  花楓は一人じゃないって、もっと知って欲しい。  花楓には私が居る。お友達も居る。皆花楓を愛してる。  もっと皆に、花楓の気持ちを知ってもらって欲しい。  花楓の想いを話して欲しい。私や友達を頼って欲しい。  仕舞っちゃう前の花楓の想いを、私にも聞かせて欲しい。  そうすればもっと、皆も箱も花楓に寄り添ってくれるわ』。 私が話し終えると、花楓は涙をひとぬぐいして優しく微笑んだ。 『あのね、私、友里ちゃんにずっと言いたかったことがあるの』 『うん、なあに?なんでも聞かせて』 『あの時、友里ちゃんが私を引き取るって言ってくれた時、  私、嬉しかった。  あの中で一番、友里ちゃんが好きだったから。  だから、ありがとう、友里ちゃん。お母さん』(=v=) FIN (※今号は編集後記も見てね↓↓) (´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п(´o`)п **************************************************     【編集後記・へんしゅうこうき】 その後、花楓ちゃんは少しづつ自分を周囲に表現すようになり、 心の箱もより便利なものになっていったそうです。 そしてこの親子にとても素敵なことが起こりました! 花楓ちゃんを含めて友里さんの全てを受け入れてくれる男性と、 友里さんは結婚し、花楓ちゃんにも新しいお父さんができたのです。 更に、友里さんにはもうすぐ赤ちゃんも生まれるんです! 花楓ちゃんは友里さんの大きなおなかを触ってこう言いました。 『友里ちゃん、私がこの子に心の箱の話をしてあげてもいい?  私、上手く話せる自信あるんだ。なんたって経験者だからさ』と。 今号も最後までお読み頂きありがとうございました。 m(__;)m 9月某日 ライティング 兼 編集長:メリーゴーランド

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