お前のモノは俺のモノですって!?■アースダンボール メルマガVOL124■2021年12月号
『お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ』
それ、ガキ大将がいじめられっ子にいうセリフでしょ?
でもあいつは昔からそう言って私のモノを何でも持っていく。
でもあいつはガキ大将じゃない。私もいじめられっ子じゃない。
でもそんなあいつも絶対に手を出さないものがある。
それは私の部屋にある1箱のダンボール箱だ・・・
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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私はメグ、高校二年生。あいつは幼馴染の同級生、リョウ。
リョウは小さい頃から『お前のモノは俺のモノ』と言いながら、
私のモノを、いや私のモノだけを持って行っちゃう奴だった。
まだ食べてるアイスとか宿題を終えたノートとか、
部屋にも勝手に入ってきてゲームとか漫画とかおやつとか。
さすがに思春期からは部屋のノックはしてくれるけど、
相変わらずズケズケと来てなんでも持って行っちゃう。
でも返さないとかじゃなくてちゃんと返しに来るし、
返せないモノでも『まあいっか』と思える程度のモノ。
まあそれが私とあいつのルーティーンていうか・・・
それが無いとどこか寂しいっていうか・・・
私はリョウが好きだった。リョウも私が好きだと思ってた。
でもそんなあいつもあのダンボール箱には手を出さない。
何度か手を出したが私が断固拒否。そして今は諦めたよう。
私が何でその箱を大事にしているのかというと、
昔から母に『この箱は大事にしいや』と言われ続けたから。
そして私自身もこの箱が側にあると落着く感じが好きだった。
でもなぜ母は『大事にしいや』とずっと言っていたのだろう?
ある日の夜、私は母に尋ねた。
『ねえ、あの箱って、なに・・・?』
その夜、父と母は一緒に、私と箱の事を話してくれた。
中学校卒業式の日の、夜の事だった。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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高校に入学してすぐ、私はとある児童養護施設園へ行った。
初めて行った日、そこの園長先生は、
『あら!?メグちゃん、久しぶり、大きくなったわね~』
ととても喜んでくれて、その後ちょくちょく行くようになった。
行って園長先生とお話したり子供達と遊んだりするだけだったが、
子供達もなついてくれ、私もとても楽しかった。
この施設園は私が今の両親の元に来る前に居た場所だ。
私はまだ赤ちゃんだったからその時の記憶はないけど、
何となく懐かしい香りがして落ち着ける場所だった。
でも同時に、どうしても湧いてくる想いもあった。それは、
私の実の母親って・・・?
(今の)両親も、実母の事は分らないとの事だった。
園長先生に聞いてもいい事なのだろうか?
私は通い始めて1年近く経ってもそれを聞けずにいた。
園長先生もその事に触れることは無かった。
そして通い始めて約1年後の母の日、
箱の事を母に尋ねたように、私は園長先生に実母の事を尋ねた。
園長先生は少し躊躇し、でも静かに実母の事を話してくれた。
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その日の帰り道、私はずっと泣きながら家までの道を辿った。
家の前に着いたのにまだ涙が止まらず、家に入りにくかった。
そんな時、タイミング悪く一番見られたくない奴に出くわした!
『おいメグ、そんなとこで何して・・・』(・。・)
『リ、リョウ、な、何でもない!』(* v v)
『泣いてんのか?』(・。・)?
『な、泣いてない泣いてない!じゃあね!』(*ノД`*)
私はそう言って逃げるように玄関から部屋へ駆けこんだ。
私はダンボール箱を抱きしめて、声を殺して泣いた。
この箱の事を聞いた日以来、私は時々こうして泣いていた。
それからしばらくして
"コンコン"『メグ、入るぞ』といってリョウが部屋に来た。
『な、何よ!私、今泣くのに忙しいの!』
『さっき泣いてないって言ってたじゃん』
『今泣き始めたの!!』
リョウは表情を変えずに私をじっと見ていた。
『なあ、くれよ、その箱・・・お前のモノは俺の・・・』
シリアスでいつものおちゃらけたリョウじゃなかった。
『いいよ、いいけど、あなたに受け取れるの?これを』
『ああ、お前のモノだからな。だから、話せよ・・・』
私はうつむいたままぽつんとつぶやいた。
『お母さん、お母さんが亡くなってたの』
『お母さん?今さっき玄関で会ったけど』
『そうじゃないの、私を産んでくれたお母さん』
『そうか・・・』
『そうかって、そこ驚くとこじゃないの?』
『驚いてるよ、めっちゃ。でも、お前のモノだから』
リョウは取り乱すでも私に質問攻めをするでもなく、
私の全てを受け入れようとしてくれているようだった。
私は初めて、私と箱の事をリョウに話した。
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私がまだ寝返りもできない赤ちゃんだった頃、
私はやむにやまれぬ事情で児童保護施設園に預けられた。
その時、母は私をこの箱の中に寝かせて連れてきたそうだ。
当時の母は経済的にもかなり苦しかったらしい。
ダンボール箱といっても勿論フタを閉じる訳じゃなくて、
蓋は内側に折り込んで天面はオープン、しっかり補強もされ、
当時の私にとっては充分に安全なカゴ、ベッドだった。
でも私は何故かそのダンボール箱が好きで、ぐずった時も
その中に入ればいつも落ち着いてスヤスヤと寝たそうだ。
園長先生も『まるで魔法の箱のだった』と話してくれた。
私の成長と共に箱が手狭になり一度捨てようとしたけど、
泣きながら箱を探す私を見て捨てずにいてくれたそうだ。
そして私が3歳の時に、実母は亡くなったそうです。
いつか私を迎えに来たかったと言っていたそうです。
あの箱は私と実の母を繋ぐ唯一の接点だったんです。
だからその箱は落ち着ける場所だったのかもしれません。
それからすぐに今の両親が私を養子縁組してくれました。
園長先生は両親に箱の事もちゃんと説明してくれて、
そして両親も箱の事をちゃんと受け入れてくれました。
『そっか、だからあの時・・・』
『あの時?』
『うん、俺らが小さい頃、お前の母ちゃんが俺に言ったんだ。
"リョウくん、メグのモノ、何持って行ってもかまへんけど、
あの箱だけは持って行かんといてな。
それから、いつまでもメグと仲ようしたってな"って』
『お母さんがそんな事・・・知らなかった。
リョウってば物心着いた頃には "お前のモノは俺のモノ" が
座右の銘だったもんね。でもさすがにこれは、って訳ね』
『それに俺、知ってたんだ。高校に入学したくらいから、
お前、時々この箱抱きしめて泣いてただろ』
『うっっわ、そんなとこまで見られてたの!?』
『まあ部屋に入ろうとしたら偶然、何度か・・・
でも俺、ある事に気づいてな。ってか確信してな。
それは自分の気持ちなんだけど。
"その箱をくれ"って言える時が来たら、覚悟ができたら、
お前にその気持ちを伝えようとずっと思ってた』
『ってことは、今日はその気持ちを伝えてくれる日?』
私の涙はいつしか乾いていて、
さっきまでのどうしようもない悲哀も消えていた。
『なんでこの箱が欲しいの?"お前のモノは俺のモノ"だから?』
『そうだよ。お前のモノは俺のモノだから、なんだけど、
お前のモノは、全部。だから、その、
お前の喜びとか、悲しみとか、苦しみとか、
お前のモノは、全部。そういうの全部、コミコミで全部。
だからその箱も・・・』
『・・・それって・・・告白?』(゜ω゜;)
『・・・・・』(。_。)コク
『・・・もっかい、言って・・・』(☆-ω-)
『あ~うっせ~!!黙ってその箱よこせっ!』(〃ノωノ)
『うわあ~リョウが切れた~!告白しながら切れた~!
じゃあ箱の秘密を知ったからには一生責任持ってよね~』
(=´∀`)人(´∀`=)
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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【編集後記】
今回のお話のセリフ、もちろんジャイアンのセリフ^^
そして映画のジャイアンはテレビより全然カッコいい、
というのも有名ですよね。ですのでいつか、
このセリフを使って頂けないかと妄想しながら執筆しました。
お前のモノは俺のモノ、お前の喜びも悲しみも、俺のモノ
貴方なら "お前のモノは俺のモノ" の後に
どんなセリフを付けますか?
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド