シンデレラは雷雨の日に現れる -後編-■アースダンボールメルマガVOL104■2021年2月号
~前回までのあらすじ~
イケメン、勉学スポーツ万能、好人格。財閥跡取り。
人からそう言われる僕(高校生)の怖いものは『雷』。
ある日の放課後、ダンボール箱を被って雷に震えている時、
箱の隙間からそっと手を握ってくれた女性が居た・・・
顔も名前もわからず去ってしまった彼女にもう一度会いたい。
僕は "シンデレラを探す王子作戦" を決行したが失敗に終わった。
でも、僕はあきらめない。絶対にあきらめない・・・
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あきらめないぞ。作戦変更だ。
あの時と同じシチュエーションを作れば、
僕が雷の日に箱を被って怖くて耐えていた場面を作れば、
彼女はまた現れてくれるかもしれない・・・
それはどう見ても可能性の薄い、根拠の乏しい作戦だった。
でも彼女が運命の人ならきっと、と僕は信じた。
僕は生まれて初めて雷が来る日を待った。
あれほど怖くて恐くてたまらない雷が待ち遠しかった。
毎日天気予報を見ながら、放課後一人で校内に残った。
でももうすぐ雷のシーズンも終わってしまう。
それでもいい、たとえ来年になっても僕はやる。
しかし遂にその日は来た・・・!!
ほとんど人が居ない夕方の校舎、空が一気に暗くなる。
遠くからゴロゴロという音が聞こえ、稲光も見える。
"来い、早く来い、僕の真上に早く来い!!"
遂に雷雨が校舎の真上に来た。
僕はあの時と同じように走って放送室へ駆けこんだ。
そしてあのダンボール箱を再び被って息を潜めた。
その時、僕はふとしたことに気が付いた。
"あれ、雷、怖くない・・・克服できた?のか?"
その時だった。誰かが放送室に入ってきた。
やっぱり、やっぱり来てくれた・・・!?
そしてあの時のように箱の端から手を差し伸べてくれた。
僕はその手をそっと、でもしっかりと握り返した。
"ああ、あの時の手だ・・・やっと、やっと・・・
僕は被った箱を押しのけて、そっと彼女の顔を見た。
『君だったんだね、会いたかった・・・』(´;ω;`)
彼女は一瞬驚いた様子で目を丸くしていたが、
優しく微笑んでまた僕の手を握り返してくれた。
『堂上院くん、だったんだね・・・』(o´∪`o)
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それから、彼女は色々と話してくれた。
彼女はいつも花壇の手入れを夕方までしていること。
土と花の香りがするのはそのせいだろうということ。
あの日、花壇のすぐ前の放送室に駆け込む人を見て、
何事かと心配になって放送室に入ったこと。
ダンボール箱を被る人が居てすぐに状況がわかったこと。
それは、彼女の弟も雷が怖くて同じ行動をとるからだと。
そしていつも自分が弟の手を握ってあげるのだと。
でもあの時は誰かはわかっていなかったということ。
それでも手を握ってあげたいと思ったのだと。
その手から怖さや惨めさ、切なさや優しさも感じたこと。
でもきっと誰にも知られたくないことだろうと思い、
誰かを確かめずに部屋を出て行ったこと。
でもやっぱり誰なのかがとずっと気になっていたこと。
あの時手から感じた色んな感情が今もずっと残ってること。
もう一度あの人の手を握ってあげたいと思ったこと。
そしてあれから、
花壇の世話をしながらずっと雷を待っていたこと。
そうすればもう一度会えるんじゃないかと思っていたこと。
そしてそれが今日、奇跡的に叶ったのだと。
それが僕だと知った時はすごくビックリしたと。
でも、会えて本当に嬉しいと。
そして、僕の一番の疑問もやっと解けた。
『ねえ、あの時、君も俺としたよね?握手・・・』
『うん、したよ。でもまさか私を探す為の行動だったなんて。
ただ握手した時、雷の時の人だって私も気づかなかったわ。
それは多分・・・
雷が怖くてダンボール被った極限状態の時のあなたの手と、
この人を助けたいって思った時の私の手が触れた時だけに、
通じ合う何かがあったのかもしれないね』。
『そか・・・ただの握手じゃ駄目だったってことか・・・
そういえば俺あの時、君を一瞬だけ母さんだと思ったんだ。
もしかしたら、母さんが君に合わせてくれたのかな・・・』
『うん、そうかもしれないね』
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それから半年後、僕は高校を卒業した。そして父に、
一人の男として、グループ財閥の跡取りとして報告した。
『父さん、会って欲しい女性(ひと)が居るんだ』
『そうか、うん、わかった。それは良かった。
お前のステータス目当ての女性ばかりに囲まれて、
なかなか女性に心を開かなかったお前も、
やっと出会えたんだな。心から愛せる人に。
お前が選んだ人なら父さんは何も異存はない。
死んだ母さんもきっと喜ぶな』
『うん、父さん、俺・・・
父さんと母さんの子供に生まれて良かったよ。
雷が怖くて良かったよ。
小さい頃、雷が怖くて震える僕に母さんが、
ダンボール箱被せてくれて手を握ってくれた・・・
だから彼女に会えたと思うんだ』。
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
何の根拠もないに、ここに行けばあの人に会えるかも。
夢中でそんな行動をした経験はありませんか?
会いたいという強い想いはそれを現実にしたりしますよね。
まさに奇跡を起こしたりしますよね。堂上院くんのように。
そうそう、雷が鳴る運命の日を待ち続けるという場面、
映画『ショーシャンクの空に』を思い出すな~と、
執筆しながらずっと思っておりました。
そして『今回はダンボールの影、薄いな・・・』
とも思っておりました^^;
『あ、それはいつもか』
とも思っておりました^^;
お許しを。。。
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
1月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド