シンデレラは雷雨の日に現れる -前編-■アースダンボールメルマガVOL103■2021年1月号-2
イケメン、成績優秀、スポーツ万能、人格良し。
どうやらこの高校では僕がその存在らしい。
そしていずれは父が経営する堂上院財閥を継ぐ身。
僕の意志はどうあれ、それが僕の運命だ。
だからなのか、いつも多くの女性に囲まれる。
けどみんな僕のステータス目当てで正直うんざり。
でも、僕はようやく会えた。愛しのシンデレラに。
ただ、実は彼女が誰だかわからないんだ・・・
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『お前は完璧だ』って友人達はいつも言う。
でも僕には誰にも打ち明けたことが無い秘密がある。
それは・・・
雷が苦手なんだ。怖いんだ。
小さい頃からこれだけは克服できなかった。
学校や街でも、他に誰かが居れば何とか平静を保てる。
でも一人の時に雷に見舞われると足がすくんでしまう。
そんな僕の部屋には大きなダンボール箱が置いてある。
雷が鳴ると僕はそのダンボール箱をすっぽり被って中に隠れる。
今じゃこれが一人の時に雷をやり過ごす唯一の方法なんだ。
僕が小さい頃、雷が鳴って怖がっていると、
よく母がダンボール箱を僕にすっぽり被せてくれて、
『ほら、この中なら大丈夫よ、怖くないでしょ』J( ^_^)し
と優しく言いながら箱の隙間から僕の手をずっと握っててくれた。
ダンボールの暗い空間と紙の匂い、母の優しい手・・・
花壇の世話好きな母からほんのり香る土と花の香り・・・
それらは僕をとても安心させてくれた。
そんな母も僕が小学生の時に亡くなってしまったので、
ダンボール箱だけが救いになっているというわけで・・・
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そんなある日。
忘れ物を取りに夕方の校舎を一人教室に向かっていた時、
タイミング悪く突然雷雨になってしまった。
ピシャッ!! ゴロゴロゴロオオオオ!!
"ヤバイ!ダンボール、どっかに大きなダンボールは??
そうだ!あそこだ!!
僕は廊下を走り、放送室へ駆けこんだ。
"あった!! 大きなダンボール箱!!"(*゜д゜*).
僕は急いでそのダンボール箱を被ってうずくまり、
ただただ震えながらじっと耐えていた・・・
早く、早く終われ・・・そう願った時だった。
被った箱の端がスッと斜めに持ち上がった。
"だ、誰だ?"
箱と地面の隙間から足だけが見えた。
"スカート?女の子?うちの生徒?"
するとその子がそっと、箱の中に手を入れてきた。
"か、母さん!!まさか!?"
まだ冷静でなかった僕は無我夢中でその手を握った。
なんてあったかい手・・・なんて優しい手・・・
そしてほんのりと土と花の香り・・・
雷が止むまでその人は黙って手を握り続えけてくれた。
そして雷が止み僕が落ち着いた頃、彼女はそっと手を離し、
『もう大丈夫ね』とささやいて部屋を出て行った。
その5分後くらいに僕はやっと箱から出られた。
"一体、あの子は誰だったんだろう・・・"
彼女の手の温もりが僕の手にずっと残っていた。
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あの子は一体誰なんだろう?あの子にもう一度会いたい。
でも手がかりが何もない僕は突拍子もない作戦を考えた。
シンデレラを探す王子がとったあの作戦だ。
"僕と握手して欲しい"
そうお願いし、その手の感触で本人を探す作戦だ。
大丈夫、僕は彼女の手の感触をハッキリ覚えている。
僕はそれを校内の女生徒全員にやるつもりだった。
他の生徒から見ればとんでもない奇行だったろう。
『堂上院くん、突然どうしちゃったの?』Σ(゜゜)
『わかんないけど、誰かを探してるんだって』( ̄□ ̄)
そんな声が校内中を駆け巡ったが僕はお構いなしだった。
"彼女に会いたい"という僕の決意は固かった。
しかし校内の全女生徒との握手をしたが見つからなかった。
おかしい、うちの生徒じゃないのか?いや、そんな筈はない!
僕はあきらめない、絶対あきらめないぞ・・・
To Be Continued
次号へ続く
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【編集後記・へんしゅうこうき】
誰にでも怖いものってありますよね。
どんなにイケメンでも、頭脳明晰な人でも。お金持ちでも。
でもその怖さを受け入れて一歩踏み込んだ時、
かけがえのないものに出会えるかもしれない。
彼は今まさにそうしようととしています。
彼はシンデレラに会えるのでしょうか?
その時ダンボール箱が彼の想いの役に立てることを、
そして彼がシンデレラに会えることを、
なぜか私自身が願ってやみません^^;
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
1月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド