押入れ奥のダンボール Part2 -後編-■アースダンボール メルマガVOL106■2021年3月号
人の心の奥底と同じ場所が、実は家にもある。
それが押入れの奥。
そこにあるのは夢か希望か。
それともひっそり隠した思い出か?
~前号までのあらすじ~
僕の名前は一志(かずし)。高校三年生。
余命幾ばくもない母が病院のベッドで僕に告げた、
押入の奥にずっと仕舞ってあったダンボール箱の存在。
その箱が未だに進路を決められない僕の背中を押すという。
僕はすぐに帰り、押入れからダンボール箱を出した。
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『この箱が・・・』
そして、ゆっくり開けてみた・・・そこには・・・
『こ、、これは!? あの時の!!』( ̄□ ̄;)!!
ここに、ここにあったんだ・・・いっぱい探したのに・・・
それは、僕が3~4歳の頃、大好きだったものだった。
でもある日忽然と消えてしまい、探しても見つからなかった。
そしていつしか記憶からも消えてしまった。
箱の中には、それと一緒に母からの手紙も入っていた。
『一志、今、どんな気持ちですか?
あなたがこの手紙を読んでいるということは、
私が元気で家に帰れなかったか、帰るのを諦めたかね。
できれば、これは私自身の手であなたに返したかった。
あの時、あなたからこれを取り上げてしまってごめんなさい。
そして今まで隠してて、ごめんなさい。
あの頃、あなたはこれが大好きで毎日遊んでたわね。
私はこれで遊んでいる時のあなたの笑顔が好きだった。
でもお父さんの『男は男らしく』ていう方針を尊重して、
私はそれに逆らうことができなかったし、しなかった。
まだ小さいし、無くなればいつしか忘れてしまうだろう、
軽々しくそんな風に考えてしまっていたの。
今思えば、男らしさをわかっていなかったのは私達だった。
でも捨てるには忍びなくてずっとこの箱に仕舞っていたの。
でもそれがその後のあなたを苦しめる事になってしまった。
あなたは本当は好きな物への情熱をずっと持ち続けていた。
自分が女性を輝かせてあげる事にずっと憧れていたわね。
そんなあなたを見る度にこの箱の事を思って胸が痛かった。
いいえ、この箱の事を一日たりとも忘れたことは無かった。
だからいつか、あなたが自分の人生を自分で選ぶ時が来て、
その時にもし情熱と現実の間で迷っていたら、
これを渡そう、そう思ってずっとここに仕舞っておきました。
これは今のあなたの、心の奥にある情熱の原点。
自分の好きなものに誇りを持って、進んで下さい。
母さんより』
・・・・・・・・・・・・・
ううう・・(´⌒`。)
かあ、さん。母さん・・母さん!!!
そっか、そっか、俺自身が、間違ってたんだね・・・
好きなものを好きって言っても良かったんだね・・・
人に何を言われても、父さんと意見が違っても・・・
本当は好きなのに、自分の気持ちに蓋をしてた・・・
他の誰のせいでもない、全部自分で決めてたんだ!!
僕は箱の中に仕舞ってあった、当時姉から貰った、
リカちゃん人形と着せ替え洋服セットを握りしめて、
もう一度母の病院へ向かった。
病院に着くと、母は眠っていた。
そして、そのまま起きることは無かった。
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母からのあの手紙は、入院前に書かれたものだった。
その時はまだあの箱を渡す時ではないと思ったのだろう。
元気になって自分の手で渡したかったんだよな。
でも結局、あの箱の存在を僕に伝えたタイミングは、
これ以上ないほどのタイミングだった。
僕はそれまでの苦しみと、その時抱えていた悩みを、
一掃できたのだから。
母さんは最後の最後まで、最高の母親だった。
でも同時に、僕は猛烈に後悔した。
もっと早く自分の気持ちを素直に話していれば、
もっと早く母の心を楽にしてやれたかもしれないのに、と。
だからその悔しさを忘れないように、
自分の大事な人達にもうそんな想いをさせないように、
母が心の奥に仕舞っていたあのダンボール箱を、
今度は僕の心の一番真ん中にセッティングした。
僕はきっと、沢山の女性を美しく輝かせてみせる。
FIN
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【編集後記・へんしゅうこうき】
押入の奥から出てきたダンボール箱の中身を見て、
かつての情熱を思い出す。そしてもう一度奮起する。
よくある話です。ベタ中のベタです。
でも、よく聞くは聞くんだけど、自分がそうだ、
と言える人は意外と少ないかもしれません。
なぜでしょう・・・?
いや、なぜなんて考えること自体が既に違うのかもしれません。
そんな暇があったら今すぐ押入の箱に手を伸ばしてみませんか?
そのダンボール箱は今もあなたを待っているのかもしれません。
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
3月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド