泣かないで■アースダンボール メルマガVOL111■2021年5月号-2
もし10円玉がポケットからふいに出てきたら、
あなたはどんな風に使いますか?
え?10円じゃ何もできないって?
まあそうかもしれないね。僕もそう思ってたし。
ある朝、出勤前にズボンのポケットにハンカチを入れると、
ふいに指先に硬化があたった。10円玉が何でこんなとこに?
でもその時、僕は遅刻しそうでめっちゃ急いでて、
その10円玉を財布に移さずそのままポケットに入れておいた。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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僕の職場はアニメやキャラクター中心の雑貨屋さん。
職場に着く頃には10円の事はすっかり忘れていた。
開店してしばらくすると、女の子が店にやって来た。
小学生?まだ幼稚園?くらいの子だったから、
続いて親が入ってくると思っていたんだが・・・
女の子は一人だった。
何となく違和感を感じながらも
『いらっしゃいませ~』と声を出す僕と他のスタッフ達。
すると女の子は店内の商品をキョロキョロと探し始めた。
"普通にお客さん・・・だよな?"
女の子は小さなダンボール箱を両手で持っていた。
"何が入ってるんだろう? マイバッグ、かな?"
僕は色んなことが気になった。
こういう時は、
『何かお探しですか?』だろうか・・・?
それとも
『一人かな?お母さんやお父さんは?』だろうか・・・?
そんな事を考えていると、女の子から声をかけてきた。
『あのお~・・・』(・ω・`;)
『あ、はい、いらっしゃいませ。何かお探しですか?』(^_^)
『折り紙、折り紙ありますか・・・』(・ω・`;)
『折り紙ですね。はい、ございますよ』(^_^)
僕は女の子を折り紙がある棚へ案内した。
『わあああ~いっぱいある~』o(^▽^)o
女の子の目が急に輝いた。
『あのね、折り鶴をこの箱にいっぱいに入れたいの。
折り紙は何枚くらいあればいいですか?』(・∀・)
女の子は僕にそう尋ねた。
『そうだな~、20枚くらいあればいいかな』(^_^)
『じゃあ、ドキドキマジカルメモリーの絵が付いた、
折り紙20枚くらいありますか?』(・∀・)
『はい、ありますよ。えっと、これですね』(^_^)
そう言って商品を手渡すと女の子の目が一層輝いた。
『ドキマジメモリー好きなの?』(^_^)
『うん、大好き!お母さんもこれが好きなの!』(O´∀`)
『へ~、今日はお母さんは一緒じゃないの?』(^_^)
僕は思わず気になっていた事を聞いてしまった。
『お母さん入院してるの。
だから元気出るように折り鶴折ってあげるの。
この箱いっぱいくらい作ってあげるの』(。´・д・)
そう言って箱の蓋を開けてみせてくれた。
そこには折り鶴が3羽入っていた。
なるほど、一人で来たのはそう言う事か・・・
『わあ、上手に折れてるね~。
箱いっぱいになったらお母さん喜ぶね~』(^_^)
そう言うと女の子は満面の笑みで微笑んだ。
僕は女の子と一緒にレジに行った。
『はい、じゃあ220円になります』(^_^)
僕がそう言うと女の子はポーチからお金を出した。
小銭で100円、10円、5円や1円・・・
全部の小銭をトレーに乗せ、僕はゆっくり一緒に数えた。
全部で210円だった。
『あと10円あるかな?』(^_^)
女の子はポーチの奥まで指でなぞっていた。
そして女の子の手が止まって数秒後・・・
『10円、ありません・・・』(。´・д・)
落ち込んだか細い声だった。
『あ、そ、そう、ですか・・・』(・д・`。)
僕はそれ以上の言葉が出なかった。
店内の他のスタッフもこの状況を見つめていた。
僕は女の子になんて言ってあげれば・・・
僕は只の無力な店員だった。
『すみませんでした・・・』(。´・д・)
気丈にもしっかりしとそう言って女の子は出口に向かった。
そりゃお金が足りなきゃ買えない。
でも僕の仕事って一体、お客様の笑顔って一体・・・
遠ざかる女の子の背中を見つめながら、
僕はふいに今朝の指先に硬化があたった感触を思い出した。
"あ、、、10円玉、、、あった・・・"
僕は女の子の後を追おうとしたがすぐに立ち止まった。
"いや、これってやっていい事なのか・・・?
あの子はお客さんで僕は店員、それだけの関係。
それに僕は今仕事中。普通に考えて良くない。
でもたかが10円?いやされど10円?いや金額じゃない。
どうする、どうするよ、俺"( ノ*´Д`)ノ
こうして考える間にも女の子は行ってしまう。
僕は10円を握りしめたまま動けなかった。
そして遂に女の子は店のドアの外へ・・・
その時だった。
女の子がドアの前でつまづいて転んでしまい、
持っていたダンボール箱を落としてしまった!!
蓋が開いた箱からは3羽の鶴が飛び出てしまった。
僕はすぐに女の子の元へ駆け寄った。
『だ、大丈夫!? どっか痛いとこ無い??』(;゜Д゜)
『うん、大丈夫です、ごめんなさい』(;´∀`)
女の子はそう答えて自分で立ち上がった。
僕は鶴と箱を拾ってあげ、鶴を箱の中に入れた。
そしてその時、僕の心は決まった・・・!!
『あ、あれ~!!
この箱の底の方から10円玉が出てきたよ~!
ほらほら、箱の底のこの隙間から出てきたよ。
あったねえ~10円玉! よかったね~!!』(=゜ω゜)ノ
僕はそう言って箱と10円を女の子に手渡した。
僕に芝居経験なんか無い。いやそれはどうでもいい。
たとえこの演技がドヘタだったとしても、
ただ黙って、黙ってこれを受け取って欲しい・・・
すると女の子は、
『ええ!?ほんとう?? やったあ~!!』(*´∀`*b)
と喜んだ!
僕達は再び一緒にレジに向かった
歩く途中、後輩スタッフと目が合った。
僕に向かって"グッジョブ"と手の親指を立てていた。(o^-')b
反対側に目をやると、先輩女性スタッフと目が合った。
僕に向かって"うんうん"と大きく2度うなづいた。( ̄ー ̄)b
さらに奥の方では大先輩おじさんスタッフが、
何故か目頭を押さえていた。(´;ω;`) おいおい。
みんな、気持ちは同じだったんだな。
女の子は満面の笑みで220円をトレーに出し、
折り紙を受け取って帰って行った。
女の子をドアの前で見送った後、
店長が何も言わずに僕の背中を"ぽん"と叩いた。
その夜の閉店後、何故か珍しく皆で飲みに行った。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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一ヶ月後、街中で偶然、
あの女の子が女性と手を繋いで歩いているのを見かけた。
すれ違う時、女の子は『お母さん、ハンバーグ食べたい!』
と楽しそうに話していた。
お母さん元気になったんだな、良かったね。
僕はあの時の事を思い出して少しニンマリ顔になった。
でもあの時の行動が正しかったかどうか、実は今でも考える。
あの時、そうあの時って言えばもう一つ。、
あのシーンでの本当の名演技は、グッジョブだったのは、
あのダンボール箱だったんじゃないだろうか・・・と。
ダンボール箱って蓋が2枚重なる所に隙間あるんだよね。
あ、思い出した、あの10円玉。
鮭おにぎり買おうと110円出したけど急に節約心が沸いて、
100円の昆布おにぎりに変えちゃった時のだった。
節約は10円だけどあの子の笑顔はプライスレス、なんて。
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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【編集後記】
仕事場では、日々色んな事が起きますよね。
判断に迷うことも沢山ありますよね。
考えてる時間なんてないけどやらなきゃならない、
間違ってるかもしれないけどやらなきゃならない、
そんなことも沢山ありますよね。
もしあなたがこの主人公の立場だったら、
あなたはどうしていましたか?
良かったら聞かせて下さい^^
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド