ダンボール係と花子さん -前編-■アースダンボール メルマガVOL122■2021年11月号
まるで現代に蘇った忍者。村人は彼らを密かにそう呼んだ。
古(いにしえ)の時代、忍は人知れず君主を、城を、領地を守った。
そして現代、人知れず、って程じゃないけどなかなか地味で、
その活動がさほど目立たない、けど確かにこの学校を守ってる。
いや学校だけじゃない、地域や村も守っている。
それがこの小学校に昔から伝わる "ダンボール係" だ。
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僕は小学校6年生に進級した神谷章一(かみやしょういち)。
この村唯一の小学校だけど創立100年近い伝統の小学校だ。
今年もクラスの係決めの時期になった。
そして毎年6年生だけは係の種類が多くなる。
図書係、園芸係、体育係、生きもの係・・・
全ての係が埋まった時、僕一人だけ余っていた。
すると担任の先生がこう言った。
『一人余りの時は"ダンボール係"な』
ダンボール係・・・
この係、普段は無いのに余りが出た年だけ出現する係で、
大体3~4年ごとに現れるらしい。
定番係じゃないのに一人余ると現れる不思議な係だ。
その仕事内容はというと・・・
人がダンボール運ぶ時に手伝ったり、あるいは一人で運んだり、
集会や祭り事でダンボールが必要な時は調達したり、
使用後のダンボールの廃棄を頑張ったりと、
つまりダンボールに関わる事なら何でも屋、なかなか地味。
キャシャーンがやらねば誰がやる、
ダンボール係がやらねば誰がやる、
な感じの、縁の下の力持ち的係なのだ。
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その日の帰り、校門に校長先生と担任の原田先生が居た。
『今年は神谷君か、頑張れよ』と二人から声をかけられた。
『え?あ、はい・・・(ダンボール係の事、かな?)』
そう言えば二人ともこの学校出身だっけ、仲いいよな。
因みにこの村の人達はみんな仲がいい。
小さい村だからかもしれないが、なんていうかこう、
人と人との繋がりが深くて強いように感じる。
全然立場が違う人同士や、上下関係の人同士でも、
今みたいに声を掛け合ったり立話するのをよく見る。
地域の大人達の結束は子供にとっても安心感がある。
そして僕はその理由をあるダンボール箱で知る事になる。
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学校の本校舎裏には、今はほぼ使われない旧校舎があった。
木造で、廊下を歩くと"ミシっ"っていうくらい古い校舎で、
明るい昼間でも一人でここを歩くのは少し怖い場所だった。
ただ、たまに教室を使う事もあるので一週間に一度掃除をする。
でも本当に皆が怖いのは、掃除用具がある物置部屋だった・・・
この部屋は廊下の突当りにある4畳程の部屋。
ガガガ、、と引き戸を開けると入口付近に掃除用具がある。
皆、無意識に無口になって下を向いて、早足になって、
用具だけを取ってそそくさと部屋を出る。
そこには、いつからあったか誰も知らない程昔からの、
積まれたままのダンボール箱が沢山あった。
そして一番奥の箱の上には長い黒髪の人形が一体横たわっている。
人形の姿は僕らと同じ小学生くらいの女の子に見えるけど、
僕の妹が持ってる赤ちゃんごっこ用の人形くらいのサイズだ。
昔の生徒が工作の授業で作ったものか何かだろうか?
誰が何の目的でここに置いたのか?なぜこのままなのか?
児童はもちろん、先生だって誰も"彼女"を触ろうとしない。
部屋に電気は無く、入口からの僅かな光で彼女の顔が半分見える。
(たぶん)見た目はごく普通の可愛いらしいお人形だが、
そこに居るというだけで何か想像を掻き立てられずにいられない。
子供に恐怖を抱かせるに充分な"それ"は、今日もそこにいる。
でもなんだろう・・・?
僕は初めてこの人形を見た時から何か気になっていた。
ちょっと怖いけど、何となく優しそうな感じ・・・
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そんなある日、ダンボール係のひょんな仕事が回ってきた。
イヤ、仕事じゃないんだけど・・・
クラスの男子仲間で旧校舎で肝試しをやろうとなった。
夜は無理なので、まだ少し明るい夕方に校舎前に集合となった。
ここは薄暗くなると一層怖い。夕方でも肝試しには充分な場所だ。
三人一組で廊下を進み、あの部屋の人形を触ってくる・・・
子供にはちょっと無理そうなミッションだ。
一組、また一組と進むが、ビビッて誰もクリアできない。
戻ってきた奴の表情を見て次の組の奴も顔面蒼白になる。
全く、、、女子を誘わないで本当によかったよ。
女子の前でこんな情けないへっぴり腰姿は絶対に見せられない。
いよいよ最後の組、僕の組になった。
一人は下を向いたまま、一人は歌を歌いながら、
ゆっくりと歩を進めた。そして物置部屋の扉の前に来た。
すると突然一人がとんでもないことを言った!!
『お、お前ダンボール係じゃん、お前やれよ!?』(;°-°;)
『はあ!? いやダンボール関係ねえじゃん!!』(;`・Д・)ノ
僕がそう言うと別のもう一人が続けて言った。
『ご、ごめん!俺ギブ!先戻るわ!ごめん!!』(ll゜Д゜)
『お、俺もギブ!ごめん、神谷、あと頼む!!』(;゜д゜;)
『頼むって、おい、ちょっ、待てよ!おい!!』(;`・Д・)ノ
バディのはずの二人は行ってしまった。
『ふうう~、ったく、仕方ねえな』ε-(‐ω‐;)
僕は深呼吸してゆっくり扉を開けた。
ガガガッ・・・
~To Be Continued~(次号へ続く)
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【編集後記】
この号の執筆中、頭の中でずっと
ベン・イー・キングの『スタンドバイミー』の主題歌が
流れていました。
ひと夏の経験が、まあ秋でも冬でも春でも、
経験が少年を大人にするって、ありますよね。
今日もどこかでダンボールがそのお役に立てていると思うと、
ダンボール屋としてはこの上なく嬉しいのです。
ところで、貴方は小学校時代に何か係をやってましたか?
それにはどんな思い出がありますか?
意外と"ダンボール係"が実在してたりして^^
良かったらぜひ聞かせて下さい。
さて次号ではダンボール係の秘密が遂に明らかに!?
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド