押入れ奥のダンボール パート3■アースダンボール メルマガVOL121■2021年10月号-2
人の心の奥底と同じ場所が実は家にもある。
それが押入れの奥。
そこにあるのは夢か希望か。
それともひっそり隠した思い出か?
このメルマガの意外な人気シリーズ
『押入れ奥のダンボール』
今回は一体どんな・・・!?
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押入の奥は人の心の奥底?まあそういう場合もあるのかも。
でも私にとって押入の奥は、ずっと私の心のど真ん中だった。
私は愛海(まなみ)、17歳の女子高生。
双子の妹の愛華(まなか)も同じ高校に通っている。
私達は双子でありながらまったく似てない。
妹の愛華は容姿端麗で文武両道、社交的で人気者。
私はそのどれもが妹には到底及ばず、内気で人見知り。
因みに愛華は、好きなおかずは真っ先に食べるタイプ。
一方私は、楽しみは後々まで残しておくタイプ。
そう、あのダンボール箱とその中身みたいに・・・
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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だからと言って私達は仲が悪い訳ではない。むしろ仲は良い。
ただ一つ困るのは幼馴染の同学年男子、直樹(なおき)の事。
直樹と私達の3人は小さい頃からいつも一緒だった。
家も隣同士で家族ぐるみでも仲が良かった。
私達姉妹は小さい頃からごく自然に直樹を好きになっていた。
口には出さずとも互いにそれをわかっていた。双子だからね。
因みに愛華と直樹は超モテて、二人とも告白された人数は凄い。
でも二人とも "好きな人が居るから" と誰の告白をも断っていた。
いつしか、愛華と直樹は相思相愛? と誰もが思うようになった。
確かに、直樹の好きな人って愛華なのかしら・・・?
そんなある日・・・
『お姉ちゃんは直樹の事どう思ってるの?』
愛華がいきなり直球をど真ん中に投げ込んできた。
『どうっていきなり、それは、えっと・・・』
『私、直樹に告白する。お姉ちゃんには言っとこうと思って』
『ふ、ふうん、そう。が、頑張ってね・・・』
私は胸の高鳴りが収まらなかった。
いつかこんな日が来ると思ってたけど考えないようにしてた。
直樹が愛華と・・・私はどうすれば・・・
でも内気な私は何もすることもしなかった。
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数日後の放課後、直樹と愛華が校舎裏へ歩いて行くのが見えた。
"ああ、今日なんだ、告白・・・"
私はただ肩をうなだれ、一人とぼとぼと歩いて帰った。
見慣れたはずの帰り道の風景が何故かセピア色みたいだった。
私はぼ~として半分どこを歩いているのかもわからなかった。
すると突然、背後から誰かが私を呼んだ。
『お~い、愛海~!!』
『直樹・・・! 一人?なんでここに?』
『なんでって、帰る方向一緒じゃん』
『だって、さっき愛華と・・・』
『ああ~それな、愛華に告白された・・・』
『ふ、ふ~ん・・・』
『でも断った・・・』
『ふ~ん、やっぱそっか、ってええ!?断ったの!?』
『俺、他に好きな人が居るから』
『好きな人!? 聞いたことないし!』
『そりゃそうだ、言ったことないし!』
一瞬だけ訪れた安堵感の後、また胸がドキドキしてきた。
まさか愛華の告白を断るって。しかも他に好きな人居るって。
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その日、愛華は帰りがいつもより遅かった。
『あ、愛華、お、おかえり・・・』(..*)
『お姉ちゃん、ただいま~』(*´∀`*)
愛華は一応いつもの調子、に見えた。
『そうそうお姉ちゃん、私、直樹にフラれた』(´∀`)
『そ、そうなの? ざ、残念、だったね・・・』(..*)
『うん残念、めっちゃ残念、激残念、死ぬほど残念。最~悪!!
フラれる人の気持ちってこんなんだったんだね。
何年か前から薄々気づいてたけど、好きな人が居るんだってさ。
悔しいけど私、多分その人には絶対勝てないわ』(ノv`*)
気の強い愛華が少し涙目になり、部屋に駆け込んで行った。
なんやかんやで愛華も初めての告白か、頑張ったんだよね。
私はいつしか愛華に感情移入していた。
愛華、私も頑張っていいかな・・・
愛華みたいになっちゃうかもだけど・・・
でももう何もしないで他の子に取られるなんて嫌だよ。
私は押入奥のダンボール箱にしまっていたある物を取り出した。
"これよこれ!私の切り札!今こそこれを使う時よ"( ー`дー´)
私はそのアイテムを握りしめて呟いた。
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それから2週間後・・・
妹への感情移入のせいか?妹の弔い合戦のつもりなのか?
それとも好きな人を誰かに取られたくない純粋な想いだろうか?
自分の心に小さい、でも強い炎が燃え続けているのを感じた。
その間、あのアイテムを使って充分なイメトレも積んだ。
そして私は決戦に臨んだ・・・
私はそのアイテムを直樹の目の前に突出し、こう言った。
『私を直樹の、お、およ、お嫁さんにして!!!』(*≧∀≦)
鳩がマメ鉄砲を食らった顔ってまさにこんな顔だと思う。
直樹はビックリして、でもすぐに穏やかに笑ってこう言った。
『それ、やっと使ってくれたんだね・・・』
あれは私達がまだ保育園だった頃、
直樹が私達にくれた誕生日プレゼントの手作り金メダル。
"何でも言う事一回だけきいてあげる"のオプション付き。
しかも使用期限なし。
私は大きな箱にそのメダルだけ入れて押入の奥にしまっていた。
『俺、愛海がそれを箱にしまった日の事、よく覚えてるんだ。』
『私も覚えてるよ。その日の気持ちまではっきりと。』
(´-`).。oO
あれは直樹がこのプレゼントをくれて一ヶ月後くらいだった。
愛華はそれを"一日家来"か何かですぐに使っちゃってた。
『愛海はまだそのメダル使わないの?』
『うん、直樹に"どうしてもお願い"って時に使うの』
『どうしても?なにそれ?』
『今はわかんない、てか秘密。だからこの箱に入れとくの』
『そんな大きな箱にそんな小さなメダルしか入れないの?』
『うん、これならどこにしまったかわからなくならなでしょ。
それに机の中とかだと愛華に取られちゃいそうだし。
だから大きな箱にこれだけ入れて押入にしまうの。』
(´-`).。oO
だからあの日以来、メダルとそれを入れたダンボール箱は、
場所は押入の一番奥だけどいつも私の心の真ん中にあった。
『俺、あの時思ったんだ。
愛海がそれを使うまでは愛海の傍にいなきゃなって。
でさ、いつ使うんだろう?どんな風に使うんだろう?
って思ってたら、毎日愛海の事を考えるようになって。
だからメダルと箱は俺の心の真ん中にもずっとあったんだ。
つまり、その、愛海がずっと心の真ん中に居たんだよ。』
『そっか、メダルと箱、二人の真ん中にずっとあったんだね』
『うん、そうだね』
『じゃあ改めて"何でも言う事きく権"の発動って事で!』
『承知しました。ご主人様!仰せの通りに!』
『プッ、ふはは、あはははは~』(:.´艸`:.)((笑´∀`))
『にしても、内気な愛海が全部すっ飛ばしてお嫁さんって!』
『な、なによ!私だってやる時はやる女なのよ』(〃ノωノ)
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その後、私と直樹は大学卒業後に結婚した。
数年後、私達は長男に恵まれ、もうすぐ長女も生まれる。
直樹は、長男が5~6歳くらいになったら、
"何でも言う事きくメダル"の作り方を伝授したいらしい。
メダルを渡せる素敵な子が現れれるといいね。
じゃあ私は長女にあのダンボール箱を引継ごうかしら。
素敵なプレゼントをくれる男の子が現われるといいね。
あのダンボール箱は今でも我が家の押入にしまってある。
え?まだその箱使えるのかって?
大丈夫、あのダンボール箱はとっても優しくてとっても丈夫なの。
FIN
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【編集後記】
押入の奥に長年しまってある箱はよくありますが、
長年の保管後、更に誰かに引き継がれる箱って、
なかなか無いですよね。
箱屋をやっているとそうして引き継がれる箱のお話を
よく聞かせて頂く事があります。
そして更には、その箱がダメになったので同じ箱が欲しい、
同じ箱じゃなきゃ駄目なんです、というお話もよく聞きます。
その度に、基本使い捨てアイテムのダンボール箱が
こんなに大事に想われているんだと幸せな気持ちになれます。
あなたの家の押入には、
誰からか引き継がれた箱、誰かに引き継ぎたい箱はありますか?
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド