女優、始まりの舞台は質屋 -後編-■アースダンボール メルマガ VOL119■2021年9月号-2
~前号までのあらすじ~
俺はこの店の店主、定家仁(さだいえじん)。
3年前に死んだじいちゃんから引継いだ質屋だ。
でも上手く行かず店を畳もうとしていた矢先、
日本が世界に誇る大女優が突然この店に現れた。
彼女の名前は鷲宮日向(わしみやひなた)さん。
彼女は30年前に質入れした物を買い戻しに来たという。
それはただのダンボール箱。でも、そのただの箱を、
当時の店主のじいちゃんが驚愕の高額買取をしていた。
前号の全文はこちらです↓
https://www.bestcarton.com/profile/magazin/2021-sep-1.html
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
30年間倉庫に保管してただけの"ただの箱"にこの値段・・・
確かに、この値段で買い戻して貰えるのはありがた過ぎる。
そんな考えが頭をよぎった時、彼女は更に驚く事を言った。
『この箱を買い戻させて頂くだけでも宜しいのですが、
もし宜しければこの箱の鑑定依頼をされてはいかがですか?
鑑定で証明されれば今の値段の数倍になるかも』(*´ー`*)
『鑑定!?証明って一体何の?しかも数倍?』w;゜ロ゜)w
俺はもう何が何だかわからなかった。
彼女が言う鑑定するもの、それは彼女のサイン・・・
この箱のフタの裏側には、彼女のサインが書いてあった。
当時5歳で既に女優が夢だった彼女はサインの練習もしていた。
『私、将来は大女優だからこの箱にサイン書くね。
私の初めてのサインだよ!』(o*´∇`)
と言って箱の買取を依頼した。その時の店主、俺のじいちゃんが、
『それは凄いね。じゃあお値段も頑張らなきゃね』(^_^)
と言って、あの値段を付けた・・・
そして彼女はそのサインをずっと変えずに書き続けている。
つまりこの箱のサインは彼女が公に書いた最初のサイン。
当時の買取品書類にもその時の状況が詳細に書かれていた。
更にじいちゃんは、買取の記念写真もちゃんと残していた。
サインを書いた時の状況証明は価値を上げる大事な要素だ。
それが本物となればファンはとてつもない値を付けるはず。
_________
そして後日、鑑定の結果 "本物" ということが証明された。
オークションならかなりの値がつくと専門家が口々に言った。
俺は突然舞い込んだあまりにとてつもない話に迷っていた。
彼女の買い戻しに応じるべきか、オークションにかけるべきか。
でも悩んだのは少しだけで、答えはすぐに出た。
鑑定結果から数日後、日向さんが改めて来店された。
『それで、どうされるかお決めになりましたか?』(*´ー`*)
『はい、日向さんのお買戻しに応じさせて頂きます。
当時の買取額に既定の利益だけを頂いた額で』(*^_^*)
『そうですか。私もあの箱が戻ってくるのは嬉しいです。
でもなぜ?オークションの方が価格が上がるのでは?
お店の状況も厳しいと聞いておりますが・・・』(*´ー`*)
『はい、確かに厳しいです。でもだからこそと言いますか。
オークションで手にする額は店主としての私には不似合いです。
今回改めて初代の、じいちゃんの眼力には驚かされました。
私にはとてもじいちゃんみたいな力はありません』(*^_^*)
『そうですか・・・でも店主さん、いや、定家さん、
あなたは大きな勘違いをされていますよ・・・』(*´ー`*)
『勘違い・・・?』(*^_^*)?
『そうです。
あなたは初代店主を凌ぐほどの眼力がおありなのに』(*´ー`*)
『私に・・・?一体何のご冗談ですか?』(*^_^*)?
『冗談ではありません。まだ思い出せませんか?』(*´ー`*)
『まだって、何を・・・?』(*^_^*)?
『はい、この箱にあれだけの値をつけて下さったのは、
他でもない、あなたのおかげなんですよ』(*´ー`*)
『私が?一体何を・・・何、を、、あ、ああ!』w;゜ロ゜)w
その時、俺の脳裏にあの時の情景がはっきりと蘇った。
『思い出されましたか?
質屋さんなら物への価値感や知識も大事な要素だと思います。
でも、それを超えた所にある人の心や感情にまで応えること、
応えて貰った人がまた応え返し、幸せが繋がっていく・・・
そんな事ができる質屋さんはなかなか無いと私は思います。
そしてあなたと、あなたのおじい様はそんな事ができる、
唯一の質屋さんだと私は思います。
あなた方は、ダンボール箱というどこにでもある物を通して、
私にそうして下さいました。
今の私があるのはあなた方のおかげです。
本当にありがとうございました。』(*´ー`*)
・・・じいちゃん、なあ、じいちゃん、
じいちゃんはあの時、こうなる事がわかってたんか?
それとも・・・いや、別にいいか、そんなことは。
ただ俺、もう少し頑張ってみようかな・・・質屋をさ・・・
~~~~~~~~
(´-`).。oO(´-`).。oO
『お父さん達、お話長いな~。大丈夫かな~』(;´・3・`)
『大丈夫だよ、多分、沢山買い取るんだよ』o(゜ー゜*o)
『私もこのおもちゃを買い取りしてもらうの』(;´・3・`)
『そうなの!?じゃあさ、その箱にサイン書けば!?
だって将来は女優さんになるんでしょ?』o(゜ー゜*o)
『うん、そっか! じゃあ私サイン書くね!!』(*´ー`*)
_________
『店主さん、このおもちゃも買い取って下さい、私の宝物なの。
そのお金は全部お父さんに渡して下さい』(*´ー`*)
『わかりました。じゃあ買取価格を出しましょうね』(^_^)
『私、将来は大女優だからこの箱にサイン書くね。
私の初めてのサインだよ!』(*´ー`*)
『それは凄いね。じゃあお値段も頑張らなきゃね』(^_^)
『じいちゃん、この子は将来、すごくいい女優さんになるよ。
僕わかるんだ。絶対だよ、僕がほしょーするよ』o(゜ー゜*o)
『そうか、じゃあこれがお前の初買取鑑定ってことか。
わかった。お前の初仕事のお祝い相場付けるか!!』(^_^)
(´-`).。oO(´-`).。oO
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
****************************
【編集後記】
本業で質屋さんを営んでおられる方、
あり得ないであろう話を綴ってすみませんでした。
でも本業の質屋さん、特に長年の質屋さんであれば、
きっともっと素敵で、もっと驚きのお話がる事でしょう。
ダンボール箱は、基本的には中に品物を入れる道具ですが、
時には中の品物以上の物語を生む事があります。
多分それは、あなたが箱の中に大切な物を入れた瞬間、
箱自体があなたの一部になるからなのかもしれないと、
思ったことが何度かあります。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
9月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド