そのベッド、メイドインお父さん■アースダンボールメルマガVOL146■2022年11月号
『こんなベッドじゃ眠れやしねえ!』
近くに居た男性がわざとみんなに聞こえる声で言った。
避難所でのイライラや不安が募ってしまったんだろう。
災害級大雨の避難指示で私は夫と息子とここに来ていたが、
ここでは町が備蓄していたダンボールベッドを出してくれた。
私にとってこのベッドは全然不便じゃない、むしろ懐かしい。
みんなが不安な夜だけど私はぐっすり眠れそうだ。
まさかこうして、このベッドで寝る時が再び来るなんて。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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私の父は大工さんです。
大工さんて、職人気質、頑固者、一本気、ぶっきらぼう、
そんなイメージを持つ人もいるかもしれない。
父はまさにそんなイメージ通りの人で、
"自分は不器用ですから" とでも言いそうな雰囲気の人で、
嫌いじゃないけどちょっと苦手で話しかけにくい人だった。
だから私は、何かあるともっぱら母に話していた。
父への用事さえ母をワンクッションして伝達して貰っていた。
それでも何の問題も無く生活できていたからか、
私の事なんて興味も心配も無いんだろう、なんて思っていた。
小学校の時の習い事も、中学校での部活の事も、
高校進学も、大学進学も、全て母だけに話していた。
父はいつもそれを母から聞くだけだった。
頑張ったなとか、楽しかったかとか、父から言われた記憶が無い。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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そんな私も社会人になり、実家から通勤していた。
ある日、どうも体調がすぐれない日が続き、はっと気が付いた。
やっぱり、遅れてる・・・
もしばらく待ったがやっぱり来なかった。
私は自分で検査薬を使ってみて、産婦人科にも行った。
妊娠三か月だった。
あ、ちゃあ・・・どうしよう・・・
それから数日が過ぎたが今回は母にも話せずにいた。
ただ、彼にはすぐに話した。
彼はちゃんと受け入れてくれて結婚しようとも言ってくれた。
それはそれでとても心強かった。でも問題は
・・・父にどう話したらいいか・・・
それに、話したらなんて言われるか。
そう考えると母に話すこ事さえ躊躇してしまっていた。
そうこうしている間に少しづつお腹が出てくる感触を感じた。
多少体調が悪いのは我慢して、家では大きめの服を着て、
どうにかこうにか過ごしていたがそれもそろそろ限界だった。
せんべい布団での寝起きも何となくきつく感じ始めた。
そして気づかないうちにストレスも限界に来ていたらしい。
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そんな中、母が旅行で二日間家を空けることになった。
どうしよう、こんな時にお父さんと二人きり・・・
そんな不安はストレスを更に限界点近くに押し上げた。
その夜、私は突然の腹痛で目が覚めた。
痛い、痛い、痛いよう・・・
今まで経験した事のない痛みだった・・・
だめだ、これダメなやつだ・・・
誰か、誰か助けて、お父さん、お父さん!!!
私は声にならない声を振り絞って父を呼んだ。
父はすぐに私の声に気づいて私の部屋まで来てくれた。
『おい、陽菜(ひな)、どうした、大丈夫か、陽菜!!』
『お、とうさん、お腹、痛い。。。』
『待ってろ陽菜、すぐに救急車を呼ぶからな!』
あ、あれ、お父さん、こんなに、取り乱した、顔・・・
薄れる意識の中で一瞬だけそう感じたが、その先は覚えてない。
次に気が付いた時、私は病院のベッドに居た。
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目を覚ますと、父が横に座って私をじっと見ていた。
『どうだ、まだ痛むか』(´- ` )
『ううん、大丈夫、痛くない』(´;д;`)
『そうか、よかった』(´- ` )
『・・・・』(´;д;`)
『強いストレスが胃を直撃したそうだ』(´- ` )
『強いストレス・・・胃・・・?』(´;д;`)
『ああ、明日には退院できるそうだ』(´- ` )
『お父さん、私ね・・・う、うう、、』(´;д;`)
『おい泣くな、ただのストレスだ、大丈夫だ』(´- ` )
『そうじゃないの、そうじゃなくて』(´;д;`)
『だから泣くなって、おなかに、触るだろ』(´- ` )
『おなか?胃はもう痛くないもん』(´;д;`)
『それもあるが、そのおなかじゃなくて、』(´- ` )
『そのおなかって、知ってた、の?』(´;д;`)
『ああ、』(´- ` )
『いつから?』(´;д;`)
『だいぶ前から、多分、母さんもな』(´- ` )
『そう、だったんだ・・・』(´;д;`)
『もう25年も親子やってるからな』(´- ` )
『・・・・』(´;д;`)
『救急処置にあたった先生からも聞いた』(´- ` )
『・・・・』(´;д;`)
『・・・・』(´- ` )
『あのね、お父さん、私・・・!!』(´;д;`)
『陽菜、いいんだ、いいんだよ』(´- ` )
『だって私、こんな大事なこと』(´;д;`)
『いいんだ、今はゆっくり休め、』
『でも、でも・・・』(´;д;`)
『安心しろ、大丈夫だ、お前は大丈夫だ』(´- ` )
とても言葉少ない会話だった。
いや、言葉の数は問題じゃない。
私は父の事をこれっぽっちもわかっていなかった。
父は、ずっと私を見てくれていたんだ。
私は馬鹿だ。なんて大馬鹿なんだ。
自分勝手なストレスと二十年もの思い違い。
その両方が一気に洗い流された瞬間だった。
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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翌日、私は退院して父の運転する車で家に戻った。
車中での父は相変わらず無口でそっけなかった。
でもそのいつもさ加減が今はなんだか心地よかった。
家に着くと旅行を1日繰り上げて母も帰ってきていた。
私が部屋で一人横になっていると、コンコン、と父が来た。
『どうだ? 何か不便はないか?』(´- ` )
『うう~ん、しいて言えば地べたの寝起きが少しきついかな』(o´▽`)
『寝起き?』(´- ` )
『そう、でもベッド無いからしょうがないけどね』(o´▽`)
『ベッドか。そうか』(´- ` )
そう言うと父はごそごそと家中から何かをかき集め、
私の部屋に持ってきた。沢山のダンボール箱だった。
『みんなサイズがバラバラ、ま、問題ないだろ』(´- ` )
父はそう言うとそれぞれサイズが違う箱を手際よく解体し、
これまた手際よく加工して、それをくっつけて固定して、
あっという間にそれを作ってしまった。
『ベッドだ、すごい、本物みたい』(o´▽`)
『大工だからな、基本は同じだ』(´- ` )
『お父さん、ありがとう』(o´▽`)
『楽勝だ』(´- ` )
そう言いながら父の口角がほんの少し上がったのが見えた。
すると今度は母が来て、ベッドの上に布団を移動してくれた。
『いいよ、そのくらい自分でできるから』(o´▽`)
『いいから、もう少しだけゆっくりしてなさい』(´∀`)
『わかった、ありがとう、お母さん』(o´▽`)
『横になってごらん、どう?ダンボールベッド』(´∀`)
『うん、最高だよ、寝起きもきつくなさそう』(o´▽`)
『良かったね。すぐに本物のベッド買うからそれまで・・・』(´∀`)
『いい、これがダメになるまで、これでいい』(o´▽`)
『お父さん手作りだから丈夫で長持ちしちゃうわよ』(´∀`)
『それならそれでいい、これがいい』(o´▽`)
『そ、わかったわ、じゃあとりあえずごゆっくり』(´∀`)
それから息子が生まれるまで、私はこのベッドを使い続けた。
念の為と言い、父はしょっちゅう"メンテナンス"をしてくれ、
本当に丈夫で、安心して使い続けることができた。
今日、私はその時の事を思い出しながら眠りについた。
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真夜中、屋根を打つ強い雨音で私は目を覚ました。
このまま被害が出なければいいけど・・・
ふとあたりを見回すとみんな眠れているようだった。
あの時ベッドに文句を言っていた男性の方を見ると、
小さなイビキをたててスヤスヤと眠っていた。
結局ぐっすり眠っとるんかい!!(*゜∀゜*)ノ
思い知ったか、ダンボールベッドの威力!!
さて・・・私ももう少し寝ようかな。
私は小さなガッツポーズを決めて再び眠りについた。
FIN
(´o`)п(´o`)п(´o`)п
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【編集後記】
日本の人口減少問題を耳にする度に思います。
それは、子供を産み育てたいと思う人達が、
環境的にも経済的にもより安心してそれを実現できるように、
国も社会も人も、もっと良くなって行くといいなという事です。
そしてその為に日々ご尽力なさっている方々に感謝申し上げます。
その為にダンボールでできる事があれば、ぜひ力になりたいです。
あ、そうでした、ダンボールベッドのお話しでしたね。
ダンボールベッドってどんなのかしら?と思われた方、
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おおお~! ってなるかもです。
最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
11月某日 ライティング兼編集長:メリーゴーランド