寂しがり屋のダンボール戦線 -後編-■アースダンボールメルマガVOL161■2023年6月号-2

なんでこんな事になっちまったんだ!! せっかくSNSで初めてバズッたと思ったのに、 こんな社会をゆるがすような事態に発展しちまうなんて・・・ 俺の投稿、それは我が家の中に作られたダンボールバリケードと "家庭内家出"の一言だった。 (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** ~前号までのあらすじ~ ごく普通の小学生男児を息子に持つごく普通の父親がその息子とケンカ。 怒りに燃えた男児は家の中にダンボールバリケードを築いて立て籠もった。 父親はその姿を『息子の家庭内家出』とSNSに投稿、それが大バズリ! なんと『家庭内家出』現象が瞬く間に全国の子供達に拡散してしまい、 全国数十万の家庭内にダンボールバリケードが作られてしまった。 事態収集の為、政府は "家庭内家出対策委員会" を設置するも効果が得られず。 そこで政府はダンボール物理学の世界的権威、ボール・ダン博士に協力を要請。 家庭内家出対策委員会に赴いた博士は開口一番で 『間もなくこの現象は自然的に沈静化する。しかも副産物付きでね』 と発言する。 誰もがこの発言を疑う中、博士の発言は的中し、事態は終息に向かう。 一体なぜ・・・!? それは博士の言う "副産物" の作用によるものだった!! ~ 前号の全文はこちらです↓↓ ~ https://www.bestcarton.com/profile/magazin/2023-jun-1.html (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п **************************** あれだけ手をこまねいていた事態が一斉に沈下し始め、 多くの関係者が胸を下す反面、誰もがその理由を理解できずにいた。 しかも博士の言う "副産物" までも目の当たりにし、謎は益々深まった。 その副産物とは・・・ 何故か回帰した子供達がみんな "いい子" になった、のだ!!! それはまるで、 孤独でぼっちな奴がすったもんだの末に仲間の大切さを知ったあの感じ、 辛い失恋を経験して友達のおかげでそこから立ち直ったようなあの感じ、 最弱戦士がダンジョン最下層まで制覇して最強戦士に成長したあの感じ、 早い話が一回りも二回り三回りも精神的に成長して帰って来たあの感じ、 が、子ども達の身に次々と起きたのだ。 そして間もなく政府と家庭内家出対策員会は事態の収束を宣言。 その記者会見の席上でボール・ダン博士はこのように語った。 『まずは大きな実害も無く、損なわれた国益も無く、  事態が収束した事は非常に良かったと思います。  いや、そのような事態に陥る事はそもそもあり得なかったのです。  この家出は誰がどう見ても非常に好条件の家出です。  雨風はしのげ、ご飯も、風呂もトイレにも困らず、家族の近くに居る。  ケンカした家族の一人が部屋に引きこもっている状態とほぼ変わりません。  家族側もとりあえず目の届く場所に居るので無理な説得は必要なく、  その状態を続けようと思えばいつまでも続ける事ができてしまう、  当初は誰もがそう予想されていた事でしょう。  しかしダンボールが持つある特殊な性質がそうはさせなかったのです。  さて、この世界の物質には様々な伝導性というものがあります。  一般的には電気伝導や熱伝導、音伝導などがよく知られています。  そして近年、私の研究チームが発見したダンボールの新たな性質、  それが "人の想いを通す性質"。  私達はこれを "想い伝導性" と名付けました。  超能力や想念伝達のように相手の脳や心に直接アクセスするのではなく、  あくまでもダンボールが人と人との介在役となる事による現象です。  その際、幸せホルモンのオキシトシンやセロトニン、ドーパミン、  などの分泌を促す信号の生成なども確認されています。  つまり愛情かそれに近い想い程、伝わりやすい性質を持っている訳です。  では、ダンボールバリケードの中で一体何が起こったのか?  とても簡単です。  当然、親や家族には立て籠もる子供を面倒に思う気持ちがあります。  しかし同時に、子を想う、子を心配する気持ちも必ず存在します。  一見するとダンボールはバリケードの中と外を断絶していますが、  ダンボールは子を想う気持ちが僅かでもあれば、それを吸収し、  先に説明した"想い伝導性"によってその想いを隔てた向こう側へ伝導します。  更にダンボールの密封性により伝導した想いはバリケード内に充填され、  徐々にバリケードの中はその想いで満たされて行く事になります。 98-2  この空間で怒りや反抗心を長期間持続できる人が居るでしょうか?  答えは否です。  そんな想いを体中に浴びた子供達はもう一人では居られなくなります。  自分を想ってくれる人に触れたい、もっと愛されたい、自分も愛したい。  通常なら、そんな感情に逆らえる人間など居るはずもないのです。  つまり、寂しくなってしまうんです。  そんな寂しさを抱えたまま、家出なんて続けられるはずがありません』。 そして博士は最後にこう語った。 『私は科学者ですから科学的に説明する立場にありますが、  皆さんもダンボールで似たような経験をした事があるのではないでしょうか?  そしてよりダンボールの良さを皆さんに知って頂ければ幸いではありますが、  ダンボールの良さを知る事はすなわち、とっても寂しがり屋になってしまう事、  とも言えるかもしれません。  逆を言えばダンボールがこれだけ人類に普及した理由、それは、  "私達人類はとても寂しがり屋な生き物"  だからなのかもしれません』 FIN 98-2 ※この物語に出てくる科学的知見は全て作者の希望的妄想ですが、  何となく共感できてしまう方は素直にそう思っておいて下さい^^ (´o`)п(´o`*)п(´o`*)п ****************************     【編集後記】 博士が最後の方で言っていた言葉、 皆さんもダンボールで似たような経験をした事があるのではないでしょうか? あながち間違ってはいないのではないかと私は思っています。 ダンボール(ダンボール箱)にいくつかある役目の一つが、 何かと何かを隔てる(直接接触を避けたり囲んだり)事。 どうして隔てるのか・・・? それは隔てることで守りたいものがあるから。 守る事で人と人とを繋げたいから。 なのではないかと思います。 最後までお読み下さりありがとうございました。 m(__;)m ライティング兼編集長:メリーゴーランド

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