ダンボールに愛パワーを充填する彼女■アースダンボールメルマガVOL181■2023年4月号-2
箱を開けたら "人の心" が飛び出したてきた!?
そんな経験、誰にでも…無いですよね、普通。
ただそれ、もしかしてだけど、多分だけど、
見えないし聞こえないし触れられないだけで、
無意識下ではちゃんと受信してるんじゃないかしら。
ごめんなさい、おかしな事を言って。
だって、あんな体験しちゃったから…
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私は峰村永久(みねむらとわ)24歳。
大自然で育った野菜を全国に届ける会社の通販部スタッフ。
心を込めてお仕事…をしているつもりだけど、
私の同僚は筋金入りの "仕事に心込め" スタッフだ。
それが彼女、古畑咲菜(ふるはたさな)、私と同じ24歳。
咲菜の仕事は普段から
「あ~今日も心込もってるわ~」
と手放しで思えるほどすっごく丁寧。
しかも無駄がなくて正確でスピードもあって、
更にキメ細かなな気配りも、隅々まで目が行き届くチェックも完璧。
私が知る限り、日本最強の野菜通販スタッフと言っても過言じゃないわ。
そして咲菜は私の親友でもある。
小、中、高、そして職場も、ずっと一緒だ。
私はそんな咲菜が大好きだ。
そんな通販最強スタッフの咲菜の力が最も発揮されるのが、
発送商品のダンボールへの箱詰め、梱包作業。
咲菜はダンボール箱と商品を梱包台に置くと、
無駄なく正確にスピーディーに、丁寧に箱に詰めていく。
その所作や動作の一つ一つから、
「心が込もってる」が波動のレベルで伝わってくる。
梱包の最後の最後に、咲菜オリジナルの秘密の仕上げがある。
それは…
「ねえ咲菜(さな)、このダンボール封緘しちゃうよ」
「永久(とわ)、ちょっと待って、まだやってない!」
「まだだったの?じゃあすぐやって!」
「わかった!今やる!」
と言って箱に詰め終わった"野菜達"に向かって両手をかざし、
「みんな元気で届いてね、えい!! (/>_<)/」
と言葉をかけ、両手のひらからビーム(たぶん)を出して
野菜達に"念"を送る。
本当にやります。本人は真剣です。
天然と言えば天然、
ワザとらしいと言えばワザとらしい、
あざといと言えばハイレベルにあざとい。
メイド喫茶の「おいしくな~れ、萌え萌えキュン(n´v`n)」と、
同じと言えば同じ。
けど、咲菜のそれはやっぱりどこか違ってて、
いや、やっぱり違わないか…どっちも尊いわ。
ただなんて言えばいいんだろう、なんていうかこう…そうだ、
小学校の時に咲菜は園芸係をやっていて、毎日お花に
「元気で綺麗に咲いてね~、今日もかわいいね~」
って声をかけてたから、ある日私が
「なんで植物に話しかけてるの?」と聞くと、
「植物も話しかけるとちゃんと喜ぶし応えるんだよ」
って真顔で答えてた。
その子供がそのまま大人になった感じ。
ただただピュアで尊いんですよ。
あの姿を動画撮ってSNSにでもあげれば多分、いや絶対、
万バズして注文も更に急増すると思う。
でも私も他の仲間もそれはしない。
もしそれで何かあって咲菜がそのルーティンをやめてしまう事を、
社の誰もが望んでないからだ。
それにそんな事をしなくても、でもこれはちょっと不思議だけど、
咲菜がこのルーティンを始めてからリピート率が上がった…
やっぱり咲菜には不思議な力があるのかも、なんて思ったり。
それはいいとして、私は咲菜がどれだけ心を込めて仕事をしてるか、
咲菜にとって "えい!" がどれだけ大事なルーティンなのかが、
毎日近くで見ているから本当によくわかる。
でもある日、そんな咲菜に異変が起きた。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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その日、咲菜は明らかに元気が無かった。
ぼーッとして仕事にも身が入ってなかった。
私はその原因を知っていたけど、
親友として何もしてあげられていなかった。
そして出荷作業では…
あのルーティンをスルーしてテープ留めをしようとした!
「ちょ、ちょい待ち咲菜、その箱まだやってないでしょ!」
「え?あ、そっか、まだだったね…」
咲菜はそう言って封緘前の箱を見つめて黙り込み、
数秒後、咲菜の瞳からホロっと一粒の涙がこぼれ落ちた。
「ごめん、できないや、今日はできないや」
「できない、か、そっか、そんな日もあるよね」
「こんな気持ちを込めたら、野菜にもお客様にも申し訳け…」
「そんなこと…でも、うん、わかった。後は私に任せな!」
昨日、咲菜は失恋した。
とても言葉では言い表せない程の、切なくて苦しい大失恋だった。
その苦しみを代わってあげたいと思う程、咲菜は辛そうだった。
私は咲菜に何をしてあげられるだろう?
どうすれば咲菜が元気になってくれるだろう?
私は親友なのに!!
よし、やるしかない、今度は私が咲菜の為に。
その日、私は職場の出荷用のダンボール箱を1箱だけ持ち帰り、
スーパーに寄って咲菜の好きなお菓子を大量に買い込み、
それをそのダンボール箱にギュウギュウに詰めて、
そして…
「咲菜、私にできるかどうかわからない、
けど私はあんたの親友!
絶対やってやる!やってみせる!」
私は箱に詰めたお菓子達に両手をかざして叫んだ。
「咲菜、元気になってええええ~~!!えい!!」
そして私は急いで、テープで蓋を閉じた。
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翌日、まだ元気を出せずにいた咲菜に、
昨夜、私が想いを込めに込めたダンボール箱を咲菜に私た。
「咲菜、はいこれ、咲菜にお届け物」
「え?私に?これうちの箱…誰から?」
「ふふふ、わ~た~し~か~ら!!」
「永久(とわ)から!? なになに?」
咲菜はテープをはがして箱の蓋を開けた。
「わああああ~!!すご~い (゚∀゚ノ)ノ」
咲菜の顔が和らいだ。
「どお?元気出た??」
「うん、出た出た!出たよ~元気!」
「良かった、やっと笑ってくれた」
「ありがとう永久……て、んん?あれ?なんだこれ?」
咲菜が急に不思議そうな顔になった。
「どしたの?何か足りなかった?
咲菜の好きなの全部揃えたはずなんだけど…」
「そうじゃないの、そうじゃなくて、ねえ永久」
「なに?」
「もしかして永久、これに "えい!!" ってやった?」
「(!!!%&#???)え!? な、なんで?( ゚ ▽ ゚ エッ!!」
「だって、なんかそう感じた気がして、ふわ~って」
「ふ、ふわ~って、って? んな、やる訳ないじゃない」
「そっか~気のせいか~、確かに感じた気がしたんだけどな~」
(さ、咲菜、やっぱりあんた能力者だったのね!?
咲菜すげ~!!やっぱりすげ~!!
何々の実を食べたらそうなるの~!?
でも助かった~!能力者で助かった~!!
って言うかダンボールすげ~!!
箱に心も込められるってホントなんだ~すげ~!!
って言うか私もすげ~!!
咲菜の技がホントにできちゃったよ~!!
私すげ~!!
とにかく咲菜が元気出て良かった~!)
その後、元気になった咲菜はあのルーティンを再開。
今日も元気に「えい!!」ってやってます。
そして私も時々こっそりと「えい!」ってやってます。
FIN
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┃4┃ 編 集 後 記
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心を込めて仕事するって、どういう事なんでしょうか?
例えば込めたとして、
どうすればそれが相手に伝わるのでしょうか?
伝わらなかったらそれは無駄なのでしょうか?
今号を執筆しながら改めて沢山考えました。
でもそこで思いました。
そんな事を考えずにただただ込める咲菜が、
私は彼女が好きですね。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド