"三つ"が愛しい私の事情(ワケ)■アースダンボールメルマガVOL180■2024年4月号
人は妙なものに愛おしさを感じたりする。
私の場合、"三つ並んだダンボール箱"が、
実はそれだったりする。
二つでもなく四つでもない、三つ。
どうして?って思いますよね。
恥ずかしくて誰にも話した事がないけど、
そろそろ誰かに話してもいいかなと今日、思いまして。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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私は春日井円(かすがいつぶら)、22歳のOL。
高校卒業後に事務職として就職して4年になる。
多分、私は普通の人生を歩んできたと思う。
両親と妹の縁(より)が居て、友達も居て、学校通って。
普通に楽しい事があって、普通に辛い事もあって、
泣いたり笑ったり、怒ったり感動したりして、
つまりはとても幸せに暮らしてこれたと思う。
でも2年前、私が二十歳の時、母が病気で他界し、
それまでの人生と大きく変わってしまった。
母が亡くなった事を、多分、
普通に悲しんで、普通に絶望して、でも、
拗(こじ)らせてどうかしてしまう程には引きずる事はなくて、
父と中学生の妹の縁(より)と3人で助け合って暮らしていこうと、
そう思えた。でも私は……
自分でも気が付かない所で気負ってしまっていた。
私は長女、妹の縁(より)は中学生でまだまだ子供。
私がしっかりしなきゃ、
私がお母さんの代わりに頑張らなきゃ、
幼い頃から真面目だけが取り柄の私がそう思うのは、
とても自然な事でもあった、と思う。
ただ私は要領が良くなく、少しずれた方向に動いてしまう事も多い。
真面目×要領良くない=知らずに何でもやり過ぎてしまう。
今までもずっとそうだった。
そして今回は今までの中でも一番その条件が揃っていた。
"私が頑張らなきゃ"という気負いが、それを後押ししてしまった。
育児こそないものの、
仕事に、家事に、家の諸々の管理に、地域の集まり。
早朝から夜遅くまで日々のルーティーンをこなし、
休日も殆ど出かけず家の中の事をせっせとやって、
友人と出かけたり遊びに行くことも徐々に減っていった。
父も妹も何もしない訳じゃなかった。
むしろ積極的に協力しようとしてくれていたのに、
私はそれに頼ろうとはしなかった。
そうです、私を一番追い込んでいたのは、
他でもない、私自身だったんです。
お母さんだって正社員として働きながらこれをやってたんだ。
お父さんや妹に不自由させたくない。お母さんもそうしてた。
私にだってできる!!
そもそもそこが、とんだ思い違いだった。
当たり前だ、母が積み重ねてきた経験や人間力は、
私のそれとは比べ物にならない程に強くて大きかった事に、
私は全く気づけずにいた。
ただただ "頑張る事に頑張って" しまっていた私は、
意外と早く限界を迎えてしまった。
あ~もうやだ、
なんもしたくない、
仕事も行きたくない、
そんな状態が数日続いたある日、遂に私は疲労で寝込んでしまった。
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私が部屋で寝ていると、
心配そうな父と妹がやってきてベッドの横に座り、
布団をかぶっている私に父がこう言った。
「なあ円(つぶら)、
ご飯なんて米と梅干しと味噌汁だけでも、
充分食えるってもんだ。
納豆とか卵焼きでも出た日には万々歳だ。
だから手の込んだ料理を毎日作らなくてもいい。
洗濯だって毎日じゃなくていいんだ。
掃除も、家の色々も、
毎日完璧じゃなくていいんだ。
お前はまだ若いんだ。
もっと遊べ、友達といっぱい遊んで来い。
もっと俺と縁(より)を頼れ。
お前は母さんにならなくていいんだ。
お前はお前でいいんだよ」
すると妹も、
「お姉ちゃん、いっぱい負担掛けてごめんね。
私、もっともっと手伝うから、お弁当も自分で作るから、
お願いだから無理しないで」
と半泣きしながらそう言ってくれた。
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…
ああ……
私は……
なんて馬鹿なんだ。
勝手に気負って、勝手に思い違いして、
またやっちゃったな、大失敗だよ。
何が心配かけたくないだ。
これ以上ないって程に心配かけちゃったよ。
今回のはちょっと大きかったな。
ちょっとじゃないや、すっごくすっごく、大きいな……
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…
父と妹の言葉に私は救われた。
短い言葉だったけど、その時の私の全部だった。
その言葉は、私を気負いから解き放ってくれた。
安心、安堵、安らぎ、あったかくて心地いい。
そんな感情が半分、そして、
馬鹿だった自分に気づけて良かったという気持ちと、
こんな失敗はもう絶対しないと強く思う気持ちが半分。
色んな感情と気持ちが一気に来ちゃったけど、
これだけは素直に思えた。
ありがとう、お父さん、縁(より)、
涙が一滴(しずく)だけ、つうっと頬を伝うと、
それに続くように次から次へと涙が溢れてきて、
もうどうにも止められなくなって、
父と妹の前で恥ずかしいなんて感情をすぐに追い越して、
私は布団をかぶったままわんわん泣いた。
父は私の頭にポンポン、と軽く手をあて、
妹と二人で部屋を出て行った。
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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次の週末、すっかり元気になった私は結局、
いつものように翌週の食糧の買い出しにスーパーに行った。
でも全然疲れなんか感じなくて、むしろウキウキしていた。
こんな気持ち、母が亡くなってから初めてだ。
買い物をしながらふと、
ダンボールの空き箱が三つ並んでいるのが目に入り、
「そうだ、これやってみよう!」
と閃いた。
私は買い物ついでにダンボール箱を三つ貰って帰り、
天面の四枚のフタを全て内側へ折り込んで簡易カゴを作り、
それを並べて床に置いた。
「お父さん、縁(より)、
今度から乾いた洗濯物、物干しから外したら
ポンポンこの箱に放り込むね。
これがお父さんの箱、これが縁(より)の箱ね。
あとは自分で畳んで戻してね。
とりあえず試験運用だからダンボールね。
本運用になったらちゃんとしたカゴを買おう」
父も縁(より)も快諾してくれ、
結局その運用は今も続いている。
お父さんの箱、縁(より)の箱、私の箱、
私はダンボール箱が三つ並んでるのが好きだ。
でも、一番洗濯物が多くて箱の大きさが一番大きいのは、
妹の縁(より)の箱、という事はここだけの話ですよ。
FIN
(´o`)п(´o`*)п(´o`*)п
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【編集後記】
人には誰しも、
頑張らなきゃならない時、があるのだと思います。
そしてその中にも、
自分だけで頑張らなくてはならない時や、
誰かの助けを借りて頑張ればいい時など、
色んな頑張りシチュエーションがあると思います。
ただ、
やっぱり無理は良くないです。
そしてどんなシチュエーションの頑張りであっても、
貴方のその頑張りが、
できるだけあなたの希望通りに、
できるだけその希望に近い形で、
いい結果につながるように、
私達は箱屋としてやれることをやります。
今号も最後までお読み下さりありがとうございました。
m(__;)m
ライティング兼編集長:メリーゴーランド